実録!断罪イベ
誤字の御指摘に感謝します
2024年11月20日
「エイプリル・ラ・フィエール、我、フィリップス・エリス・デ・ドナティエールは、そなたとの婚約を破棄する」
王立エトワール学園の卒業式を終え、夕刻から始まった記念ダンスパーティー開始直後のことだ。ドナティエール王国第三王子・フィリップスは、ファーストダンスを踊るために、婚約者のエイプリルに歩み寄っているかに見えた。
何しろ、このふたりは、今期卒業生のうちで最も身分の高い王子と、その王子とすでに八年もの婚約期間を過ごし、卒業後まもなく結婚式が予定されているフィエール辺境伯第二姫エイプリル。とりあえず踊ってもらわなければパーティーが始まらない。
エイプリルを迎えに行くフィリップスの前の人波は割れ、エイプリルを取り囲む友人たる令嬢たちも、今日を最後に学友から臣下の礼をとる相手となる王子と、近い将来その妃となる令嬢のために、すすっと場をあけた。
楽団の指揮者は、指揮棒を構え、各パートの演奏者は第一バイオリニストと指揮者を見て構えている。
壁沿いには、ずらりと侍従とメイド、そして、出入り口には盛装の王宮騎士団の警備。学生だけのパーティーで最後の友情をかわす場といっても、参加者は全員貴族の令息・令嬢。
この状態で来るか? 婚約破棄イベ! 大丈夫でしょうか、フィリップス。
広くあいた場所で、軽く足を開いて立ち、腕を組み、エイプリルをにらみつけるフィリップス。その後ろには学友である高位貴族令息が三人。そして、四人目の令息が、可憐な少女をエスコートしてフィリップスの左横にリード、その右手をフィリップの左腕に渡す。
対するは、辺境伯令嬢エイプリル。彼女を半円形に取り囲むのは、未来の王子妃のために形成され今日を迎えた、将来の王孫乳母・王子宮女官候補の集団である。教養、状況対応力は同年代ダントツ、陰謀や謀略に対しても生家で十分な教育を受けている。
王宮はコワイところなのだ。
エイプリルは、卒業生たちの間でトップの身分ではないが、姉である辺境伯家長姫は、王弟カンデラ公爵夫人であり同時に王太子妃ペイシェンスの親友、そして王孫の乳母。辺境伯家跡継ぎの兄は王太子の側近だ。
辺境伯とは国境の安定を任される王の信頼厚い武闘派のための位で、領土は広く、その兵団は兵の数も多く精鋭でもある。そして、あえて言うならば大金持ちだ。そうでなくては大兵力を維持できない。フィエール家に対しては納税の義務は免除されており、兵団維持名目の下賜金も多額だ。なにしろ、この人物に寝返られたり、辺境伯家が国境急襲に耐えられなかったりすれば、国ごと隣国に取られるのだ。
長姫を無事取り込み、長子を、跡を継ぐまでの期間限定ではあるが、王太子の側近に引きずり込み、第二姫を嫁に取れば、やっと辺境伯の忠誠を信頼できるという、王国ギリギリ、必死の国策を崩壊させる第三王子。と、その取り巻き。画面は緊迫してまいりました!
