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たとえばこれはαルート  作者: 扉野ギロ
第三章 秘密兵器レッドヘアーズ
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11話「急流」

「早速だけど……」


机に伏せていたハンディデバイスの画面を自分に向け、発信履歴を立ち上げる。


「あんたの家族の名前と年齢、大体でいいから今現在の居場所を教えてくれ」

「妻の名前はジュリ、年齢は娘はヒヨリだ。妻は、昨日から軽井沢へ旅行に行っている。娘は西麻布の区立小学校にいる」

「オーケー、わかった」


すぐに画面上の『アッシー』をタップする。


一コール目が鳴り始めるとすぐ、木田は「これだけで十分なのか?」と不安げな眼差しでこっちを見つめた。

当然問題はない。俺は空いた手のひらをかざして頷く。


一コール目が鳴り止むのと同時、何か奇妙な感じがした。


ニコール目の始まり、一瞬だけ呼吸のしづらさを感じる。自ずと目線が窓の外へと向いた。

ニコール目の終わりまでに眼球を動かせたのは左右往復一回分。


三コール目の始まり、目の前の木田と目が合う。

彼は自分の耳を指差し何かを言った。


「――カリヤ」


木田の口の動きに対して、音が遅れて脳内で再生されていた。

それと同時、視界の端で急激に情報が増えたのを感じた。


咄嗟に目を向けたそこに、交差点を通りがかろうというビークルが数台ある。

見る限り何もおかしなことはない。ただ、何か……。


ビークルの"顔"がこっちを向いている気がする。だけど、ただ気がするだけだ。実際、ビークルに目があるわけでもない。


他の異変を探そうと視線を逸しかけた背後で響く、耳にこびりついた電子音が気になっていた。


四コール目。

これまで一度も辿り着くことのなかったところへ到達するのと同時、違和感が真実だと理解した。

すぐに視線をビークルへと戻すと、俺の目はその"カーブに差し掛かっているのに車輪の角度が変わっていない"異変を捉えていた。


咄嗟に木田の胸ぐらを掴んで立ち上がる。

持ち上げた成人男性には不思議と重さを感じない。


「奥へっ!」


困惑した様子の男になんとかそれだけ伝えて、胸ぐらに絡みついていた手を襟首に持ち替え、そばの椅子をなぎ倒しながら店の奥へと引きずるように走る。


逃げるなら裏口。そして、裏口があるのは通常バックヤードだ。

カウンターの奥で唖然とこっちを見つめる店員に、「おい!」と声をかけた背後。


耳慣れた嘶きが遠くに聴こえた。

直後、まるでシンバルばかり集めたイカれたアンサンブルのような騒音が店内に響き渡る。


店員の視線が窓の外へ向いていた。つられて背後へ視線を移す。


つい数秒前までそばにいた大窓に、それまではなかった蜘蛛の巣状のヒビが走っていた。


捕らえられた視線が窓の向こうで起きている事態を認識するのに、さらに数秒。

滲みが逆巻きされるように輪郭がはっきりとしていく背景は、今日初めて見たばかりの見覚えのある光景だった。ただ、


「なんで……」


その漆黒のビークルを見間違えるはずがない。

これまで何度も目にしてきた彼の愛車が、交通事故を起こしたという事実をすぐには理解できずにいた。


アッシーの愛車はこっちを向いたまま、動きを止めた薄水色のビークルの前左角に自らの鼻先をめり込ませて同じく停止している。

この状況、ドントウォーリーがそばにいなければどうなっていたんだろう。考えると少しだけ背筋が寒くなる。


「狩役だ。まさかこんなに早く……っ」

「ああ、わかってる」


