表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

消滅のネバーランド

作者: 藤原 アオイ

「ねぇ、大人ってなに?」


 今にも泣いてしまいそうなほど、弱々しい声。それは答えを得ること無く空へと消えていく。だって、本当の意味での大人なんてこの世には存在しないのだから。


「ねぇ、大人になるってなに?」


 サンタクロースの正体を知ることが出来たら大人になれるのだろうか。それとも、コウノトリが赤ちゃんを運んでこないと知ったときか。


 もしかしたら、時を重ねれば誰だって大人になれるのかもしれない。本人が望む望まないに関わらず。



 ――――それなら私はもう大人なのだろうか。



 純粋であることをやめ、わがままであることをやめ、社会の歯車として死ぬまで拘束される。それが彼女の脳内で結ばれた()()という虚像。


 希望を見いだすこと無く、ストレスによって自ら命を断った大人たち。中身は全く変わらないのに、()()()()だけが大人になってしまった子どもたち。


 彼女はそのどちらでもない。


 どちらにもなれなかったのだから。


「私は、大人になりたくない」


 彼女は、()()になることを、拒絶した。彼女自身が大人であることを、拒絶したのだ。


「ずっと純粋で、疑うことを知らない子どもでいたい。永遠に遊び続けたい。美味しいものだって、好きなだけ食べたい。好きなように歌だって歌って、寝たい時間に寝たい」


 人間ならば誰しも持つ当たり前の欲求。でも大人になったら、それは抑圧されてしまう。だって大人は歯車でしかないから。個という概念は社会に求められていないから。


 彼女が空を見上げた瞬間、天から涙が落ちてくる。白くて凍りついていて、まるで歯車のような形。空気抵抗によって壊れていくもの、摩擦に耐えられず解けていくもの。


「あと一週間で私はひとつ年をとって――」


 結晶が指先で踊り、水に還っていく。それが世界の摂理。解けた氷はもとの構造を取り戻すことはない。そのはずなのに、それが世界のはずなのに。


「――そうしてまたひとつ若返る。私は永遠に大人にはなれない。サンタクロースもこんな私には愛想をつかして、プレゼントをくれなくなった」


 彼女は大人で、それなのに永遠に大人にはなれない。だって彼女自身が永遠に()()()であることを望んだのだから。


 その願いは半分叶って、そして半分叶わなかった。彼女は子どものまま、大人になってしまったのだから。


「私は……永遠に大人にはなれないんだ」


「それに、子どもにもなりきれない」


 サンタクロースにプレゼントを貰う側にも、子どもにプレゼントを渡す側にもなれない。永遠に十四歳を繰り返す。


「あの人たちみたいに偽りの大人になれれば、私も……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