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【打ち切り】Byte(バイト)!!!!!!!!   作者: ゆぴた
第二章   わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり   
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015話:ドーナッツの穴


眠りから覚める。

窓から日の光が差し込む。


「ん……」

ぐっすり眠っていたからか、結構いい気分だ


すん、と部屋内の空気をかいで自分がどこで寝ているのか判断する。

『読んで字のごとく』という言葉があるなら、『香って“におい”のごとく』もあるはずだ


香ってにおいのごとく 消毒液の匂い


「病院か……」

俺はその病院独特の“折れたベッド”に寝かされていた。


10畳ほどの広さのえらく質素なつくりで、部屋の中には以下の3つしかなかった。


まず、ベッド

俺が今横たわっている。

寝心地は良く、頭の方には何やらいろいろなスイッチがついている。


次に、小さな丸テーブル

ピザがちょうど一枚乗るか乗らないかの大きさ

デジタル時計と紙、ペン以外は何も置かれていない……


最後は点滴

普通の点滴……なんだろうなぁ 

たしかに病院は風邪とかで、何度か行ったことがある。

でもこうして点滴をされるのは初めてだ。

針という異物が刺さっているのは気持ちのいいことではない。

だから注射も嫌いだし、点滴なんてもう嫌悪さえしている。


どうにかして外したいものだが、

くそぉ……刺さっているのを見るとくらくらしてくる。




さて俺は個室で点滴をされて一人というわけだ


「………暇だ」


究極の暇つぶしガジェット、スマートフォンを探しているが、全く見当たらない。

前に言った通り探すところも限られているので、

これだけやっても無ければ、無いのだろう。


あるものはある、ないものはないだったっけ?そんなことを唱えていた哲学者がいた気がするが……



「紅水に電話かけるか……」

時計は朝の6時半を示している。早起きの彼女なら今ごろ授業の用意も済ませて、朝食を食べているだろう……


「くそっ スマホなかったんだ!」


病院なのだから公衆電話があるはずだ


俺は点滴とともに病室を出る。

*************************************


「!“#$%&‘() (少々お待ちを 代わりの者を呼んできます)」


「行っちゃった……」


公衆電話が見当たらなかったので場所を聞くために、病院の受付に来たのだが。

ワンチャン日本語で行けるか?と思ったが残念ながら無理だった。

すると奥から日本人っぽい人が出てきた。


「はい、担当変わりました。どうかされましたか?」


「つかぬことをお聞きしますが、ここは日本ではないですよね?」


「! 日本の方ですか?」


「はい!そうです!!」


「お名前をうかがっても?」


「秋野白露です」


「ありがとうございます 

あぁ!そうでしたね、日本なのか否かでしたね

あなたの言う通り、ここは残念ながら日本ではありませんねー  アメリカです」


「アメリカ……(やっぱりかぁぁ!ここり来るまででそんな感じはしていたが……)

ちなみにアメリカのどこですかね?」


「ニューヨークです この病院はニューヨーク中央病院です」


「……」


「大丈夫ですか?」


「まぁ、はい……」


「また何かあったら聞きに来てください」


「ありがとうございます」



さっきは大丈夫!と反射的に答えてしまったが嘘。結構だいじょばない


「ニューヨークかー」

あれ?そういえばアメリカの首都ってニューヨークとワシントンD.C.のどっちだっけ?

いや、今はそんなことを考えている場合じゃない!


英語が点でダメな俺は、言語のドーナッツでいう穴の立場にある。

だから なんとかして日本人、いや、日本語が少しでもわかる人でもいい。そんな人を探さなくては生きていけない。受付の人にも迷惑かけちゃうし詰みそうになってからあの人に頼ろう。


英語をちゃんと勉強しておけばよかった、なんて後悔はしない。後悔よりも前進だ!


*************************************



フロントの長椅子に腰を下ろし、両のてのひらで口を覆うようにして思考をめぐらす


「さぁて!どうしたものか!」

こうも派手に追い込まれると、かえって燃えてくる。やる気が心の底から湧いてきた。


相手は人間だ、臆することは無い。それにいくら俺だって【アップル】や【ゴー】ぐらいは分かる!

