大きいから強いんです S.アルミラ
対戦終了後、光の粒子が舞う転送エフェクトと共に、ヒノワが私の前へと戻ってきました。彼女はフィギュアモードのAS01TAUを重たそうに抱えながら、にっこり笑顔を向けてきます。
「ただいま、アルミラちゃん!」
「おかえりヒノワ。勝ちましたねぇ」
「ん、勝ったよ! うぇーい!」
「うぇーい!」
《うぇーい》
《やるじゃないの》
《恐ろしい機体が出来上がってしもうたな》
「みんなも応援ありがとう」
《っつっても今回は俺たち何もしてないんだよなぁ》
《イイネをするまでもなく敵が吹っ飛んだしな》
《……っていうか俺らいらんのでは?》
おっとマズい、自分たちの応援が必要ないと思って視聴者が減ったら困ります。我々は応援したくなるような存在でなければなりませんからね。
「まあまあお待ちなさいなせっかちな視聴者ども。AS01TAUを運用するには、あなた方の応援が必要不可欠なのです」
《そうなん?》
《マジっすか》
「まじまじ。……確かに今回、AS01TAUはイイネの力を使わぬうちに敵を街ごと滅ぼしました。けれどそれは相手、それと今回の対戦形式と相性が良かっただけなのです。AS01には無視できないほどの欠陥がありましてね」
《欠陥?》
「稼働時間、連続して戦える時間ですね。あの超巨大なタイタニック・アーセナル・ユナイト・ユニットを装備した状態のAS01、EMOリアクターを動かさずに戦うとなんと1分でEN切れを起こし、まったく動けぬ巨大棺桶と化します」
《1分!?》
《稼働時間が短すぎる……》
「デカイせいでEN消費もえげつないんですよ。バッテリーも大量に搭載しましたけど焼け石に水。なので稼働時間を伸ばすにはENを――イイネをどんどん集めてEMOリアクターに放り込む必要があるのです」
《今回の相手はトラップで陣地を構築し戦うタイプ、しかも敵は1機のみ。相手の陣地にミサイル斉射するだけで終わる戦闘だったから稼働時間の短さも気にならなかったってことッスね》
《これが相手の数が増えるチーム戦、PvE戦とか、攻撃を回避しまくる高機動機が相手とかだと長期戦不可避ッス。その場合は私らがイイネを送らんと戦えないと》
《なるほど》
「それと、イイネを集めないと必殺武装も使えないんですよ。TAUユニットは艦首部分に以前テストしたOSキャノンを内蔵してるんですけどね、それを使おうと思ったらもっとENが必要です。だから」
と、ちょうどいいタイミングで、ヒノワがセリフをねじ込んできました。
「こ、これからも応援よろしくお願いします、です!」
「……ということですよ。オーケー?」
《そこまで言われちゃ断れんな》
《アルミラさんはともかくヒノワちゃんの頼みだしな》
《任されよ》
《ダチにこのチャンネルのこと教えてフォロワー増やしちゃるわ!》
沸き立つコメント欄。ヒノワのトークもなかなか上達してきましたねぇ。よきかなよきかな。
私はうんうんと頷きつつ、この勢いを維持するべくさらなる戦いを提案します。
「そんじゃ今日はもう1戦、ランダムマッチいっときますか! いいですね、ヒノワ?」
「大丈夫!」
《え!? 今日はもうひと勝負を見てっていいんですか!? やったー!》
《見せてもらおうか! AS01の力を!》
《マッチングはよ》
「エントリー完了。あとは対戦相手が見つかれば――見つかった!」
ヒノワがランダムマッチへエントリーした直後、さっそくと見つかる対戦相手。
「今の時間はマッチングが早いですねぇ。さあさあ行ってきなさい! デカいから強いという説得力を! 圧倒的巨体の暴力を見せつけてやるのです!」
「了解、いってきます!」
《がんばれー》
《やっちゃれやっちゃれ!》
再び光りに包まれて、その場から姿を消すヒノワ。私が観戦画面を起動させれば、彼女の送られた対戦ステージが映し出されます。
次なる戦いの舞台は砂塵の吹き荒れる荒野のど真ん中。試験機のテストをやっていたあの地にそっくりのステージです。