焦る木田の言葉がまるで意味がないように感じられるほど頭は冷めていた。それなのに、これからやらなければならないことの優先順位を付けられずにいる。


一刻も早くこの場を離れるのが先か。

事故を起こしたアッシーの安否を確認するのが先か。


二つを同時には行えない。だけど、これからの俺にも運び屋の力は不可欠だ。


アッシーが今すぐに動けるか確実ではなく、そして彼の唯一無二のパートナーは今コロと一緒に離れた場所にいる。

ドントウォーリーがそうそう無いことだろう三人目の担当を、すぐに手配できるかわからない。

狩役の仕事の早さを考えれば、その短い時間ですら命に危険が及ぶかもしれないというのにだ。


「おい、逃げよう。またすぐに追手が来る!」


焦って興奮している木田が煩わしい。


「わかってるって! 少し黙ってろ!」


我慢できずに怒鳴るのと同時、そばの店員が「あっ!」と叫ぶ声が響く。

驚いて顔を上げた直後、ドン、と鈍い音がした。


また、ビークルが動いている。

アッシーの愛車を押し退けじっとこっちを見据えたまま、ミシミシ、と音を立てて窓ガラスを押し破ろうとする姿に狂気に満ちた執念が感じられた。


「まずいぞ、早く!」


一人立ち上がり俺の反応を待つ木田の気配を感じながら、状況に反して頭の中はゆっくりと回転していた。


最も優先すべきことはなんだ。

逃げることとアッシーの安否確認と、俺たちが守るべきことは。


「…………」


立ち上がり、ハンディデバイスをいじり始めると、木田は「おい!」と凄んで俺の肩を掴んだ。


「そんなことをしてる場合か! 急がないと殺されるぞ!」

「だから、わかってるって。けど、俺たちには確実に逃げ切れるっていう保障が必要だ。一分一秒が危険だっていうならなおさら、あいつを頼るのが正解だ」


こうなったら、アッシーには多少怪我をしていたとしても鞭打って働いてもらうしかない。

通話に応じてくれることを祈りつつ、画面上の『アッシー』に触れようとした瞬間、デバイスはメッセージを受信した。


『バックヤードに入って左手、奥から二番目の扉の先。エントランスホールで待つ』


送信者は『アッシー』。

目の前にある漆黒のビークルの存在と噛み合わないメッセージに若干混乱しつつも、体はメッセージに従って動き出していた。



「こっちだ」


扉を開くと、少し離れたところでアッシーが手招きをしている。


「お前、事故は……。無事だったのか」


早足でアッシーについていきながら、すぐそばの彼が亡霊か何かのようにも感じる。


「もちろん」


アッシーは前方を向いたまま、ふふん、と鼻で笑う。


「用意周到なのは今に始まったことじゃないけどな。今回のはどういう意味なんだ」


彼の仕事振りに対する感動を伝えたつもりでそう言った。

するとアッシーは、「俺だって驚いてるよ」と肩をすくめた。


アッシーに付いてエントランスホールを抜けると、そこは立ち並ぶビルの間にある共有広場になっている。

外側から入り込んでくる風は強く、バランスよく配置された緑がバサバサとやかましくて落ち着かない空間だ。


「で、要件は?」

「要件ってなんのだよ」


聞かれていることの意味がまるで理解できずに聞き返すと、アッシーはあからさまなめ息をついた。


「仕事だよ、仕事。連絡だけしてきても、依頼してくれなきゃ働かないぞ」


そうだった。俺は短く咳払いをして声を整える。


「彼の家族――木田ジュリ夫人と娘の木田ヒヨリを保護してほしい。ただ、わかってると思うけど俺たちは今狩役に狙われる状況で、しかも相手は異様に仕事が早いタイプだ。だから今すぐだ、速攻で頼む」


