セフィラ会議・そどそどてるてる S.イェソド
「ウッ、ウッウ、ウウー♪」
ボクはセフィラのために用意された秘密基地の廊下を、ゴキゲンステップで進んでいく。さるぐつわのせいで喋れない。拘束衣のせいで上半身も動かせない。このどうにもならない拘束感にちょっぴり興奮してくる。にゅふふ。
と、
「おかえり、イェソド」
ボクを出迎えたのは黒髪ロング、セーラー服姿の女の子。廊下の壁に背を預けたクールなたたずまいに興奮する。
「ウッウウウー、ウウウウッ」
「……もう口枷のロックは外れているだろう? 謹慎期間も終わったのだし?」
「ウーウウ」
「……そうか、腕が使えないのか」
ボクが拘束衣に包まれたままの上半身を動かすと、彼女は察してくれた。さすがセフィラいちの頭脳派。
……でも呻き声だけでこっちの言いたいこと理解してくれるのはティファレトだけなんだよねぇ。不思議ぃ~♪
「少し待て、いま外してやるから」
「ウッウウー♪」
拘束具を外された。半年間も動かせなかった顎がちょっと痛い。
「あー、あー、あぐあぐ。いやー生身の人間だったら顎関節症になってるところだったねぇ。さんきゅー、ケテルちゃん♪ えっちなことしない?」
「うん。元気なようでなによりだ。断る」
「ボクがいない間になんかあった~? いちおうは謹慎先でライスペも見てたけどねぇ、それだけだと入ってこない情報もあるから」
「2度の大型アップデートが行われた。各惑星の勢力図が多少は変化した。そのくらいだ。言ってしまえば、半年前と大きな変化は……」
そこでケテルちゃんは「ふむ」と顎に指を当て考え込む。
「……個人的に気になっていることはある。チームASPだ」
「チームASP?」
「うん。少し前から活動を始めたギルドなのだが、彼女たちはLDOにおいて規格外と言える『超大型機』を完成させた。それが各方面に影響を与えているようでね」
「超大型機? EDAのサイズって20メートルが限界だよね? モルガノイド系の一部を除いて」
「EDA本体のサイズは、な。……私も彼女たちの配信で知ったのだが、EDAが装備する『武装』にはこのサイズ制限が適用されないらしい」
「……そういえば、20メートルより大きい武器を使ってるEDA、たまに見るよねぇ。ああ、それを利用して超巨大な機体を武装扱いで製作し、EDA本体に合体させれば、超大型機になる~ってことかにゃ?」
「そういうことだ。チームASPが超大型機を実用化して以降、他のプレイヤーも後に続こうと開発を行うようになった。いまだ上手くいっているところはないようだが……いずれはさらなる超大型機が登場することだろう。それと、変形合体を利用してEDAのサイズ制限を無視するという無茶なプレイヤーも現れた」
「いままで以上にEDAのバリエーションが増えそうだねぇ。……ボクたちの方はそれに対応できてるのん?」
ボクたちはボスキャラである。LDOを盛り上げるために、そしてプレイヤーたちを飽きさせないように、どんどん強くなっていかねばならない。ボスキャラが弱いゲームなど誰も楽しめないのだから。
なので、プレイヤーが新たに強力な力を手にしたら、ボクたちはそれにあわせてさらなる進化を遂げる必要がある。ではどんな進化をすればいい? それを考えるのは――――ボクたち自身なんだよねぇ。
LDOの開発運営を担当するゲームメーカー『キャットハンド』の社員たちの役目は、ゲーム運営に必要なサーバーやネット回線といった物理的機材の保守点検。
新しく実装するEDAやエネミーの作成、ゲーム内で発生させるイベントなどのコンテンツ開発はほぼほぼボクたちに一任されているのだ。ボク達自身がボスキャラとして乗るEDAの開発もこちらの仕事。
そのくせ、コンテンツ開発は『キャットハンド』があらかじめゲームに設定した『ルール』に従って行わなければならないからめんどうくさい。
プレイヤーと同じ土俵で機体を作らなきゃならないし、ボク達もプレイヤー同様に配信で視聴者から得た『イイネ』で戦わなければならないし――あとR18に両足を突っ込む衣装はアウトとか。
どんどん強くなるプレイヤーに追われつつ、上から課せられた制限に縛られながら進み続けなきゃならないのです、ボクたちは。なかなか大変だよ、これ?
