表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【打ち切り】Byte(バイト)!!!!!!!!   作者: ゆぴた
第一章   白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
4/19

004話:おかえりなさい


「ただいまー」



神代紅水が玄関で出迎えてくれた。


「おかえりなさい!!」




皆にとっては何ともないセリフに思われるだろうが、10年近く一人暮らしをしている俺にとってはすごく違和感のあるセリフだ。


何年ぶりだろうか 久しぶりに耳にする。というかバイトから帰って家に誰かがいる、という事自体がやはりあり得ない事なのだ


それに、まだ俺は神代紅水という人物をよくは知らない。当然だ、会ってから1時間しか経っていないのだから


俺が今現在彼女について知っていることと言えば、俺の両親と接点があり、彼らに学んだ魔法を使ってスマホの充電ができ、赤がとにかく好きで、俺より多分年上な少女。


あっちだってそこまで俺の事を知ることができなかった。第一印象はミスった。

冴えない顔した一人暮らし風呂覗き変態野郎と思われているかもしれない。


それでも、“おかえりなさい”でバイト帰りでへとへとの身体がほんの少し癒えてしまったのは否定できない。


「 た、ただいま」



しかしこれまで一人だった。


一人ぼっちだった。身の回りの事は全て自分でやる代わりに絶大な自由を手にできる状態、それが一人暮らし。


親が生きていたころは普通に他人とコミュニケーションができた。いや、むしろ進んでやっていたと夜渡橋さんが言っていた。


だが、高校2年生となった今では他人と話したりするのはとても辛いので嫌っている。

学校でも顔には出さないようにしているが、うんざりだ。

他人と一緒にいるだけで俺は疲れてしまうのだ。一人暮らしをしてきたおかげで“一人”に磨きがかかったのだ。


それなのに学級委員長を選んだ、居眠りした自分をひどく後悔する。


もしこの先何の仕事にも就かずに引きこもりになっていたら、話し方を忘れてしまうまであるかもしれない。




Q.あなたは次のどちらを選びますか 

A. 世界を救うという責任を果たす 

B. 2000万円もらって同じ空間に美女と一緒にいる 


愚問だな。答えはAだ。


世界を救う責任を負うほうに決まっている。俺はメットゼット説創始者だからだ。

ほとんどの人は後者を選ぶだろうが、よく考えてみてくれ


<メットゼット説>

身を粉にして得た、金(moneyエネルギー(energy) 時間(time) は 自分(zibunn)のもの…

(メットゼット説信者、絶賛募集中だ!)


そう、これが当たり前のはずなのだ


なんで他者とそれらを共有する必要がある? ないないない!!


そもそも俺は一人が好きなのだ。いや、他を嫌うから一人を好むのかもしれない。



彼女には元いたところに帰ってもらい、そして俺は元の生活を送る。


俺は“元通り”の生活が欲しい!


俺は一人になりたい!!


俺は多分こじらせているのだろうが、どうだっていい。


俺はこのままが好きだ。


それにこんな人間と一緒にいたら一緒にいるその人も楽しくないだろう。ならば関係は不要だ


それにここで縁を切ってしまえば、世界救助という責任からも逃げれる。





一階には“他人”がいる。 


他と遮断できる、たった一つしかない空間、秋野家。


それが失われた暁には俺はどうなってしまうのだろうか…





お互いが仮面をかぶりあい仲良しを演じることになる前に、事態が元通りにできなくなる前に、手遅れになる前に、


手を打つ!




「神代さん、ちょっといいですか?」


「何かしら?」


「・・・」

ああやって威勢のいいことを語ってはいたもののいざそれを言えとなると難しい。

でも言わなくては俺は他に縛られることになる。

 

「あと私からも言わなきゃいけないことがあるの まあまあ重大なことだから」

迷っていたから先手を取られてしまった。


そしてこう続ける

「私、色々あって明日から白露と同じ高校に通うことになってね…」


いきなりとどめを刺されそうになる。

(そんなぁ…!! そんなことって… なんでこっちが言いにくくなるようなことを言うんだ!!)


「んんっ!  あ、あぁ…」


(言え! 言うんだ!! 今言わなかったら結局いつまでも言えなくなってしまう)


「あ、あの」「それと私ね…」


「 家から、その 家から 出て行ってください」「この家に住みたいのだけれどもしよかったら…」




そう両者が言ったことにより、これまでに体験したことがないであろう気まずさに捕らわれた。


もっともこれまで他を拒み続けていた秋野白露にとっては“気まずさ”自体が初めて体験する事だった。


5秒の沈黙は俺の頭がエラーを起こすには十分な時間だった


俺は正しいことをした、間違ってなんかいない!正しいことをしたんだ!


俺は正しいんだ!


今俺が言わなかったら手遅れになっていたのだから。


それなのに…なんだろう、この痛みは、


心が痛い じわりじわりと虫に心を食べられているみたいに…




1秒1秒と時間が流れるにつれ痛みは急激に増していく。




自分が消えてなくなってしまうほどに心が痛い!息ができない!頭がぐらぐらする!

気持ち悪い!


「ハアッ… ハアッ!  あ、ああぁ…     」


だああああああああん!!


倒れた。


地上1,7mから床へ急降下、地べたのフローリングに頭を強打する。


続く


ついに再会を果たす白露と紅水。


物語は再び動き始める!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