了解、とすぐ返事をくれるものだと思っていたが、アッシーは「ちょい待ち」と後ろを振り返りもせずに左手を上げた。


そしてすぐになにやら独り言のようにつぶやき始めた。きっと会社への連絡だろうけど、会話の内容は風の音にかき消されてほとんど聞こえない。


その間にもアッシーの足は進み続け、広場を一直線に横切り、また別のビルとビルの間に通された道へと向かっていた。

点々と道しるべのように街頭の置かれた通路は、その片側が細い堀のようになっていて、ゆっくりと流れる水の中を水草が揺れているのがわかる。


「木田さん」


ふいにアッシーの声がして顔を上げると、彼は後方のこっちに向けてハンディデバイスをかざしていた。


「お二人の容姿のご確認をお願いします。まずは木田ジュリ様です」


画面に写っている女性の姿に、俺は思わず目を見開いた。


「間違いない」


こくん、と頷く木田の表情は神妙なまま特別な変化は見られない。

そんなの自分のパートナーなら当然だ。

様々な意味で人間関係の垣根が希薄になっている現代。とはいえ実直そうな初老の男のパートナーが、おそらく三十そこそこに見えるほど若いとなれば予想が裏切られて驚きを隠せない。

一体どこで知り合ったっていうのか。


邪推を巡らせる間にアッシーのデバイスの画面が変わっている。

その画面いっぱいに写っている女性の顔が、今しがた見たばかりのジュリ夫人と大差ない。

わけのわからない状況に、反射的に眉間に力が入っていた。


「ヒヨリだ。間違いはない」


さっきと同じく頷く木田の横顔に、「ちょっと待て」と質問せずにはいられなかった。


「あんた、さっき娘は小学校へ通っているって言ったよな? 見た感じ母親と変わらないけど、嘘をついたのか?」

「嘘? そんな無駄なことをする意味はない。ヒヨリは教員だ」

「……あ?」


教員、という言葉に一瞬思考が停止する。

つまりこの木田という男は、そういうことが平気な価値観の人間、ということか。


「あー、なるほどね」


科学者は先駆者であることが理想的だと思う。

俺はそこを理想とするから、決して先の世界を見ることはないんだろうと理解したような気がした。好きなものは好きだという、こだわりというか純粋さが欠けている。


そうして俺たちが余計なことを話している間にも、自ずと足はこの広場からの出口へ向かって近づいている。

それが白く輝いて見えるビルの切れ間の少し手前で、アッシーが不意に足を止めた。

微かに聴こえた舌打ちが嫌な予感を抱かせる。


「引き返します」


こっちを振り返ったアッシーの顔には何の表情も浮かんでいない。

単に真顔というわけでもなく、笑うのを止めた、といったふうな冷たさを孕んだ真剣な顔だ。


追手だ。

アッシーの挙動から壁の向こうの気配を悟った俺は、すぐに踵を返した。

そのすぐ目の前で、状況を飲み込めていない木田が前を向いたままあたふたしている。


俺は戸惑う木田の目を真っ直ぐ見つめた。


「何か来る。とりあえず中央まで戻るんだ」

「お、追手か?」


頷く俺の脇にアッシーが追いつく。


「ドローンが来ていますが、それはウチで対処します。警戒されると面倒ですので決して走らないで、絶対に上を見ないでください。タイミング的にはそれからでしょう、ここに何人か入ってくるかと思います。こちらの出方がわからない以上、いきなり襲ってくるとは思えないので、まずは焦らず私の指示に従ってください」