「エイプリル・ラ・フィエール、我、フィリップス・エリス・デ・ドナティエールは、そなたとの婚約を破棄する」
「え、ほんとですか?」
と、おもわずエイプリル。
この娘は、王立学園にいやいや入学させられるまで、地元では「びっくり姫」として知られていた。それはもう、領民が全員で気付かないふりをする以外ないほどぶっ飛んでいた。
領地の東の町でお祭りがあると聞けば信じられないくらい溶け込んだ服装で「潜入」して、お祭りの記録と称した「その時ジャンは、マリアにプロポーズした!」とか、「幼馴染三人が殴り合い!その美人さん」などというおっそろしく俗っぽい、いや、貴族令嬢が興味を示すにはいささか相応しからぬゴシップネタを集める。
西で新しい橋が架かったと聞けば、先頭で渡り初めに参加すべく馬で駆け付け、まさか、と唖然とする父親の前で、変装丸わかりの付き添い騎士たちを従えて橋を渡る、という根性を見せていたのだ。
しかも、常にスケッチ要員を連れ、父親に絵入りレポートを提出していたが、これが意外と役に立つので、強くとがめられることもなく、いわばやりたい放題だった。
この娘が、自分に起こった「奇跡のおいしいイベント」を見逃すはずはなかった。学園在学中は厳しく取材とレポートを禁止されていた、その二年分のうっぷんが今花開く〜
「フィリップスさま、婚約破棄でまちがいありませんか?」
「そう言っているだろう。理由を聞かせてやろう」
「ありがとうございます(うれしすぎる)、すいません、少々お待ちいただけますか、準備させていただきたいのですが」
「よかろう」
フィリップス王子は、もちろん心の準備だと思ったのだった。
「アニー、準備」
エイプリルは壁際に並ぶメイドのひとりに素早く右手を挙げ、指を二度折り曲げて指示を送った。(状況2のAであろうか?) アニーは後ろを向き、メイド服の裏に縫い付けてある大きなポケットから紙束と木炭を取り出した。積んである予備の皿や盆の中からちょうどいい銀盆を取ると、すすっとエイプリルに近付いて膝を落とす。
エイプリルはドレスの隠しから、魔道具を取り出し軽く魔力を流しながら小声を出す。
「王歴372年サリュの月、エトワール学園卒業記念ダンスパーティー開始直後、ファーストダンス開始前。発言者第三王子フィリップス殿下、参加者、殿下のご学友四名、および女性一名」
「録音開始します。状況解説はエイプリル・ラ・フィエール」
エイプリルの指示と動作は流れるように素早く、音声記録の魔道具は非常に珍しいものであるため、正面から見ているフィリップス達には、エイプリルが自分のお付きメイドを呼んで控えさせたことと、下を向いて何かつぶやいたことしかわからなかった。
「お待ちいただき感謝いたします」
「心の準備はできたか、それでは聞かせてやろう」
「はい」
うつむいているエイプリルの口元は、嬉しさのあまり引きつっていた。世紀のゴシップ、王国史に一言一句間違いなく残せる実録・婚約破棄、オイシすぎる。(残せるかなぁ〜、封印じゃないのか?)
「エイプリル・ラ・フィエール、おまえは、私の婚約者であることを笠に着て、この(と、左側で自分の腕に手を乗せる少女を見て)、アリエス・ロシュフェール男爵令嬢に数々の冷酷な仕打ちをしたこと、明らかである。その性根の悪さ、思いやりのない態度、王家に入れるには相応しからぬものだ。王子妃としての品格を持ち合わせず、私個人としても妻と呼ぶことはできない」
「お待ちください、殿下」
エイプリルの友人陣営から、たちまち声が上がった。
「なんだ、カッサンドラ候爵令嬢」
「まことに僭越ながら、ロシュフェール男爵令嬢は聴講生です。エイプリルさまとは接点がないようにお見受けいたします」
「そんなことは問題にならないだろう、ミリアム」
フィリップスの陣営から、カッサンドラ候爵第一子、ミリアムの婚約者、筆頭候爵マール第二子、フレデリックが答えた。
「同じ寮から、同じ学園に通っているのだ。接点はいくらでもあるだろう」
(発言は、ミリアム・カッサンドラ、フレデリック・マール。と、エイプリルが小声で録音を入れる)
