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バンバリッタ  作者: 曽偽小 幸絵
3/3

おんぼろ人形

よっぽど疲れていたのか、ビルに続き二人は寝てしまった。

距離は30km 時間は5分ほど経過している。


二人が眠ったと同時頃に馬車の周りは静かに赤く閃光した。


謎の閃光から一時間経過してやっと、一人が目を覚ました。


「...えっ?」

エルは状況を読み込めずにいた。


馬車の中にいた筈の3人は森の中に放り出されており、馬車の姿は無くなっていた。

また、辺り一面には石竹色せきちくいろの炎が広がっていた。


「ビル!メイル!大丈夫?起きて!」

二人はエルの声に反応する事はなかった。

「どうしよ...」


——がざがさ

———がさがさがさ


ぴょこんと小さな影が飛び出す。

「わあ!」

エルは傷ついたお尻をもう一度土につける。

「その声は...エルなのかぁい...?」

恐る恐る近づきながら言う。

「うそ...」

「おおお!やっぱそうじゃないかぁ!やったぁ!」

木材のぼろ人形は大はしゃぎをした。

「その喋り方...早く!早くみんな起きて!」


エルに話しかけたのは、幼い頃4人で作った人形だった。


「いった...。あれ?なんで外にいるんだ?」

「そんなことより!ボックンがいるの!」

「いや、何寝ぼけてんだよ...」

ビルはまだ寝ていたそうに身体を起こさずに答えた。

「ねぇ!メイル起きて!大変だよ!」

優しくメイルを揺らす。

「はっ?あれ?なんで外?」

「ビル!ビルビル!久々じゃあないかぁ!」

木材のぼろ人形相変わらずはしゃいでいる。

「うわっ!お前、本当にボックンか?」

「えっ?ぼくはボクだよぉ...」

悲しそうにボックンは答えた。

「俺が知ってるボックンはもうちょっと背丈もあったし、何より綺麗に作ったはずだ。ルルっが、そんなぞんざいな扱いをするはずがない。よってお前は他の誰かが作ったお守り人形だ」

「...。」

「やばいよ...。メイルが起きない...。どうしよう...。」

「エル!待ってろ!今薬を持ってく!...人形くん、お前に構ってる暇はないんだ。ごめんな」

「待って!ビル!エル!ぼくは君たちのおかげで奇蹟が使えるんだよ!ルルとビルの色を合わせて緑の奇蹟を!だからぼくに任せて!」

「ボックン。今はふざける時じゃないの」

「そうだぞ。なんでお前が奇蹟を使えるんだよ。」



*******************************************************

《《奇蹟》》《きせき》

人間それぞれには色がある。

赤は熱く

青は冷たい

黄色は照らす。


色に甘い蜜が合わさった時、それはただの色ではなく具現化するとされている。

色を具現化するには、自分の色を意識して体から色が放出されるのを想像。

それを物にできるまでには、かなりの鍛錬、想像が必要となる。


生まれもった色は決まっているが、時に変化することがある。

感受性豊かな人は他人の色に影響され、上手く咀嚼すれば綺麗に混ざり、そのままドロドロに溶け合えば、個性を喪う。

*******************************************************



「ぼくは人間じゃあ無くても、君たち人間から愛と命を受けたんだ!それっ!」


メイルの身体は綺麗な草色に包まれる。


「これは、ビルとルルから受けた色だよ。このおかげで僕たちは…。あっ!メイル!メイルメイル!!」

「メイル!」

「うぅん。頭が痛い…。なんで外に…なんでボックンがいるの……」

メイルはぼんやりとだが目を覚ました。

「すげぇ。…ボックン、疑ってすまなかった。けど…ひとつ聞きたいんだけど…ルルは元気か」

ビルは言葉を喉に詰まらせながらボックンに問いかけた。

「うん、ルルは生きてるよ…」

「それは…お前が動いてる時点で分かってるよ」

「ボックン、生きてるって言葉から説明されると、悪い予感しかしないんだけど」

メイルはじっと見つめながら言う。

「メイル…。」

「助けてもらってるのに、ごめんね。けど違和感しかないだ。君の今の姿に」


メイルはルルを心から尊敬して憧れていた。

家庭環境も頭も良く、皆んなから慕われているルルが大好きだった。

そんなルルが、ボックンを大事にすると言っていたのに、ボロボロになっている。

メイルは嫌な想像を必死に隠しているつもりだが、声は震えている。


「みんな、本当に…ぅうん。どうしよう」

ボックンは腕の様な小枝で頭を抱えた。

「ねぇ。今は会えた事に感謝しようよ。ルルが生きてるんだからさ、今からみんなで会いに行かない?」

「エル…ぼくもそうしたいんだぁ。だけど…」

優しい提案にも言葉を詰まらせた。

「なんなんだよ!学校に行くかと思えば馬車から突き落とされてるし!目を覚ませばおんぼろになってる奴がいるし!こいつは何にも喋んないし!どうなってんだよ!」

ビルは突然子供みたいに喚いた。

「ビル落ち着いてよ!森の中で叫ぶなって昔から言われてるでしょ!」

「うるせぇよ!何でお前は落ち着いてるんだよ!急に森の中に放り出されてるんだぞ!こっから身動き取れないかもしれないんだぞ!」

「お兄ちゃん、お願い静かにして…」

「くそっ。…お前らそこにいろ、川探してくる」

ビルは森の中に颯爽と消えていった。



3人は何処か分からない森の中。


彼らにとって重要なのは今何処にいるのか。


手掛かりとなる人形は何かを隠したがっている。

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