さあ、行きましょう。

淡々と話すアッシーの横顔に、覚悟を決めたような顔をして木田が短く頷いた。


そこから十数歩進んだところ、風の音に紛れてガシャと乾いた音がした。

言わずもがなドローンが破壊された音だとわかるが、それがどこに落ちたのかはわからない。


本能的に周囲を探そうと顔を動かしかけた俺の肩にアッシーの手が触れた。


「次が来ます。このまま真っ直ぐ向こうの出口を目指してください」

「ああ、わかってる」


油断しかけていた自分を落ち着かせるように深く頷いた。

すると次にアッシーは、徐ろに体の前に構えていたハンディデバイスの画面をこっちに向けた。


画面には、高いところから撮影された広場が映し出されている。

周囲には無数の窓がついた背の高い壁面、濃淡の違う土色のタイルが敷き詰められた地面があって、青々とした樹木が何本も生えている。

ところどころにベンチが置かれていて、その内の一つ、広場の中央付近のもののそばに三人の人物がいる。


動画だとわかったのは三人が徐々に画面の端に向かって進んでいるからだ。


「ここの?」

「もちろん」


視界の端でアッシーの顔が頷くように動いた。


「後方から三人」


言われて改めて画面に目をやると、壁に沿って堀のある今しがた通ってきた通路とそっくりな映像に変わっていた。

そこには、引き返す直前にいなかった三人の人物が映っている。


横一列に並んでカメラに向かって早足で進んでくる彼らは、皆揃って目と口だけを覗かせた真っ黒な被り物をしている。

それだけでもう連中が異常なのは明らかだというのに、それに加えてそれぞれの手には巨大な刃物、鈍器、といった凶器が握られている。


ヒトかヒューマノイドかわからない連中を、たとえば……。と、どう処理するべきか頭を過ったところ、


「なにか、様子がおかしいぞ……」


カメラの画角に見切れるギリギリのところで、覆面の一人が歩く以外の何かをしたように見えた。

次の瞬間。


――ダッ、ダッ、ダダッ、ダッ、ダダダッ


地面を叩く粒立った音が、木々のざわめきの間を縫って聴こえた。

咄嗟に振り返ると、重たそうな武器も持っているにもかかわらず大きく両腕を振ってこっちに向かって走ってくる生の連中がいた。


顔を正面に戻す最中、同じく振り返っていたアッシーと一瞬目が合う。


「先にっ!」


アッシーが声を上げるのと同時に俺は木田の背中を強く押し、目線の先に伸びる通路へ向かって走り出す。


「こんな、話が違うぞっ」


走り慣れていない木田が不安定に足を運びながら文句を言う。


たしかにアッシーはああ言っていたけど、俺はこの状況を予想外というほど驚いてはいなかった。

あんな格好の連中だ。むしろこうなる状況のほうがイメージには合っている。

ただ、予想外なこともあった。


光の差し込む出口まであと少しというところ、不意にそこを影が遮った。

見覚えのないビークル。

即座に腰元の武器を握り、木田のジャケットを掴んで手前に引いた。


「乗ってください!」


後方からアッシーの声がして、後部ドアが開く。中には誰も乗っていない。

すぐに木田を中へ押し込み、そこでようやくアッシーを振り返ると、彼はいつの間にか一人になっていてすぐそこまで走って来ていた。


覆面三人のことが少し気になったものの、俺も急いでビークルに乗り込んだ。

次いでアッシーがそばの俺を押しのけるようにして乗り込んだところで、ドアが自動で閉じ、ビークルは勝手に動き出した。


「さっきの連中は?」


座席の間を通って前列席へ移動するアッシーの背中に尋ねる。


「Don't worryってとこ」

「……殺したのか?」


俺の質問に、アッシーは姿勢を整えながら肩をすくめた。


「当社は運送業を行っておりますので?」


アッシーがハンドルを握ると、ビークルの加速が変わった。

正面少し先にカフェの事故現場が見える。その周辺には、どこから湧いてくるのか、さっきまではなかった人集りができていた。


何があったのか、誰か死んだのか。

聴こえないはずのざわめきの手前、ビークルは道を折り返して街の中心部に背を向けて走り始める。


「家族は無事か?」


ひと息つく間もなく木田が前のめりに言った。


「すでに当社の監視システムがお二人が無事であることを確認し、護衛機の配備も済んでいます。ただ、スタッフ到着まではある程度時間を要しますので、それまでは当社護衛機が安全を確保しますのでご安心を。スタッフ到着後には、改めてお伝えさせてください」

