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シデの道標  作者: BOW
忘却の村
3/11

「カルムの非日常」

 カラッとした空気に燦々と太陽が輝いている。この超閉鎖的な村がここまで残った理由はこの気候が大きい。作物を育てるには素晴らしい環境なのだ。


 私はニヤッと笑うとあたりを見渡した。あたりには老人や主婦が井戸端会議をしていたり子供がキャッキャとはしゃいでいたりしている。


 少し前の私ならその輪に加わっていたが今の私はそれに入る気はない、なぜなら、それよりもさらに面白そうなことを見つけたからだ。


 それは、この村の中心にあるボロい小屋だった。


 ただの古屋なら私も関わらない、しかし私はこの子やに興味津々だった。この小屋は朝気づいたらそこにあったのだ。昨日の朝、起きて窓を開けると異様な雰囲気を放つ古屋が自室の窓から見えたのだ。


 それだけなら誰かが急拵えした可能性もなくはないがこの小屋の異様性はさらに別のところにあった。それは、この小屋は私以外には見えていないのだ。昨日村中を駆け回って確認したがあの小屋が見えているものは誰もいなかった。その古屋に向かって人を歩かせてみたところまるで元々そこに小屋ないかのように貫通したのだ。


 昨日はそれで門限が来てしまったのだが今日は学校もない、だから思う存分に調査してみようと意気込んでいるのだ。


 私は家から出た。

 家から出た瞬間、隣の家のおばちゃんに捕まった。


「カルムちゃん!おはよう」

「お…おはようございます…」


 私は若干引き気味に挨拶をしたがおばちゃんは気にせずに話しかけてくる


「カルムちゃん、お父さんは?この前もらった美容の本!すごいわよ、家にあるものであんなにお肌がツルツルになるなんて!」


 そういうとおばちゃんは自分の肌を撫で回す。確かにテカリがあるが私の目から見れば浮腫んでいるようにしか見えない。


「浮腫んでるだけじゃ…」

「あら?そういう時はお世辞でも若返ってますねとかいうものなのよ!」


 おばちゃんは笑い飛ばすようにいう


「効果なんてどーでもいいの、けど面白いわ、外のものは私たちが考えもしなかった情報がゴロゴロと入ってくるだもの」


 私の笑顔の引き攣りは限界点を迎えていたと思う、このおばさん私に媚び売って外の物を優先的に手に入れようとしてるんじゃないなとそう思えてきた。


「か……あれ?」


 おばちゃんは少し首を傾げる


「いやねぇ、歳かしら一瞬カルムちゃんの名前が飛んじゃったわ!あはははは!」


 豪快な人である。そういう下心はなくただ話し相手を探していただけだったようだ。


「それにしてもぉ!」


 とまだ話が続きそうで私は完全に足を止めた。とりあえず覚悟を決めてこの話に向き合おうとしたが村の広場の方から声をかけられた


「カルム〜!おっはよー!」


 そう声をかけてきたのは近所のお姉さんだった。お姉さんと言っても2歳くらい上の子である。学校では同じクラスだが名前は確か…


「何やってんのこっちで遊ぼうよ!」


 思い出そうとすると私の腕を引っ張った。私は引きずられるまま連れていかれる。おばさんはそれを見て再び豪快に笑い飛ばした。


「遊んでおいで!あっはっは!」


 私はしばらく引きづられるとくるっと体を回してお姉さんの隣を歩いた。


「あのおばさん話長いからね」

「…」

「?どうしたの?カルムちゃん」

「…ん、いや、なんでもない…」


 私たちは広間に出る。村の広間は村のちょうど真ん中に位置している。

 普段は子供の遊び場だ。その理由として、村の真ん中であれば絶対に人の目があるから安心とのことだった。

 私はお姉さんにお礼を言うとぐるぐると今朝から見え始めたボロ小屋の周りを回っていた。


「何やってるの?カルム…」


 普通に不振だったのか、お姉さんが話しかけてきた。お姉さんも私と同じようにぐるぐる回る


「ねぇ、なんの遊び?これ」

「ん?んーと…」


 私は少し考えたあと


「ねぇ、お姉さん、ちょっと私の前に立って見てよ」

「えぇ?なんで?…まぁ、いいけど…」


 お姉さんが私の前に立つように移動する。そして目の前にある家の壁を貫通すると壁の向こうからクリアな声が聞こえてきた


「これでいい?…どこ見てるの?」


 お姉さんの顔が見えないので明後日の方向を見ていたのだろう、声がクリアに聞こえると言うことは実際には存在せずこれが透過されていることがわかった。


「うん、ありがとう」

「何してるの?新しい遊び?」

「えっと…」


 正直に言えば頭おかしいとしか思えないしもしかしたら危険かもしれないことをわからないままやらせたことに気まずくなり見えないが目線を逸らした。


「…まぁ、気が済んだらこっちおいでよ、今日はみんなで避球やるんでしょ?」


 お姉さんはそういうと去っていった。いや、私の目には去る姿は見ていないのだけれども

 私は壁に向かって手をかざし、そのまま手のひらで壁を押してみた。すると貫通はせずに壁にドンと当たった。


「うひゃあ!」


 私はびっくりして飛び上がる。触れるじゃん!

 そして慌てて口を押さえた。目立ってどうする…

 今は人目が多くて入れないな…夜に決行するか、そう思い遊びの輪に加わろうと思いあたりを見渡した。


「…あれ?」


 あたりを見渡した瞬間、一気に鳥肌が立った。

 先程まであった村が無くなっていた。跡形もなく。いや、そもそもそこに村なんてないように…そこには荒廃した土地、根も育たぬような水気のない死の大地が広がっていたのだ

一昔前に流行ったコラーゲンかなんかはただ浮腫んでいるだけという説がある様です。

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