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感情を処理できん人類 S.アルミラ

 ヒノワとアトラクナクアの奮戦を、私はリブ・キャッスルの屋上から観戦していました。双眼鏡の向こうには大軍蹴散らす我が作品とパートナー。ひひひ、アガりますねぇこの光景! ……ちょっと不安でもありますけど。


 と、


『……? アルミラちゃん』


「どうしました、ヒノワ?」


『敵の動きが変わった気がする』


 ヒノワからの音声チャット。その言葉で、私は敵に注目します。


 EDAに近づいて自爆する特攻兵器型のマステマは、その進路をアトラクナクアの方へ。マステマ側の巨大ロボ『EDAモドキ』の戦列は、装備した銃火器でアトラクナクアを激しく銃撃し始めます。


「集中攻撃ですか……」


《うわめっちゃ狙われてますやん!》


《馬鹿め、射撃だろうが特攻だろうがアトラクナクアのバリアフィールドに防がれるだけだぜ!》


《弾と資源の無駄遣いですなぁはっはっは!》


《がはは勝ったな!》


 視聴者はこちらの勝利を確信してのハイテンション。しかし私の胸の内は、不安感に支配されていきます。


「……ヤバいかも、ですねぇ。ヒノワ、イイネの残量は?」


『残りイイネ2000ちょっと! ……まずいかも!?』


《なにがマズいんです?》


《いまだ無傷なのに?》


「こうも集中攻撃を浴びせられるとバリアフィールドでENをどんどん消費せざるを得ません。このペースで……残りイイネが2000程度だと……あと1分ほどでバリアを出せなくなりますね」


《バリア消えた状態で集中攻撃を食らったらさすがにやばいんじゃね?》


《いくら巨大で重装甲でもなぁ》


《どんな機体でも関節とかは脆いしな……》


「くっ、敵さんこっちの燃費の悪さと人気不足に気づきましたかね!? 視聴者たち! もっとイイネが必要です! もっと!」


《わかった! ……って言いたいところだけどもう今回の配信のイイネボタンは押しちまった!》


《こっちもだ! もうイイネを送れん!》


《いいこと思いついた。配信を1回切ってさ、また別の動画扱いで配信を始めればさ、もうイイネボタン押した人たちもまたイイネできるようになるんじゃね?》


《ムリッス! 配信終了後にまた配信を開始するには1時間のクールタイムが必要なんスよ!》


《そうじゃないと短時間に短い配信を連続することで簡単に大量のイイネを集められちゃうッスからね!》


《マジかー……》


 イイネ数がほとんど増えません。いま配信に来ている視聴者からは、もうイイネを貰い尽くしてしまったということですか。


 このままではバリアが……!


 私が何の対策も打ち出せないうちに、恐れていた瞬間が訪れます。


『アルミラちゃん! イイネがなくなった! これ以上バリアを使ってると機体が機能停止して……あうっ!?』


「ヒノワ!?」


 イイネ切れとEN不足により、アトラクナクアを守っていたバリアが消滅。敵の攻撃が直接機体に刺さり始めます。


 重装甲のおかげで即座に撃墜されるなんてことにはなりませんが……、


『うっ、3番脚部が機能停止。それと、G・R・Lが……!』


 ヒノワの報告通り、アトラクナクアの脚がひとつ折れ、さらに背中のG・R・Lが破壊されました。こちらで機体ステータスを確認すれば、機体全体のダメージ合計が総耐久値の20%を突破。


 まずい。まずいまずい!


「くっ! 目立つから集中攻撃を受けやすい、的が大きいから回避できない、巨体の弱点はわかっていましたが……実戦だとこうも思い通りにいかないとは! ヒノワ! いったん下がりましょう! 味方をうまく盾にして後退を!」


『味方を!?』


《ひでぇこという!》


《それでこそアル博士だ》


《いや、さすがに他プレイヤーを堂々と囮にするのはなぁ……》


《ちょい失望かも》


『待て待てASPの! 俺たちを囮にしようってのか!?』


『確かにここまであんたらの超大型機のおかげで助かってたけどさぁ!?』


『さすがにそいつは聞き捨てならんぜ!?』


 ああもう外野どもがやかましい!


「あの機体の建造には私が1年かけて貯めたICOの8割をつぎ込んでいるんです! 機体が撃墜されてもペナルティのない対戦モードと違って、PvEだと撃墜された機体は消滅ロストしてしまう仕様! いま壊れたら作り直せないんですよあの機体は! それに……」


 ……まずい、私の悪い癖が。興奮して、感情がうまく処理できない。


「はじめて彼女が望んだ機体なんですよ! はじめて私が友達のために組み上げた機体なんですよ! こんなところで失わせるわけにはいきません!」


 余計なことまで口走ってしまう。


「だってあれがなくなって! 新しい機体も作ってあげられなくなって! そうしたら私なんてなにもないやくたたずじゃないですか! はじめて仲の良い子ができたのに! やくたたずってなったら見限られちゃって……! また私はひとりになって……!」


《なんかアルミラさんの様子がおかしいぞ》


《泣いてる? なんか泣いてない?》


《どしたー?》


《アルちゃん博士、苛立ったり悲しくなったりするとたまにこうなっちゃうんスよ。癇癪持ちってやつッス》


《配信中にこうなった時の動画は恥ずかしいってんで削除してるし、最近は落ち着いてたんで新しい方の視聴者は知らないと思うッスけど》


《マジっすか》


 ああ、くそ、視聴者が余計なことを。私は友達なんて恥ずかしいセリフを口にするようなキャラじゃないのに。自信家で性悪で、カッコよくて個性的で、そんな自分でなきゃならないのに。


 仮面が、剥がれちゃう。


「うわぁぁぁぁぁん! だからダメなのぉ! あの子が壊されるようなことになっちゃダメなのぉ!」


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