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このイカれたゲームへようこそ S.ヒノワ

 粗暴な言葉で流暢に喋るその姿、世間一般でイメージされるAIにはとても見えない。


「AIのわりには人間っぽい……? というか、なんで配信を?」


「セフィラはプレイヤーと同じくEDAを自らの機体として使っているんだ。機体性能を発揮するためイイネが必要となるのもまた同じ。だから連中はプレイヤーと同じよう配信チャンネルを作り、動画配信を行っているのさ」


「ボスキャラが動画配信やってるんですかこのゲーム……?」


 と、視聴者さんから補足のコメントが。


《どころか彼女たち、バーチャルアイドルユニット『セフィラ・イレブン』としてCDを出したりライブをやったりしているッスよ》


「アイドルユニット!?」


《彼女たち、『ハイエモ』って言う高度感情機能AIで動いてるんスよ。だからホンモノの人間みたいな人格を持ってるんス》


《それを利用して歌って踊れてファンとも自然に交流できるバーチャルアイドルやらせて、CDやキャラグッズの売上で副収入を得ようって話になったみたいで》


《で、実際に試してみたら大ヒット。去年の冬には武道館でライブやってたんスよ》


「な、なんかすごいね……」


《で、そんな大人気アイドルだから配信チャンネルの登録者数も全員100万人越えッス。500万を越えてる子もいるッスね》


《LDOのボスキャラとしてこれほど恐ろしい相手はないッスよ》


 人気が力となるゲームのボスキャラが、バーチャルアイドルとして抜群の人気を誇るAIたち。プレイヤーはアイドル級の人気を相手にしなければならないということで、それはなかなか大変そうな。


(っていうかこのゲーム、知れば知るほど奇妙なことをしている……!?)


 クセの強い世界のお話をどうにか飲み込んだ上で、私は大画面のゲブラーさんに視線を戻す。彼女は画面の向こうの視聴者を見下しながら、さらなる言葉を紡いでいた。


『襲撃予告だ。我ら火星圏のマステマは3日後、てめえら劣等種どもの拠点をぶっ壊す。今回、俺の軍団(レギオン)が食い荒らすのは……火星エリア、E28ブロック。ギルド人食兵団の拠点リブ・キャッスル。襲撃時刻は20時だ。それまでせいぜい怯えて過ごしな劣等種! けけけけけ!』


 喉を鳴らした笑い声と共に記録映像は終了。バルバラさんはメニューを操作しホロウィンドウを消してから、苛立たしげに肘掛けを叩いた。


「アタシらを狙うとは舐めてくれたねぇゲブラー! ……この襲撃イベントの予告があったのが3日前。つまりヤツの率いるマステマの軍勢が、このあと20時からアタシらの城を襲撃する」


「なるほど……」


《ねーねー、襲撃って?》


《敵キャラの大軍がゲーム内の拠点……都市とか基地を襲いに来る、襲撃(レイド)イベントってやつッスよ》


《プレイヤーたちは予告された襲撃時刻までに防備を整え、みんなで協力して敵を迎え撃つんス》


《守りきれないと拠点が壊滅! 街としての機能が喪失! たいへん!》


《普段は見られないような大規模戦闘になるので、配信的には動画映えする美味しいイベントでもあるんスけどね》


《あと襲撃イベントで出てくる敵はアイテムやお金を大量に落としたり、レアパーツをドロップする確率が高かったり。そういう意味でも美味しいイベントッス》


《なるほど》


《だから参加希望者も多いんスけど、襲撃イベントには参加者が増えると敵の戦力もあわせて増える厄介な仕様があるんスよ》


《未熟なプレイヤーが多く混じるとこっちの戦力は頼りにならないのに敵の戦力はどんどん強化されちゃうってことッス》


《だから襲撃対象の拠点を使っているプレイヤーが、確実な戦力になる上位ランカーや人気プレイヤーをお金で雇って参戦させる、みたいなのもよくあること》


《今回のアルちゃん博士たちは、ギルドの拠点に襲撃予告を食らった人喰兵団(マンイーター)に雇われてここに来た形ッスね》


《理解した》


 私たちがここにいる理由は視聴者の語った通り。だから雇われの身として、私はバルバラさんに確認する。


「では、私たちはなにをすれば?」


「敵は全方位から襲ってくる! アンタらにはこの基地の東側エリアの防衛に加わってもらうよ! 噂に聞く『超大型機』を使ってね! わかったらさっさと準備に入りな! 襲撃開始まであと1時間もないよ! 果たして生き残れるかい? あーっはっはっは!」


「バルバラさまは『ご武運をお祈りしています。無理せずできる範囲で頑張ってください』と仰っております」


「わ、わかりました」


「あーっはっはっは、ごほっ!? げほっ、げほっ……うー、アバターとはいえこの笑い方はやっぱキツいわね……アタシも歳かな……」


 と、なんだか世知辛いつぶやきを最後に聞いて雇い主との話を終えた私たちは、リブ・キャッスルをあとにする。あらくれたちの城から出た瞬間、アルミラちゃんはころっといつもの態度に戻った。


「……いやー人喰兵団なんて名前のわりに対したことありませんでしたねぇ連中! このアルミラさんの威光にひれ伏しっぱなしとは情けない! ひひひひひ!」


 なんていうんだっけ、こういうの。……内弁慶?

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