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世界崩壊  作者: 古亜
世界崩壊編
2/9

変動

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 天使集う天界、その最奥。高慢に王者の如く悠然と構える者に一人の天使が跪き頭を下げる。「お呼びですか?」「カルテット、時空が歪んでいる結界に閉ざされた世界について聞いたことがありますか。」「いえ。」頭を上げず淡々として返される言葉に溜息を漏らす。「興味ないかぁ。そこに『彼女』の気配があるんだけどなぁ。」わざとらしい言い方が癇に障ったか、顔を少し上げ睨みあげる。「ああ、睨まないでよ。」「睨んでなど、場所は?」「愛想ないなぁ。それで、行ったところで何ができますか。この件、我々は関与しません。時間の無駄、私は他にすべきことがありますし、私以外の天使では束になっても彼女に勝てませんよ。そうそう、あなたには当分の間、暇を与えます。ずっと働いてもらってますからね、働きたいなら調査報告を纏めるのに手こずっている子達の手伝いでもしてあげなさい。」手をひらひらと動かし下がるように動かす。「お気遣い、感謝します。」カルテットは立ち上がり、その場を去る。「傷の一つぐらいは付けといてね。」


 カルテットが居なくなったことを確認し不適な笑みを浮かべる。「一回くらいは勝てるといいね。」



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 眼前に聳え立つ強固な金属の塊と感じられる重厚な壁、それを見上げる男と鬼の少女。「これか。」手に触れ、在り方を確かめる。「大層な壁じゃねぇか、お前の力じゃどうしよもねぇだろ。これ、悪魔だの怪異だの(お前の得意分野)じゃなくて神象やら天使ども(お前ら側)だぞ。」「正確には、特異な人間が魔力や神秘を混ぜたものだ。」物質としても異常な厚さ、結界も異常な緻密さ、これを作ったのは余程の暇人か。「何のためにお前を連れまわしたと思っている。」「は?」「一瞬でいい、『穴』を開けろ。」唐突な命令に困惑しつつ結界を調べる。「この結界、上手くやれば誰でも中に入れるけど。」「それでは『他の奴ら』に気付かれる、居場所を全員に知られるくらいならばお前だけの方がましだ。『借り』も作っただろ。」溢れ出しそうな殺意を抑え、苛立ちをぶつけるように壁を引き裂き『穴』を開ける。「ほらよ、開けたぞ。」「行くぞ。」「は?」足を踏み入れた男は再び停止した少女に対し振り返り、知能を憐れむ目で説明する。「護衛だ。万が一の時、この体じゃ策がないからな。」「流れ弾で死ね。」



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 結界内部、結界活性化から数日後、森の中の更地。眠る少女の頬を蛇が舐める。「ん? あ、リューおはよう。」『おはようか、悠長だな。今のお前は舐めプに舐めプを重ねた上で負けたというのだろ?』「いやぁ、舐めプは仕方ないじゃん。まさかあんなインチキアンドロイドみたいなの予想できないって!」『止めを刺したのは人間だ。』「2対1は卑怯だろ!」『敵が人数有利になるように誘い込んでいた奴がよく言う。』言葉に詰まった少女は諦めて空を見上げる。「でもこの世界楽しめそうでよかったよ、変な契約結ばされた時は焦ったけど。」『その契約は既に終了した。良かったな、内容を書き変えられて。死ぬまで働くのかと思ったぞ。』その通りだ。「リューはあの契約ヤクザ達どう思う?」『思惑が揃っていない。結界の穴もそれ故だろう。』「じゃあ、つまらなさそうだなぁ。格下の仲間にはなりたくないし。あの人間達の武器って魔力あったよね?」『強くはなかったが質は素晴らしかったな。お前のような魔女の混ざりものか、本物の魔女が味方しているかもな。』「強くなかったのかぁ、どうしよっかなぁ。」腕を組み考え込む少女を横目に蛇は思いついたことを口にする。『あの契約の内容を覚えているか?』「えっと、確かエネルギーソースとして結界内で各自で生き続けみたいな……、あ―――。」『やるか?』落としていた大鎌を拾い上げ勢いよく立ち上がる。「よし! あの人間達がやるよりも早く私達であいつらの手先を倒そう!」『そいつらの倒し方、知っているのか?』「ノリ。」『そうか。』


