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シスター・コンプレックス S.宇佐神歌月

 まさか、深月みつきのパートナーがクラスメイトだったなんて。想定外の状況です。少し混乱しています。


 震える指先で眼鏡を抑え、考え、冷静さを取り戻してから――私はまず百目鬼どうめきさんに釘を差しておくことにしました。


「……百目鬼さん、まず、私がミカであることは誰にも言わないでください。私はあまり現実こちらLDOあちらの自分をリンクさせたくはないのです」


「あっ、わかります。オンオフを切り替えないとちょっとつらい……」


「ですよね? というわけで他言無用でお願いします。……それで、なにが目的なのでしょうか?」


「目的?」


「私をミカと知って接触してきた理由、聞かせていただきたい」


「あ、それは特にないです」


「……ない?」


「アルミラちゃんの言ってたことからなんとなく推測して、その答え合わせとして聞いてみただけで…………」


「……そうですか」


 私と百目鬼さんは小学校時代からの知り合いです。と言っても、小中高と同じ学校に通い、何度かクラスメイトになったことがあるというだけ。交流はほとんどなかったので彼女の人柄などはよく知りません。しかし問題行動や悪い噂はなく、むしろ模範的、優等生的な女性であることは知っています。


 なので、私は彼女を信用することにしました。信用したうえで、これは好機かも、と。


「…………その、あの子の……あなたをアルミラの友人と見込んで、お願いがあるのです」


「おねがい?」


「……どうしたらあの子と仲良くなれるのか、教えていただけないでしょうか」


「へ?」


 私の問いかけに、百目鬼さんは目を丸くしました。


「えっと、姉妹、ですよね?」


「はい」


「……出会ってまだ2ヶ月も経ってない私より、姉妹の方がそういうことには詳しいような気がするんですけど」


「すべての姉妹がうまくいってるわけではないのですっ!」


「ひぃぃ!?」


「……失礼、大きな声を出してしまいました。私とあの子は確かに姉妹ですが、ここ数年はうまく話せていません。以前はもっと懐いてくれていたのに。お姉ちゃん、お姉ちゃんってどこへでもついてこようとして。あっ、その頃のあの子の写真があるので見ますか? データ容量が2TBほどあるので全て閲覧するのに少々かかりますが。お時間は大丈夫でしょうか?」


「てらばいと!? ま、また時間がある時にでも」


「そうですか……。話が逸れましたね、本題に戻ります。私は以前のようにあの子と話せるようになりたいのです。そのために機会があったら話しかけるようにもしているのですが、なかなかうまく行っていません」


「話しかけるって?」


「例えば、LDOであの子はEDAの設計者をやっていますよね? 私から見ても独創的な機体を作っています。我が妹ながら素晴らしい才能です。だから、そのことを褒めてみたり」