たしかに、エイプリルは学園の寮に住んでいた。彼女にとっては、人間関係情報収集の趣味を発揮するために通学より寮を選ぶのは当然のことだった。
「わたくしからも質問をお願いいたします」
「よかろう」
「冷酷な仕打ち、との仰せでしたが、具体的には何を指しておりますのでしょうか」
この質問は、マリニアム候爵第第二子、アレクサンドラから出たため、流れ上、婚約者であるライフェルド侯爵第三子、オーギュストが答えた。
「アリエス嬢のメイドに故意にぶつかり、大切にしていた茶器を壊した。また、熱を出して寝ていたアリエス嬢に届けられた薬を、届けると偽って受け取り、ごみ箱に捨てた。他にも些細なことはあるが、アリエス嬢は、寮や学院の廊下を歩くと聞こえるように悪口を言われ、教室に入ると一斉に話を止めるなど、すべてレディ・フィエールが将来の王子妃という立場を笠に、クラスメイトに指示していたと告白している」
「告白でございますか?」
「そうだ」
告白って、秘密を話すことよね、告げ口のことじゃないけどね。そもそも八年越しの婚約者がいて、結婚式の日取りまで決まっている男にちょっかい出せば、女子全員に悪口言われるのは当然でしょうに、と、アレクサンドラは内心で思いはしたが、ここを突っ込むと話が混乱するので、とりあえずもっと大切なことを指摘してみた。
「エイプリルさまが、アリエスさまのメイドにぶつかって茶器を壊したとのことですが、メイドは、茶器をお盆で運んでおりましたのでしょうか?」
「どういうことだ」
オーギュストには状況がわかってないとしか思えない。全然だ。
「メイドは、普通は茶器をワゴンで運びますでしょう? ドアの開け閉めがありますし、お湯を運んでもおります。お盆で運ぶなどということは致しません」
「それは、もちろんワゴンだろうな」
「さようでございましょうね、それで、メイドにぶつかったとして、茶器が壊れますでしょうか」
「なるほど、それでは、メイドにうまくぶつかり、メイドがワゴンを倒したのではないのか」
オーギュストが、アリエスを見る。アリエスは、ただ、首を振るだけだ。
(アレクサンドラ・マリニアムおよびオーギュスト・ライフェルド、とエイプリルの小声)
「まあ、それはそれは」
半円状に集まっている令嬢たちの何人かが、腕を組んでオーギュストに鋭い視線を送った。
メイドがワゴンを押している。それはありふれた日常の風景だ。ただし。
メイドが令嬢とすれ違ったり追い越されたりするなら、メイドはワゴンを廊下の端に寄せ、自分もその横に立ち止まって令嬢の通過を待つ。
そもそも、そのあたりでお茶道具を運んでいるのが誰のメイドで、誰の茶器を運んでいるのかなど貴族の子女が気にすることはない。まして、イヤガラセ目的で仕事中のメイドにぶつかるなど脳筋で迂遠なこと、生粋の貴族令嬢には思いつきもしないことだ。
「未来の王子妃の立場を笠に着て茶器を壊す」というのは、お茶会を開催するよう「強要」して、茶器が大切なものであることがわかれば、「うっかり」取り落して、割ってしまうようなことを言う。
「まあ、どうしましょうわたくし、あなたの大切なものを壊してしまい、本当に申し訳ありませんわ、すぐに新しいものを準備させますわ」とかなんとかオロオロして見せれば、様式美として百点だ。
この程度のイヤガラセもできないようでは、宮廷で生きてはいけない。何ならついでに「毒のような気がいたしました」とか何とか、あとから周囲にボロっとこぼしておけば完璧だ。
アリエスがエイプリルの婚約者に取り入っている以上、「毒程度は普通にあるかな、警戒するのは未来の王子妃として当然だ」 と周囲も納得の展開にすぎない。
エイプリルサイドの令嬢が第三王子サイドに敵対的に反応するのは、当然のことなのだ。彼女たちはエイプリルが第三王子妃と決まったために、辺境伯に親しい貴族の令嬢たちから選りすぐられた特別メンバーだ。この二年、生涯に渡るチームを作るために友情と連帯を育むべく、多大な時間と努力を傾けてきた。もちろん、辺境伯家から折に触れて援助も出ている。それなのに、エイプリルが婚約を破棄されるとなれば、彼女たちの王子妃侍女としての未来もなくなるのだから。
