ゲブゲブ・アサルト S.ゲブラー
敵の超大型機がバリアフィールドを張らなくなった。オレの思った通り、敵さん燃費が良くないらしい。バリアは使用不能、残るENもわずかだろう。
あとはこちらの数に任せた攻撃で、じわじわ削り殺せばいい。全て作戦通り――と、いくはずだったのだが。
《なんだあいつ!? バリアを失って、ENも残ってないだろうに!》
《この期に及んで……前進だと!?》
オレは、超大型機が最後に取る行動は『尻尾を巻いて逃げ出す』か『なにもできぬままその場でやられる』のどちらかだと思っていた。
ところが相手が選択したのは前進だ。こちらの軍勢へと向けて、馬鹿でかい脚を動かして、特攻を仕掛けてきやがった。
「けけけ。予想外だ。まさかそう来るとは、なかなか骨のあるドライバーだ。……わっかんねェな、なんでそんなヤツがチャンネル登録者1万以下で燻ってんのか」
《ゲブさま、チャンネル登録者数9000ってプレイヤーとしてはわりと集めてる方なんですよ》
《全員が登録者100万越えてるセフィラ・イレブンの方がおかしいんですよ》
「そうだったか? それなら見る目ねえなぁ劣等種ども。この先、あいつらもっと伸びると思うぜ?」
戦い方は思いきり良く、使っている機体は特異な超大型機。これで人気が伸びなかったらおかしいくらいだ、よほどトークが下手か性格が悪いとかでもなけりゃな。
そして、人気ある配信者が増えるのはLDOにとっても望ましいこと。動画を見る視聴者が増えれば広告収入も増える。
だから、有望なライブドライバーには配信映えする劇的な戦いを送るのもオレたちの役目。
「そろそろ動くか」
《ゲブさま!?》
《ついに動くのかゲブさまのカマエルが!?》
《機甲天使カマエルのアスクレウスMk2狙撃銃が火を吹くぞ!》
操縦桿に手を伸ばし、愛機の両腕と自分の両腕をシンクロさせる。
右手、騎兵の馬上槍のように狙撃銃を構え。
左手、前腕部に接続されたパイルバンカーユニットのコンディションをチェック。
背部、背負ったミサイルコンテナを開放していつでも発射できる状態に。
脚部、足裏の車輪を高速回転させ、ローラーダッシュによる高速移動を開始。
《ゲブさまが出撃るぞ――!》
《ご武運を!》
《ご武運をゲブさま!》
《ゲーブーラー! ゲーブーラー!》
《ゲーブーラー! ゲーブーラー!》
「けけけ、せいぜい楽しく見ていやがれ劣等種ども! カマエル、敵を食い尽くす!」
大量のコメントとイイネと共に、オレたちは戦場に躍り出る。