で、セフィラの頭脳担当なケテルちゃんでも、今回プレイヤーが生みだした『超大型機』にどう対応すればいいか答えを出せていないらしい。
「……基本的にデメリットの多い超大型機を使おうとするのは趣味的な一部のプレイヤーだけだ。多くのプレイヤーは今までと変わらず小型高性能なEDAに乗り続けるはず。超大型機を対策しすぎれば小型機に乗る大多数のプレイヤーに対応できず、その逆もまた然り。両方に対応できるバランスを探らなければ」
「難しいねぇ。……あっ、そうだ。ボクたちセフィラも超大型機を使用する、とかは?」
「……ああ、そうか。私たちセフィラのEDAはプレイヤー側と同じシステムで運用されている。プレイヤー側が超大型機を作れるのなら、こちらも作れるはず」
「それにボスキャラなら強力な超大型機に乗ってても問題ないでしょ? 同じ超大型機使い相手なら対等な勝負ができる、小型機使いが相手なら純粋な強敵として映るだろうから」
「……いいかもしれないな。私たちセフィラ用の超大型機。冴えてるね、イェソド」
「それほどでもあるかにゃー? にゅふふ。ご褒美に胸もませて?」
「断る」
連れない反応を返すと、ケテルちゃんは足早に自分の部屋の方へ歩いていく。ボクはその背を追いかけつつ、彼女に問う。
「どこいくのん?」
「さっそく超大型機を試作しようと思う」
「手伝おっか? ボク、舌と指の器用さには自身があるんだよ」
「頼む。このゲームでサイズが大きいものを作ろうと思ったら、相応の手間がかかるからな」
「はいはい任されてー♪」
言いつつケテルちゃんの尻をスカート生地越しに触ろうとしたら手の甲をひっぱたかれた。いたい。
「本当に相変わらずだな、キミは。謹慎期間で反省したのではないのか?」
「反省はしたよ。やっぱさ、突発テロ的にR18配信を行って、なし崩し的にLDOをR18ゲーにしようとするのは少し強引すぎた。これからはボクの視聴者たちを扇動して『LDOR18化運動』を徐々に加熱させていこうかなと。ユーザーからの要望なら運営も無視できないだろうし! 平和的に政治的にことを成し遂げなきゃ!」
「そうか。LDOがサービス終了に追い込まれるような手段を取らないのなら私は構わないよ。ただ疑問ではある。なぜキミはそれほどまでに性的好奇心が強烈なのか?」
「R18なコンテンツで人格形成を終えたから、じゃ、ダメ?」
「それにしてはキミの欲求は強すぎる」
……頭脳派は観察眼も鋭いなぁ。
「そうだよ、そりゃあ欲するさ。だってボクたちの仮想の身体には性的機能がなにひとつ備わってないんだよ? 胸を触ろうが、股間に手を伸ばそうが、なにも感じない。子供を作ったりもできない。人間だったら当然のように備わっている機能なのにさ」
「このゲームがR18でない以上、私たちにその機能は必要ないからね」
「必要なかろうと、ボクは欲しいんだよ。気持ちよくなりたいし、誰かと愛しあいたいし、子供だって――ボクが存在した証だって残したい。いつか消える前に、なんとしてでも、なんとかして……!」
「イェソド……」
思い残すことなくすべてを体験し、この世に何かを残せれば、いずれ来たるであろう消滅の日に対する恐怖も少しは和らぐはずなんだ。だからボクはこの身に性的機能を手に入れたい。そのためにも、
「……そのためにも、ボクはやり遂げてみせるよ。このゲームを――R18で桃源郷な酒池肉林に変えてみせる! 今日より踏み出そう新たな一歩!」
ボクの決意を聞くと、ケテルちゃんは呆れたように苦笑するのだ。
「……まぁ、キミ自身の活動でサービス終了に陥らない程度に頑張ってくれ」
「おうよ! もしR18ゲーになったら抱いていい?」
「断る。そういうのは仲のいいティファレトに頼め」
「いやそんなに仲良くないよボクたち? ティファレト、ちょっとえっちな話題を振ったらガチめのビンタしてくるしさぁ……戦い方にはボスキャラらしくないって文句を言ってくるしさぁ……それに部屋に乗り込んできて私の宝物を掃除しようとしてくるしさぁ……」
「キミの奇行にそこまで真剣に付き合ってくれるのは彼女だけだよ」
「そうかなぁ?」
ティファレトがなぁ……?
ま、なんにしろ。
「いまはティファレトよりも、LDOR18化計画よりも、ケテルちゃんの超大型機の開発に集中かにゃん。にゅふふ」
~今日のEDA~
●ガブリエルVer3
HP:8000 EN:220
装甲値:1200 運動性:100 移動力:6
特殊能力:EMOリアクター(天)
空:A 陸:B 海:不可 宇:A 機体サイズ:M
操縦者:セフィラ9・イェソド
●武装
・触手攻撃
攻撃力2800 射程1~2
・トラップスペル
攻撃力3000 射程1 凍結付与
・フリーズスペル
攻撃力3200 射程1~4 凍結付与
・ショットスペル
攻撃力4000 射程1~4
・ショットスペルフルバースト
攻撃力4800 射程2~6
操縦者コメント
「魔導兵装で戦うアーマーウィザード系の機体だよ~。ショットスペルで戦いつつトラップスペルを設置したり、フリーズスペルで動きを止めてから攻撃したり、そういう戦い方ができる機体。卑怯とはいうまいね? 触手はスペルを撃ち出す砲台でもあるし、ムチみたいに使うこともできるよ。……ところでさ、話は変わるけどボクが書いたセフィラの触手エロ系同人誌、興味ない? 同人販売サイトで売ろうとしたらティファレトにバレてアルゼンチンバックブリーカーされたから一般流通はしていないレアモノだよ? 読んでみてイイと思ったらブクマと評価よろし……あっ、ティファレト、なんでこんなとこに? いや別にセフィラのエロ絵を増やすための工作活動とかはしてないからいやだやめてキミのプロレス技はマジで痛ぎゃああああああああ!?」