普段、非常におとなしやかな、ケティネット伯爵令嬢、フローラが珍しく一歩前に出た。
「これはわたくしにとっても、大変に重い質問ですので、ぜひ正確にお答えください」
「よかろう、なんだ」
フィリップス王子が少々気圧されるほどだった。
「ご承知の通り、わたくしの叔父タビーサム子爵は、王宮で薬剤の管理の任を承っております」
「そうであったな」
「叔父は、学園の医療と薬剤についても責任を負っております。
ご存じの通り、学園の寮で病人が出ますと、女子寮の場合ですと女性医師が診察に参ります。
そして、ついてきている助手に処方した薬の指示書を渡し、助手が薬剤を受け取り、最初の一服は必ず本人が飲むところを見届けます。副作用やアレルギー・ショックがないことを確認するのです」
「それが?」
「その薬を、助手からエイプリルさまがお受け取りになって、ごみ箱に捨てたとのことでしたが」
「助手が、アリエスの爵位が低いことを侮って横着したのであろうよ」
「助手が、でございますか?」
令嬢集団の雰囲気はさらに険悪になった。たったひとりの女子生徒の「ちくり」を盾に、王宮薬剤管理者の進退を問うているのだ。こんな王子に付いていては、実家まるごと取り潰しにあう。
「そのお言葉、重く受け取らせていただきます。明日、いえ、本日直ちに叔父に質し、フィリップス殿下が、医療助手の怠慢を責めておられると必ず伝えます。
その助手の怠慢を理由として、エイプリル様との婚約を破棄なさったと」
「い、いや、あるいは、一度目ではなく、二度目か三度目であったのであろうよ。本人が飲むところを見とどけるのは一度目だけなのであろう?」
「はっきりとは申し上げかねますが、解熱剤を二度目に処方するならば、一度目に処方した三回分の解熱剤では効かなかったということです。解熱剤を重ねて処方するなら、かならず診察があったはず。
医療記録を見れば簡単にわかることです。アリエスさまがこちらの寮で診察をお受けになったなら、記録が残っておりましょう。もちろん診察した医師と助手の名前も記載されております。必ずやその横着な助手とやら、突き止めてごらんにいれますわ。そのような者を叔父が見逃すとも思えませんが」
「そ、そうか、よろしく頼む」
ロシュフェール男爵令嬢は、今すぐ薬を必要としている顔色になっていた。
「フィリップス」
「あ、姉上、こんなところで何を」
「何を、ではありません。侍従が真っ青になってわたくしの部屋へ駈け込んできましたよ。あなた、婚約破棄してるらしいですね」
「その通りです」
「王の承認は得ているのでしょうね」
「あ、いえ、とりあえず本人に告知しているところです」
「はあ、何を言っているのですか。これは、王が辺境伯に申し入れて三年がかりでようやく成立した婚約ですよ。あなたの意見など誰も気にしていませんわ」
「姉上、結婚するのは私ですが」
「それがどうしたというの」
「はあ」
「そもそも、その娘はだれ」
「アリエス・ロシュフェール男爵令嬢です」
「だから誰?」
「ですから」
「ですからではありません。正式に認められるまであなたの婚約者はエイプリルです。エイプリルは、王陛下、王妃陛下、皇太子殿下夫妻、わたくしたち兄妹、さらに元老院、すべてが認める未来の王族です。あなたの左手がファーストダンスのエスコートをするのはエイプリル以外にありえません。すぐその娘の手を剥がしなさい」
「あの、おねえさま」
「エイプリル、ごめんなさいね、この馬鹿弟。今夜家族全員でみっちりお説教します」
「いえ、大変楽しませていただきましたので」
「え?」
「どうぞお聞きくださいませ」
エイプリルは、魔道具を「再生」にした。
「エイプリル・ラ・フィエール、おまえは、私の婚約者であることを笠に着て、このアリエス・ロシュフェール男爵令嬢に、数々の冷酷な仕打ちをしたこと、明らかである。その性根の悪さ、思いやりのない態度、王家に入れるには相応しからぬものだ。王子妃としての品格を持ち合わせず、私個人としても妻と呼ぶことはできない」