「褒めるって、どんな感じに?」


「……新しい機体を作ったのですか。悪くない設計です」


「…………あー」


 深月と話す時の私を再現すると、百目鬼さんはなにかに納得したような顔になりました。私は慌てて問いかけます。


「な、なにかありましたか?」


「口調がちょっと高圧的で、宇佐神さんの背が高いのもあって、その、なんというか……見下している感があるというか」


「見下してる感!?」


「アルミラちゃん、宇佐神さんと話した時はいっつも『嫌味を言われてる』とか『上から目線で見下されてる』って怒ってた気がします」


「そんなつもりで言ってるわけでは!?」


「宇佐神さんにそのつもりがなくても、言い方のせいでそう受け取られているんじゃないかなーって。それとアルミラちゃん、お姉ちゃんにコンプレックスがあるようでしたし」


「コンプレックス?」


「配信者としての人気でも勝てないし、操縦者としての実力でも勝てないし、設計者としての技術でも勝てないし、って。なんだか現実の方でも色々あるような口ぶりで」


「そんなことを思っていたのですか、あの子……」


 深月がそんな気持ちを抱いていたなんて気づきませんでした。百目鬼さんから伝えられた真実に、私は頭を抱えてうずくまるしかありません。


「だとしたら、私はずっとあの子を嘲笑するようなことをしていたと? う、うぅ……そんなつもりはなかったのに……これでは昔に戻るどころではない……」


「……え、えーと、宇佐神さん? なにを?」


「いえ、スマホに遺書を残しておこうかと……もうあの子には死んで詫びるしか……」


「わー!?」


 私の死後、部屋の押し入れに保管されているプラモデルはすべて妹・宇佐神深月に譲渡するものとする――とまで書き上がったところで、百目鬼さんにスマホを取り上げられてしまいました。


「決断が早い! もうちょっと考えましょう!? 命を大事に!?」


「考えても思いつかないのです。どうすればあの子にあやまれるのか。これ以上、私が何かを言っても火に油を注ぐだけでしょうし……というわけで返してください、ヨツバシ通販で自決用の爆薬を購入するので……」


「なんつー死に方をしようとしてるんですか!? 松永久秀!? っていうか家電量販店の通販サイトに爆薬は売っていませんよ!?」


「ヨツバシのポイントカードに10万ポイントほど溜まっているのでそれで買おうと思ったのですが……」


「コツコツ貯めたポイントで死のうとしないで? とりあえず落ち着いてください、アルミラちゃん良い子だから話せばわかってくれると思います」


「そう、良い子なんですよあの子は……そんな子を私は……やはり自決するしか……」


「落ち着けって言ってるでしょ!?」


 それからしばらく百目鬼さんに説得されるうちに、なんとか気持ちを切り替えることができました。私はズレた眼鏡をくいっと持ち上げてから、いつもどおりの口調で会話を再開させます。


「……失礼、取り乱しました」


「本当に恐ろしいほどの取り乱しっぷりだったよ……」


「しかし現実問題、どうすれば良いのでしょう? このままでは私の顔を見るだけで、あの子はつらい思いをしてしまいます」


「うーん、仲直りする方法……機会があったら私の方からアルミラちゃんにフォローを入れてみるよ」


「よいのですか?」


「ん。宇佐神さんと仲直りできれば、アルミラちゃんの気持ちも楽になりそうだし。ただ私もそういう説得とかしたことないから、時間はかかると思うけど……」


「大丈夫です。待ちます。なにか私にできることがあればいつでも言ってください」


「……宇佐神さんはもうちょっと柔らかな感じに会話する練習をしておいてくれれば。話し方を変えれば、アルミラちゃんも言葉を悪い意味に受け取らなくなるだろうし」


「わかりました。練習しておきます」


 こうして、百目鬼さんが私と深月の仲直りに協力してくれることになりました。


 ……彼女の協力を無駄にしないためにも、必ずや昔のような仲良し姉妹に戻ってみせます!


●ファルケディルナ

HP:4000 EN140

装甲値:1300 運動性:100 移動力:6

特殊能力:EMOリアクター(天)

空:B 陸:B 海:S 宇:B 機体サイズ:M

操縦者:ミカ


●武装

・魚雷

 攻撃力3000 射程2~5 弾数6


・ヘヴィガトリング

 攻撃力3400 射程1~4 弾数12


・アンカーブレード

 攻撃力4200 射程1 EN消費10


操縦者コメント

「私のフルカスタム水中戦用EDA……ですが、改良して陸海空宇の全領域に対応できるようにしました。射撃武装は戦場によって変更します。……ところで、よく近接武装を大鎌と間違えられるのですが、あれはイカリです。船が流されないようにするための。ええと、あと言うべきことは……そうそう、ブックマークと評価、できればお願いします」

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― 新着の感想 ―
[一言] まさかのクラスメイトがアルミラの姉とは、世間は広いようで狭かった。 そして、さらにまさかのシスコンだったw しかし、正直このお姉ちゃんだと改善するどころか、空回りして悪化しかねないようにも感…
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