日常で目や耳にしてきた外来語のおかげで、ちょっとは自分も単語力はあるんじゃないか、と思えてきた。


相手はネイティブなわけだ、高1レベルの英語力でかなうはずがないのは火を見るよりも明らかなわけだ。

ここで伝家の宝刀の登場だ!

……といってもこれは紅水から教えてもらったことなのだが


「スピーク モア スローリー(もう少しゆっくり話せ)」


これで何とかなるらしい。話せ、か なんだか命令形ってのもなぁ。

ちょっと考えて宝刀の刃をアップグレードした


「いざ出陣だぜ!」


*************************************


病院の中で暇そうな人を探す。あっ あの人なんかどうだろう

メガネをかけたスーツ姿の会社員。明らかに日本人ではない。

公衆電話か…… セルフォンだっけ?



「『すみません、電話はどこですか』」


「『はい? なんで私があなたの携帯電話のありかを知っているんですか?』」


「『……?(複雑すぎて理解不能) "プリーズ” スピーク モア……』」


「『それに私は今忙しいんだ、仕事中! 暇じゃないんだよ! 違う人をあたってくれ!』」


最後ら辺にI’m busy!って言っていたのは聞き取れた。

敵意丸出しの話し方。相当ストレスを抱えているのかなぁ

彼は俺から避けるように病院から出て行ってしまった。


確かにさ。忙しいなか話しかけたのは悪かったよ、


でも!言わせてくれ!


「くそったれめ!」


独りごとにしては大きすぎた

日本語が通じないのをとって愚痴を飛ばす。

周りの人はちらっと俺を向いただけだ。


「こらこら!そんな言葉使うんじゃないよ!」

*************************************

誰だ?この人は?

「フー アー ユー?」


「あはは、日本語で大丈夫、大丈夫!」


「アメリカの人……ですよね?」


流ちょうな日本語を話しているのは瞳が水色で肌の色が薄い、白衣に身を包んだおじさんだった。


「うん、俺はアメリカ人だよ


君が秋野白露君だね?」


「はい、そうなんですが…… なんで僕の名前を知っているんですか?」


「さっき受付の人間から聞いたんだよ 日本語話している奴いただろ?」


「はぁ……(あ、あの人か)」


「とにかく こっちに来てくれ 話すことが沢山あるんだ!

もう、頭がパンクしちまいそうよ!」


言われて俺は陽気な白衣の男について歩く。


「俺の名前はドライク・メトロポリだ この病院の院長だよ」


「院長さんなんですか!?」


「うん。 こう見えてもね あははは!」


「いろいろ迷惑おかけしてすみません!」


「おいおい、やめてくれよ~ そういった言葉は俺の話をすべて聞き終わってからにしてくれ」


「? ……はい」


ドライクさんは最上階のエレベータの104の数字を押す。


「今から結構高いところに行くけど OK?」


「はい、OKです!」


ガラス張りの直方体は、全くの振動を発生させずに、高速で目的地を目指す。


「さっき 君の名前を受付の人から聞いたって言ったけど実は違う」


「?」


「いや、確かに秋野白露がフロントにいると教えてくれたのは彼だが、秋野白露という存在を教えてくれたのは別の人間だ」


「そうなんですか」


「君も知っている人間だよ?」


「やたらともったいぶりますね」


「夜渡橋だよ 夜渡橋霜鵲  情報庁代表取締役会長の」


やとばし……?


夜渡橋!?


「えぇ!?」

ずっと耳にしない名前だったから頭から引き出すのに少し時間がかかった。

驚きのあまり、大きな声を出してしまった。


夜渡橋さんは両親を亡くした俺を救ってくれた人間のひとりだ。自分の研究をしながら俺に家事などたくさんのことを教えてくれた、父親のような人……

俺の一人暮らしの原点の人でもある。

情報庁の代表取締役? そんな……まじで!?


「ほら 着いたよ ここが僕の部屋だ」


*************************************


「ほらよ!」


白衣の男は俺に向かって何か板みたいなものを投げてきた


「おっとっと!」

スマートフォンだ 爆発の時に付いたのだろう 画面にまんべんなく何百もの細かい擦り傷があった。


「ここに運び込まれてきたとき、君の服の中に入っていたんだ」


「あ!(そうだ、忘れかけていたが俺は今、入院しているんだった!)」


「そうだな。じゃあまず秋野君がここに運び込まれたときについてから話すとするか」



続く

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