更にエイプリルは傍らで黙々とスケッチを続けているメイドから、フィリップス王子と、王子にもたれかかっている儚げな美少女、アリエス、そのふたりを守るように取り囲んでいる四人の「ご学友」が描かれた紙 数枚を受け取った。その中から、儚げな表情のアリエスに甘い視線を送るフィリップスの一瞬を描いた見事な一枚を王女に見せた。
「わたくしも、たしかに王子妃としての品格は持ち合わせていないように思いますし。妻と呼ぶことはできないとの仰せですので、ここは潔く」
「え、エイプリル?」
エイプリルのそばから、カッサンドラ候爵令嬢の声が上がった。
「そうですわね、こんなステキな証拠がありますもの、わたくしもフレデリック・マール様との婚約を解消させていただけますでしょう」
「え?ミリアム、まさか」
「何をおっしゃいます。これだけの証拠がありますのよ。
証明できもしないのに王宮の薬剤管理者に罪を着せかねないことを、このようにたった一人のご令嬢の言葉だけを信じて、衆人環視の中で婚約破棄など。わたくしだっていつあなたから冤罪を押し付けられるかもしれませんもの。
カッサンドラ家として、危険を冒すことはできませんでしょう?カッサンドラ候は納得してくださると思いますけど?」
「ミリアム、俺はそんなことは」
「いえ、十分に見せていただきました。たった今。目の前で」
「みりあむ〜」
「それではせっかくですのでわたくしも」
「え?まさか」
マリニアム伯爵令嬢アレクサンドラは、にっこり笑って、婚約解消参加宣言をした。
「オーギュスト・ライフェルドさま、せっかく卒業間際に整った婚約ではございますが、エイプリルさまとミリアムさまのご婚約がなくなりますのでしたら、わたくしだけこのままとも参りません。
この先のご出世も見込めなくなりましたオーギュストさまに対して、薄情とも思いましたがここは、友情をとらせていただきますわ」
辺境伯の後見を失う第三王子の未来は暗い。旗色をはっきりさせないと、辺境伯から第三王子側近候補である婚約者に付いた、と見做され、実家が疑われるかもしれない。自分がエイプリル派であることの表明はできるだけ早いほうがいい。
エイプリルは、騒然とする会場からどさくさに紛れて抜け出すと寮の自分の部屋へと急行し、誰かが止めに来る前に素早く再生された録音を全文、文字で書き起こした。表紙にはアリエスを愛し気にのぞき込む王子のスケッチを採用した。小冊子が完成すると、デュープリケイトの魔道具で複製を作りまくり、その夜のうちにメイド・コネクションを使って女子生徒に配った。
タイトルは、「王子、その愛。婚約破棄の日は来た」。 (ちょっとやりすぎなんじゃないかな?)
辺境伯にあとでがっちり絞られたが、「だってお父さま、もう卒業した後でございましたよ?卒業式終っておりましたもの。お約束は、学園在学中でしたよね?」とか、ぬけぬけと言い抜けたのだった。
ガンバレ辺境伯、娘は手強いぞ。
エイプリルには、自分のスキャンダルをものともせずに記録してばらまいてしまうという、何というか、一種の「記者魂」がきっちり宿っていたらしい。王子妃として適任であったかどうかについては、確かに疑問が残る。
後になって、辺境伯家が国土防衛戦を展開した時、エイプリルはすでにいい年で、大きな息子ふたりを持つ母となっていたが、チャンスを逃がすはずはなかった。絶好のビューポイントから戦況を見守り、辺境伯家の対応や、各貴族家からの援軍、王家からの派兵などについて「きわめてスキャンダラスな内情」を書き残した。
十年ほど「冷やして」置いた挙句にこっそり配られた「戦場の真実」は、秘密の大ヒットをとったのだった。
母に張り付いて、諜報と索敵に動いた次男は無口な顔面に満足を張り付け、護衛指揮を担当した長男は、そのあとしばらく母を見たら小言を連発する癖から抜け出せなかった。
雀百まで踊り忘れず。 いや、むしろ、栴檀は双葉より芳し。
この作品は、婚約破棄が好きすぎて、ついに読み専から底辺投稿者へと「変身!」した、初投稿作品です。右も左もわからないのに、よくまあ、投稿などしたものだと思いますが
結局は、この作品に引きずられるようにして書き続けています
読んでくださったすべての方に、感謝の気持ちを
2024年11月11日 倉名依都