「お!」空から降りてきた水色の輝きが大鎌の溝に玉となって嵌る。「これでみんな揃ったね! さあ、行こう!」



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 結界内部ある場所に一人の少女が自己も何もわからず彷徨っていた。視界に映った何かに足を止める。「おやおや、こんなところにおひとり? お嬢さん。」目の前に立ちはだかるも、少女の反応は乏しい。「おっと、これは?」何もわからず一点を見つめている。目の前の何かは事情を理解し笑みを浮かべて対応を変える。『失敬失敬! 人の言葉も通じないというのは考えっていなかったよ。』理解したのか、反応が変わった。『君の心の寂しさ、私が満たしてあげるよ。おいで。』何があったのだろうか―――これ程に空っぽな人間はそうそう見ない。それでも彼女の心は何かを抱えている、本人にも不明な何かを。『全部私が教えてあげよう。もう孤独になんてさせないよ。』差し伸ばされた手を、少女はゆっくりと弱々しくそれでも確かに掴んだ。『私はルノーレ。今は神様の手先みたいなものだよ。』



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 ゾンビ―――何らかの要因で死者が蘇り動き出すというもの。大抵の場合、体の一部が腐ったかのようなビジュアルで名を挙げられるが男の体は服も含め清潔な状態だ。要因はウイルスや死霊術等様々である。この場においては後者であろう。複雑な目的もなく飢えに従う獣ではなく命令を与えられ操作されるラジコンだ。しかし、ラジコンというものは故障した時、思うように動かすことができなくなる。砦を守るための兵列を形成する集団から外れ1人森を歩くのもそれ故か。いや、ただの故障ではなく改造だ。男が指輪のスイッチを押すと何処からともなく2人の女性が降り立った。「お久しぶりですね、マスター。」「くたばっていなかったようで何よりです。」形状は瓜二つだが対応が明確に異なる。「くたばっていた。確かに死んだという自覚がある。τはどうした?」「まだです。僅かな期間ですが。」「もしかして心残りでも無くしに来ました?」「そういう訳では無い。例の物は持ち歩いているか?」「はい、こちらに。」背中に背負っていたケースを取り出す。「都合のいいことに死んだ時に持っていたものはそのままだ。少し歩くのも悪くないだろう。」「お暇ですね。」


同時刻、別の場所「今、何か……。」風か?「τ、どうかしたの?」「いえ、何でもございません。」



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 「どうして神様は私なんかを『使い』に選ばれたのでしょう?」聖域の神とその『使い』などの限られた者しか足を踏み入れることのない区画を2人は歩いていた―――正確には子が親の後を追う形に近い。「知らん。」「ジェ、ジェイスさんはどうして、選ばれたんですか?」「知らん。」「し、知らないって!? そ、そんなことないですよね!?」ジェイスは諦め真面目に答える。「私はただの取引だ。奇跡的に利害が一致した、故に契約した。つまり、私にとって『使い』は仕事だ。」「他の人もそうなんでしょうか?」「さあな、確かリメレアは忠誠どころか毛嫌いしていたな。皆同じというわけでは無さそうだ。」「そ、そうなんですか。リメレアさん仕事熱心だからてっきり神様と仲いいのかと。」お前はどうなんだと背後に目をやる。「わ、私はただ何もなく、ただ連れてこられただけです……。」「確かに、何故選ばれたのか。」「や、やっぱりそう思いますよね! 私なんか……」「お前だけだ。皆選ばれた時点で既に諦めている。あの神のことも思考も、我々がいくら考えようと分かる事はない。」まあ、例外もいるが。「私だけこんなうじうじと……。」「考えることを放棄しているだけだ。我々は一生の死を迎えたかのような状態だ。」「え?」「お前は生きているんだな。」どういう意味?


 「それで、何故私に付いてくる?」「え? あ、それは、その、話をちゃんと聞いてくれそうで乱暴そうじゃない人がいいなぁ、って。」まともに話を聞くという時点で限られてくる。乱暴そう―――というよりは機嫌が悪そうといったところか。「それこそリメレア、それにフィリアスが適任だ。」「リメレアさんはいろんなところ跳び回ってるし、フィリアスさんは何処にいるか••••••。それにジェイスさん優しそうでしたから。」優しそう、そんな言われ方をしたのは久しぶりだ。「変わっているな。」「そうですか?」「そういえば、お前種族は―――」


 物音だ。


 「い、今の音、ここからですか?」宝物庫か、ここには誰もいないはずだ。「開けるか。」袖口から武器を取り出し構える。「せ、聖域って誰でも入れるわけじゃないですよね?」「ああ、ただ侵入する方法がないわけじゃない。」「な、何かいたらどうするんですか?」「聖域への侵入は罪だ、然るべき罰を与える。」扉をゆっくりと開け、気配を探る。「あそこか。」勢いよく物陰に飛びかかり斬りつける。「わ!?」人影が飛び出したがすぐに何処かに跳んでいった。「逃げたか。」「い、今の跳び方って。」「追うぞ。」「は、はい!」



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