重火力で重装甲なので S.ヒノワ
アリスガワ三姉妹との決闘から数日後。
「考えたんですけど、私たちって対戦をやるよりPvEをやる方が映えるんじゃないですかね?」
いつものように机の上で手を動かしていたアルミラちゃんが、ふとそんなことを言う。
私は彼女の手の中で改良されゆくアトラクナクアから視線を外し、どういうことかと首を傾げた。
「PvEの方が……?」
「私たちの機体って、超大型機じゃないですか。超大型だから性能が高い、まず火力面がずば抜けています。一般的なEDAでは背中の左右で2基しか装備できないミサイルポッドを、36基も積んでいるわけですからね」
「確かに、火力はすごいよね。あと装甲も」
「数十の敵から集中砲火を食らっても生き残れるでしょうからねぇ。ですがこの火力と装甲、対戦だと過剰気味なんですよねぇ。標準的なEDAなんてミサイルが1発でも大破したりします。標準的なEDAの攻撃を受けるならもっと装甲は薄くても大丈夫です。それは今日まで何度か戦って理解しているでしょう?」
ここ数日、私たちはランダムマッチで他プレイヤーと対戦してきた。運良くランカーとは当たらず、対戦成績は全戦全勝。それも、こちらは圧倒的装甲でほぼ無傷のまま、相手を圧倒的火力で瞬殺しての、完全勝利ばかりである。
視聴者から何度か『圧倒的すぎてつまらん』というコメントを貰ってしまうほどだった。
「TAUユニットの戦力は、1VS1の戦いだとあまりに過剰。ランカーレベルの相手でないとおもしろい戦いとはならない」
難しい顔をして、アルミラちゃんは作業の手を止める。
「退屈な勝負では絵になりません。それでは人気も得られない。対戦を繰り返すだけでは、私たちの機体の魅力は引き出せないと思うんですよ」
「……確かに」
「ですので私は考えました、活路はPvEにありと」
「PvEって、ゲーム側が用意した敵キャラと戦うってこと?」
「ええ。たやすく潰せるザコ敵を狩って資源とお金を集めたり、強敵を倒してレアパーツのドロップを狙ったり、襲撃クエストで味方と共闘……、LDOのMMORPG要素です。こっちメインで配信するプレイヤーも多くいます」
「敵キャラと戦うだけで盛り上がるかな?」
「低級のザコを狩るだけでは微妙でしょう。しかし数百体の敵を相手にする襲撃クエストでは、まさにロボットアニメの決戦みたいな戦いが配信できます。……私たちの超大型機の火力と装甲は、そういった舞台でこそ本領を発揮できるはず。そうは思いませんか?」
「確かに、そうかも。良いと思うよ、その方向性」
「ひひひ、ならば決まりですね。次はPvEメインの配信で行ってみましょう。……そうなると、ちょっと不安なこともあるのですけど」
「不安?」
「……いえ、なんでもありません。ところで、私たちにクエスト参加要請が届いているんですよ」
「参加要請?」
「クエストを手伝ってくれーって他プレイヤーからお呼ばれしたってことです。どうです? ちょうどいいですしやってみませんか?」
他のプレイヤーとの共闘。やったことはないからちょっと不安、だけれども、
「ん、やってみる!」
「いい返事です! それでは向かいましょうか、これより激戦の舞台となる地――火星へ!」
~今日のEDA~
●アトラクナクア(AS02『鴉』+TAU2スパイダーユニット)
HP:8000 EN:320
装甲値:1800 運動性:40 移動力:4
特殊能力:EMOリアクター(特大) サブEMOリアクター(特大) バリア(特大)
空:不可 陸:A 海:不可 宇:不可 機体サイズ:LL
●武装
・【鴉】分離攻撃
攻撃力3800 射程1 EN消費10
・ミサイルポッド一斉射
攻撃力5000 射程1~5 弾数4
・大型レールキャノン
攻撃力5800 射程2~9 EN消費150+弾数5
開発者コメント
「いったん飛行を諦め多脚歩行戦艦として生まれ変わったAS01とTAUユニット……あらため、AS02『鴉』とTAU2スパイダーユニットです。合体時の名前はアトラクナクア。蜘蛛の下半身に人の上半身の超大型機です。ゲル◯ゲー! 搭載スペースと消費ENの問題からODキャノンはオミット、かわりに大型レールキャノンを搭載しました。ミサイルポッドは以前のTAUユニットと同じものですが搭載数が増えており――――(めっちゃ長くなったので省略」
操縦者コメント
「蜘蛛の下半身に人型の上半身が生えたような超大型機です。硬いです。いざという時は鴉が分離します。強い! あとアルミラちゃんが気に入ったらブクマと評価よろしくねだそうです。すいません……」




