人気者になりたいふつうの少女 S.ヒノワ
百合とロボが好きな人が書きました。お楽しみください。
女の子とキスしたこと、ありますか?
私はある。というかいましている。狭い閉鎖空間で、ゲーム実況配信の真っ最中に、数万の視聴者に見せつけるようにして、女の子同士でキスしている。
『彼女』の唇が私の唇に重なって、舌が口内にねじこまれて。
「ムグ――――ッ!?」
永遠にも思えるような数秒のキスのあと、私の唇を解放した『彼女』は、いじわるに笑いながら視聴者たちに宣言した。
「……っぷは! 見たか見ましたか! 私たちの仲が配信用のツクリモノなんて言わせません! この程度、たやすくできるのですよこっちは!」
私たちの仲を疑っていた視聴者すらも、いまの行為を目の当たりにすればコメント欄で熱狂するしかない。
《キスキタ――――!》
《女の子同士でだとッ!?》
《キマシタワッッッ!》
《真実かよッ》
《あら~~~~~~~♥》
《5000兆回スクショした》
《ガールスラブな配信やってると聞いてすっ飛んできました!!!》
どこかでキスの話を耳にしたらしい人々が、さらなる視聴者となって私たちの配信へとやってくる。視聴者数のカウンターがどんどん回る。私たちの動画配信に、たくさんの高評価が集まってくる。
そして、ここは視聴者からの『イイネ』が強さとなる、ちょっと変わったVRMMOの世界。たくさんの視聴者と無数のイイネが私たちを強くする――――のだけれど、混乱でいまはそれどころじゃなかった。
「……イイネが増えるのはいいことだけど!? けど!? いきなりすぎて!? キスが!? あわわ!?」
私は熱くなった顔を手で覆いながら、あわあわとうろたえることしかできない。
……私たちそこに至るまでの物語を、どこから語るべきだろう?
まずは、はじまりから。私がこの世界に来た理由から、かな?
★
昼休み、学校の教室で、ひとりスマホをいじっていた。
少し私という女のことを話そう、といっても面白みのある経歴ではないのだけれど。
私は普通のご家庭に、普通の両親の子供として生まれた。普通に育って、普通の高校生になった。
以上。
自分のことを話すと言っておいてなんだが、語れることはこれで終わり。私の人生に大きな悲劇はない。スゴい逸話ない。天才的で優秀な学生でも、世界を恐怖のどん底に叩き落とす不良でもない。
ごく普通で平凡でつまらない女、それが私だ。
そんな私だから、ごく普通の欲望がある。
(人気者になりたい)
人に好かれたい、認められたい、褒められたい。ごく普通の承認欲求だ。けれどつまらない私がなにをすれば人気者になれるというのか? 考えてもわからないから、答えを探して今日もインターネットを旅している。
興味の引かれない話題がずらりと並ぶニュースサイトを流し見て、
(……しまった)
うっかり広告バナーをタッチしてしまった。宣伝動画が画面いっぱいに拡大され、イヤホンからは勇ましいBGMが大音量。
(……なにかのゲーム?)
動画に映っているのは特定ジャンルのアニメに登場するような”ロボット”だった。
人型だったり、動物型だったり、変形したり――色んなロボットの戦う姿が次々と映し出されたあと、画面いっぱいにゲームのタイトルがどーん。
【ライブ・ドライブ・オンライン】
……FDVRの、いわゆる『ロボゲー』はそれほど珍しくない。
人類は仮想世界であっても『自分自身の手で他者を攻撃する』という行為への忌避感を乗り越えられなかった。生身の身体で戦うFDVRゲームはあまり流行せず、その代わりに業界のメインストリームとなったのが巨大ロボを操って間接的に敵と戦う『ロボゲー』なのだ。
だから2040年現在、FDVRのロボゲーはたくさんある。LDOがたくさんあるロボゲーのひとつにすぎないのなら、私は興味を持たなかっただろう。
けれど、宣伝動画の続き。ライブ・ドライブ・オンラインのセールスポイントが紹介されていく。
ライブ・ドライブ・オンラインは仮想世界に五感を再現するフルダイブ技術を利用した『FDVRゲーム』である、巨大ロボの操縦者となりロボットアニメのような大迫力の戦いを体験できる、自由度の高いカスタマイズシステムによって思うがままの愛機を創り出せる。
そして――ライブ・ドライブ・オンラインは、動画配信者としての『人気』が重要なゲームである。
「……人気」
詳しいゲームシステムについては公式サイトをチェック、とのこと。人気という言葉に惹かれ、少し調べてみた。
ライブ・ドライブ・オンライン、公式での略称は『LDO』。動画サイト『らいすぺ』こと『LiveSpace』の主導で開発されたFDVRゲーム。最大の特長は動画配信で得た評価ポイント『イイネ』がゲーム内での力となるITPシステムである。
例えば戦闘、LDO世界の巨大ロボット『EDA』は、動画配信で集めたイイネを自らのエネルギーに変えて戦う超兵器らしい。なのでイイネを得るほど戦いを有利に進めることができる。
イイネの力で戦うゲームなのだ。
また、戦闘以外の配信で得たイイネはゲーム内通貨『ICO』に換金される。お金でより良い武器なんかを購入すれば、EDAをより強力に強化可能。
イイネで兵器を買うゲームなのだ。
視聴者が、イイネを送ることで推しを直接的に手助けできる。配信者が遊ぶ様子を見ているだけしかできない普通のゲーム実況とは違う、まさに視聴者参加型。
このシステムが見る専の視聴者層に大好評で、LDOの動画配信はいまライスペで一番人気のコンテンツとなっているんだとか。
(視聴者が多い、大人気のゲーム)
配信をすればたくさんの人が見てくれる、そんなゲームならば。
(それなら、私も人気者になれる……?)
それは、私がLDOを始めようと――配信をやってみようと思うに十分な理由だった。
お読みいただきありがとうございます。読み進めていくうちに気に入ったらぜひブックマークや評価(下の【☆☆☆☆☆】を押せばできるみたいです)してやってくださいね。するとなんと作者のやる気が上がります。さらにこの作品がランキングに上がればあとに続く者が現れロボ系と百合系の小説が流行りはじめます。たぶん。
イチャイチャメカメカ書けるようがんばるので今後ともよろしくおねがいします。