「マシンか……。今みたいな連中相手にどこまで信用できるんだ」


「先ほど程度の連中であれば、確実に。ただ、当社の監視機はリスクヘッジの点からAIを用いていません。ですので、もしも違法ヒューマノイドが相手となった場合はイレギュラーのため、沈黙させることが難しいこともあります」

「なんだと!?」


木田が声を荒らげた。


「つまりなんだっていうんだ。違法ヒューマノイドが相手なら二人を守れない可能性があるっていうのか?」

「もちろん、その可能性はありません。あくまで、対象の沈黙が、という意味ですので、その場合は対象の活動を抑制するようにプログラムされています。もしそれで間に合わないようなことがあれば、即座に当社独自の護衛システムを利用しますので、信頼していただければ」

「信頼だと?」


と、なぜか木田の目線を感じた。


「なんだよ」

「私は、殺し屋に世話になるのは初めてだ。当然、会うのもな。それに、運送業と言ったな。彼が運び屋とかそういうものだということは理解する。だが、殺し屋などという不届き者が使う怪しげな運び屋のいうことをどう信頼しろというんだ」


どうなんだ、と木田が厳しい目でこっちを見る。


「どう、って言われてもな……」


つまるところ、エビデンスか。

木田は、ドントウォーリーがドントウォーリーであることの根拠みたいなものを欲しがっているのだろう。

たとえば俺の経験の話をしたとしても真偽がよくわからないことだし、彼らの広告を見せたところでどうにもならない。


初見の利用者とリピーターが、説得以外に共通認識を持つのに必要なこと……。そういえば。

思い立って、俺はハンディデバイスを取り出した。


そうして画面が色を持った瞬間、思わず「あっ」と声が漏れた。

コロから一通のメッセージを受信していたようだ。即座に通知をタップする。


『三角屋根の家を探すから、長野県に行く。アッシーの相棒って人と一緒だから来なくて大丈夫』


三角屋根の家? 長野県?

三角屋根については、林理沙が山台工業の車の件でロゴのことを言っていた。

実際、それは過去の山台工業のロゴだったわけで、林理沙の話が真実だったことが証明されている。


つまり、山台工業はクロイソアカンド――ないし、レッドヘアーズクラブ(仮名)を追っていたかもしれないということだ。

そのへん理由は不明のままだけど、とにかく山台工業が怪しいことをしている事実は明らかになった。

それに、今こうして狩役に命を狙われている以上、そこを疑う理由はないだろう。


それだけのことだと思っていた。

それが、コロはまるで三角屋根の家が存在しているかのような言い方をしている。長野県にある、と。


いったい林理沙から何を聞いたのか。

あいつは何をしようっていうんだ。


「……ったく」


あいつに任せようと決めたハラが具合を悪くしそうになる。

彼女の元へ。

言葉が喉元までせり上がってきたところで、木田が「おい」と厳しい声でせっついた。

ふと正気に戻り、一旦コロからのメッセージを除けて、改めてMVGI口座を立ち上げる。


「見ろ」


少し前にドントウォーリーから引き落とされた七百万ポイントの履歴。

木田に彼らの価値を理解させるには、利用料を見て貰うのが間違いない。


「ストークデリバリー? なんのことだ」

「彼らの利用料だ。見ての通り安くない。俺は彼らのリピーターで、彼らがこれだけの請求をするってことがどういう意味かはわかるはずだ」

「…………」


木田の視線がじっとデバイスに向いているのを感じる。


「まあ、信頼なんかできないのはわかるよ。だけど、あんたは俺を利用するって決めたんだろ? 今さら信用できるかどうかなんて期待するほうがおかしいぜ。

それに。ここまで来たんだ、後には引き返せないことはわかっているはずだ。あんたはもう、この流れに乗るしかないんだよ」


自分で吐き出した言葉に、ハっと息を呑む。

行くところまで行く――っていうのは、もう止まることも後に戻ることもないという意味だったのか。

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