再起動 S.ヒノワ
薄暗くなったコクピットの中で、私はガチャガチャと操縦桿を動かしてみた。アトラクナクアは反応しない。鴉も動くことはない。
EN切れによる機能停止。なにか手段はないかとアルミラちゃんに音声チャットを繋ぎ、こそっと報告した。けれど彼女も打つ手なしらしい。
「……向こうから近づいてきてくれてる、ENさえあれば一撃を入れられるのに」
『周囲に補給系の装備を持っているプレイヤーもおらず、視聴者からのイイネももう限界。あとちょっとだったんですけどねぇ……歯がゆい』
「悔しいなぁ。……私たちの機体、頑張ったよね?」
『ええ、アトラクナクアもあなたもよく頑張ってくれました。褒めてあげます』
「えへへ、ありがと。うれしい」
『ひひひ』
アルミラちゃんは笑ってくれたし、私もちゃんと頑張れた気がする。それで良いかな。
敵のEDA『カマエル』が、トドメを刺すべく迫ってくる。カマエルの左手、杭の生えた盾みたいな武器……パイルバンカー、っていうんだっけか、それがガチャガチャと駆動して発動準備を整えていた。
『けけけ、EN切れか。残念だったな大蜘蛛』
敵の操縦者の声。本当に、残念。もっとENが……イイネがあればなぁ。
カマエルが、その左腕を振りかぶった。
……やっぱ、やだなぁ。負けたくない。勝ちたいよ。勝てばみんな褒めてくれる、みんな認めてくれる、勝てば、勝てば、勝ちさえすれば……!
「……え?」
その時、アトラクナクアのイイネチャージ数が増加した。数百のイイネがこの一瞬に集まったのだ。
なぜ? いったいなにが?
わからない、わからないけど、これならば!
「鴉!」
『なっ!? 再起動だと!?』
EMOリアクター再稼働、イイネをENに変換、機体を再起動。力は鴉に集中させる、そこだけ動けば十分だ。
鴉が両手にビームソードを握った。注ぎ込んだENによって最大出力、光の刃が眩しく輝く。
そして、左右の刃を最速で振るう。
カマエルの装甲に二本の線が奔った。
その線に沿って、赤錆色の機体は切断されていき。
『…………チッ、オレの負けか』
爆発。ボスキャラは、荒野に炎を残して消えた。
《……ん?》
《んんん?》
《えっ、勝った?》
《勝ったんスか!?》
《勝った勝った! 博士の機体が勝った!》
《ヒノワちゃんたちの勝ちだ!》
《イヤッハァァァァァァァァ!》
コメント欄で視聴者さんたちは大盛りあがり。けれど私とアルミラちゃんは、喜ぶよりも先に首を傾げた。
(……最後、なんでイイネがたくさん集まったんだろう?)




