5歳です-07
この世界において魔法は身近で当たり前のものだ。魔力量は個人差があるけれど、皆が使えて当たり前であり魔法のない生活は有り得ない。
「日常生活において使用する魔導具は全て無属性の魔力を動力とします。その理由はわかりますか?」
「無属性の魔力は全員が持っているから」
「正解です」
魔法の授業の先生であるリディ・ホーレンツは優しげな中年の女性である。確か、トップクラスの王宮魔導師と結婚していたはず。
「無属性の魔力は誰しもが持っているサポート位置にあるもの。ここに基本属性である火、水、風、土、雷、癒が加わります。この基本属性は人により違い、1つの属性を持ちます。基本属性とは即ち固定属性であり、他の属性の魔法は使えません。基本属性1つと無属性、この魔力を持って生きていきます」
要は火属性であれば風、土、雷、癒の魔法は使えないということだ。無属性は基本属性に関係ない魔法の類が使用出来る。
確かゲームでニコルは風属性だったから私もそうなのだろう。
「では、まずニコル様の基本属性を調べてみましょう」
「うん」
結果を知っているというのにドキドキしてしまう。だって、魔法なんだもの。
リディ先生は手のひらサイズの水晶を取り出し私の前に置いた。
「この水晶に手を翳してください。火属性なら赤、風属性なら緑、土属性なら茶、雷属性なら黄、癒属性なら紫に輝きます」
「き、緊張する……」
「ふふ、基本属性の判断だけですからリラックスですよ」
魔法を使おうって訳ではない、ただの基本属性の判断なんだ。しかも何にかるかもわかっているというのに。
水晶にゆっくり手を翳すとそれに反応して点滅し始める。それが数秒繰り返されてからある1色に輝きが定まった。
「これは?」
予想していた緑の輝きではない。赤、茶、黄、紫でも。
白、白い輝きを水晶が放っている。
「ねえ、リディせん……」
水晶から視線を離してリディ先生を見て私は言葉を詰まらせた。だって、リディ先生は顔を真っ青にしている。一気に不安の波が心を襲い、水晶から手を遠ざけると光は収束した。
「ニコル様」
「は、はい」
「これは極1部の方だけの秘密にしましょう」
「どうして?」
「本当に、本当に稀な事態なのです。話し合いが必要となってしまう程に」
話し合い?
え、あ、どうして。
「ニコル様には固定された基本属性がございません」
「え?」
「白い光は……無属性を表します」
待って、待ってよ。
だってニコルはゲームで風が基本属性なんだ。しかも、基本属性がないなんてゲームでもなかった。
「本当に稀なケースなのでもっとニコル様の魔力を調査します。白い光は無属性しか使えないか、もしくは……」
もう私の耳にリディ先生の言葉は入って来なかった。混乱と不安、変わってしまった基本属性でキャパオーバーだ。
これは前世を思い出した影響なのだろうか。