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【打ち切り】Byte(バイト)!!!!!!!!   作者: ゆぴた
第一章   白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
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005話:失いたくないもの


あたりも真っ暗なので最初は自分が目を開いているのか閉じているのか分からなかった


深夜2時、俺、秋野白露はリビングの真っ赤なソファーに寝かされていた。



風邪をひいているわけではないのに体がだるい。


頭がぼかぼかするのでおでこを触ってみると何重にも包帯が巻かれていた。




頭には包帯が丁寧に、丁寧に、巻かれていた。おでこと包帯の間には熱さまシートだろうか、


粘着力のあるものが感じられた。気絶して眠っていた俺にはこうも丁寧に包帯を巻くことはできない。


目頭が熱くなる。




神代紅水だ、彼女しか、いない


「なんで自分を追い出した奴の手当てなんてするんだよ、ああ畜生! もう意味わかんねえ……… なんなんだよおっ!!」


ぼろぼろと床に涙が落ちる。


頭をかきむしり、はらりとほどけた包帯の端が床につき、それを吸う。




ばしいっっ!!


「めそめそしてんじゃねえっ! 早く追え!!」


誰かから尻を蹴飛ばされてベッドから無様に投げ出される。


「だれ、だ?」


ベッドで仁王立ちしているのは作った覚えのないもう一人の俺だ。


「何度でも言ってやる! さあ、追え!」


「ぐう… くっそおおおっ」


部屋を飛び出す。


やったことのない階段二段下りをして転びかけるが、構わずだんっだんっだんっと1階を目指す。


最後に彼女と会ったリビングをのぞき込む。しかし、いつも通りこの時間は誰もいない真っ暗な部屋。


闇の中で一枚の手紙が机の上に置いてあるのを見つける。






秋野白露様


さっきはごめんなさい


明日送られる荷物は絶対に一つ残らず受け取ってください。地球救出作戦に使う大事なものが入っています。念を押しますが、必ずすべて受け取ってください。


あなたが地球を救ってくれることを心から願います。


短い間でしたがありがとうございました


楽しかったです


それではさようなら


神代紅水







風呂場を探しに行くが、普段通り。お湯の色は赤くないし、バスタブに中に彼女の姿はない。




制服のまま家の外へ飛び出し、身体の数を1から今俺が作ることができる分身の最大値、17にする。




スマホのライトをつけたまま疾走する。

「まだ近くにいるかもしれない!!」

自分に言い聞かせる 


信号が赤だが走り抜ける、駆け抜ける


機動性を重視して学ランの上着のボタンをすべて外し道に捨て去る


名前が書いてあるのでいずれ学校に届くだろう。


まだ深夜2時。あたりは真っ暗だが彼女を求めて走る!捜す!


最悪、警察署に指名手配してでも!!


さっきまで一人に戻りたいと言って神代紅水を追い出したのに、なんでその人を必死になって走って捜しているのだろう。自分の行動に矛盾が起きているのにあきれてしまう。



もし再会したら俺は何て言えばいいのか、俺は何のためにこうして息を切らしながら彼女を探しているのか、いい答えが一つも浮かばない。


それでも彼女は俺にとって失ってはいけない存在だと直感がそう言っている。


走る 息が切れる 肺がつぶれそうだ 気管が締め付けらている


7キロを1時間で走ってきたが、目標が見つからない。 


「ううぅっっ げほっ  げほっ ぐ、ぐううううっ!!」


倒れそうになり電信柱にもたれかかる。


「くそっ どこにいるんだよ…」


左胸をぎゅううううっと押さえる。爪が皮膚に食い込み血が流れるが恐ろしいことに何も感じない…  内側からの痛みが強すぎるのだ。


「やべえな、このまま爆発するかもしれ、、、ねえ」


当然だ、疲労も苦しさも17倍なのだから!!


「はあっ  はあっ  はあっ!」





ぱっ 


いきなりの懐中電灯のまぶしさに目をつむる。


「君、こんな時間に何してるの?どこ高校?」


警察官だ しかも二人いる。夜の市街地を巡回していたのだろう。


「ちっ!!」


今ここで捕まって取り調べを食らったら俺の秘密がばれてしまうかもしれない


突っ走る。だが足が重く2,3歩踏んでから膝から崩れ落ちた。


警察官はこんな俺を取り押さえるのは1人で十分だと思ったのか、

俺を押さえつけていない方のもう一人はパトカーを持ってくる。と走って行った。


「離せっ!離せっって! 離せっつってんだろ!」


所持品(財布、生徒手帳、スマホ)をすべて取られ、


無理やり富山県警察とボディーに書かれた車に乗せられる。






「「警視、 夜遅くお疲れ様です」」


「…  お疲れ様です」


身柄が二人の警察官から署にいた男に渡された。


ずっとうつむいているので容姿は分からないが、声から結構若いように思えた。


30歳はまだいっていないのではないだろうか、


取り上げられた持ち物の中には17のアルバイトのシフトが書いてあるスケジュール帳が入っている。


(終わったな  俺の人生 )




コンクリートで囲まれた6畳ほどの広さの部屋に通され、二人きりになった。取調室なのだろうか鉄格子が窓にはまっている。逃げるには今入ってきたドアからしかない。


警視は椅子をひいて俺に座るように促す


「何があったんだい?」


「    」


こんこん(ノック音)


「持ち物についてなんですが気になる点がありました この帳面なんですが」


俺を押さえつけた方だ。 しかもそれは間違いなくスケジュール帳だ! 


「わかりました。10分ほどで終わるので何もしないで待っててくれますか 


それと、この部屋は以降立ち入り禁止とします」


「了解しました!」


ぎ、ぎぎぎ、ぎぎぎ   がちゃん


重いドアが閉まり警視は内側から鍵をかけた。。





目の前の男が「んんんっ!!」とわざとらしく咳払いをしてきた。


「ダメじゃない、ちゃんと充電しとかなきゃ!」


「 (え?)」


うつむいていた顔を上げる。


すると俺の目の前でスマホを画面が上になるようにして握る。


彼女を探すのに使ったスマートフォン。


真っ赤なバッテリゲージがみるみるうちに黄色、緑色になる。


「あ、あああ… 」


顔を上げると俺が知っている人間が警察官の服を着ていた。


その顔をした人間は、人の家の風呂に勝手に入り、赤が大好きで、


そして、


「おかえりなさい」と労ってくれた




紛れもなく、神代紅水だった。




続く




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