018話 夜渡橋サイド(4/8)
白露が襲われる時点からを
夜渡橋霜鵲の目線で書きました!!
私は夜渡橋 霜鵲、情報庁の人間だ。
4月8日
【午前11:30】
その時、私は自分の部屋で国に提出する書類をまとめていた。
『プルルルル……!!』
ボタンが一つもない、受話器だけの電話が鳴る。
普段から電話がかかってくることは滅多に無い。
おそらく庁内で何か問題があったのだろう。
基本的に私の部下である岩波風砕が問題を処理する。彼は優秀だから、ほとんどの問題を解決してしまう。
だから、私のもとに来るのは、そんな彼ですら処理不能なアクシデントなのだ。
電話がかかってくるということは、つまり緊急事態を意味しているのだ。
私は覚悟を決めて電話を取った。
「はい、夜渡橋です」
「例の秋野少年の電話番号で情報庁に通報があったんだ!!」
「分かりました、すぐにそちらに向かいます」
なるほど、かなり緊急事態だ
チェアにかけてあったジャケットを羽織りながら部屋を出てエレベータに乗る。
情報処理室のドアを開ける。
「風砕、修復の方はどうなっていますか?」
「完了したよ、USBメモリの方も無事だ」
「白露の現在位置を頼みます」
白露の電話番号をスマホに入力する。
(繋がらない……)
「夜渡橋……もうすぐで出るぞ!!」
さっきまでキーボードをたたいていた風砕の手が、エンターキーを最後に動きが止まる。
「……な!!」
私は息をのんだ。
ここにいる30人全員の目がモニターにくぎ付けになる。
バス一両を余裕に包み込めるほど大きなスクリーンにパソコンが投影したものは。
地図と彼の居場所を指す赤い点ではなく、アルファベット6文字だった。
大画面に赤い文字でNO‐DATAと点滅する。
「手段を変えてもう一度検索をお願いします 少し席を外します」
私はこの場を風砕達に任せて、駐車場に走る。
【12:10】
一台ぽつんと停まっていた車にキーを差し込む。
高速でカーナビに白露の住所を入力して、アクセルを踏み込む。
渋滞を避けるようにして作られたコースを法定速度ギリギリで走り抜ける。
この道をまっすぐで到着だ
白露!!どうか無事でいてくれ……!!
【12:40】
車から降りる。
車道には灰がバラまかれたみたいにグレーで塗りつぶされていた。
灰の量でここで起きた火災がどれほどのものだったのか伺える。
風砕の言った通り、建物は修復されているようだ。
建物だけが綺麗な状態で少し不気味にも思えた。
そこで大きなブルーシートが道に人の目につくように捨てられているのに気づく。
1.5mほどのふくらみ。
「まさか……」
シートを両手で掴んで勢いよく剥がしとる。
「白露!!!!!!!」
白露を後部座席に乗せた。
結論から言うと彼はまだ生きていた。
原形をとどめた服、顔や手の状態から大きな火傷はしていないようだった。
出血箇所はなんとか止血したが、治療を急がなければならない様態だった。
地面に大量の赤黒い液体がこぼれていたのだ。
そして腕。
出血が一番多かった、いや。ほとんどがここからの出血だった。それもそのはず。
彼の右腕は切り取られていたのだ。断面が平面だった。硬い骨や筋のある肉関係なしにスッパリと切り取られていた。
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