5歳です-06
「どうして僕を庇って!?」
「あはは、兄さんが危ないと思ったら勝手に体が動いたんだ」
「バカっ。こんな呪いを庇ってただなんて。僕はお前さえいてくれればいいのに」
「すぐ死ぬって訳じゃないんだから」
「絶対、絶対に呪いを解く方法を見つけ出すから!」
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兄上に渡されたオススメの本をぱたんと閉じた。決まって兄上のオススメの本となると兄弟の絆をテーマにした物語が多い。しかも、マナ・クローズという人が書いたものが特に。前世を思い出して考えると洗脳かと思うレベルだ。ニコルの重度なブラコンってこれで形成されているのでは?
「まあいいや」
気を取り直して部屋を移動しよう。今日から新たに魔法の勉強が追加され、少々興奮している。まずは座学からだが前世ではなかった魔法は楽しみで仕方がない。
「魔法の授業が楽しみなんですね」
「うん、そりゃ……て、ミルシア!?」
いつの間にか私のすぐ斜め後ろを歩いていたミルシアにぎょっとする。いつの間に現れた。
「はい、ミルシアですよー」
「…………うん」
「ニコルがこんなに魔法を楽しみにしていたとは驚きました。今までそんな素振りを見せていなかったのに」
確かにニコルだけの時は楽しみにしてはいなかった。この世界において魔法は当たり前のものであり、全員が魔力を持っている。貴族以上は魔力量が多い者がよく現れるし、この世界は魔力によって回っていると言っても過言ではない。
魔導具。それは生活を支え、魔力で動く物。種類はいろいろあるが前世でいう電化製品も魔導具でよく似た物があるのだ。洗濯機だったりレンジだったり。なので、電化製品恋しー!という事態はあまりなく、案外ハイテクである。但し、テレビ、ラジオ、電話といった情報系だけは発展していない不思議である。
「間近になったら変わったの。魔法がいろいろと使えたらもっと楽しいだろうからね」
「魔法は便利ですからね」
便利、か。魔法で回る世界ではそれくらいの認識だよね。当たり前なんだから。
「ニコル?」
「当たり前って凄いよね」
前世では思いもしなかった魔法が当たり前の世界に私は生きているんだ。