5歳です-05
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体の調子が戻ったので今日から通常の日々を送ることになる。今は王族用鍛錬場へ向かっており、剣の稽古の時間が迫っていた。王族の男子なのだから己の身はちゃんと守れなきゃいけない。前世より断然に運動神経は良いが、この世にはもっと凄い人がたくさんいる。
「お、ニコルじゃん!」
例えば、声をかけてきたこいつとか。
「やあ、ルクス」
フクシャパープルの瞳で私を捉え、アントワープブルーの髪を揺らして駆け寄って来たのは王宮近衛兵騎士団団長の息子のルクス・フルーレンだ。攻略対象キャラクターであり、私の幼馴染でもある。
「階段から落ちたって聞いてびっくりしたんだぞ。まさか、ニコルが階段ごときで」
「そんな人を変人みたいに言わないでくれる? 階段の1つ2つ、落ちても仕方ないよ」
階段ごときでってなんだ。
まあ、ルクスからしたらそうなのかもしれない。山を駆け、木に登り、川で泳ぎ……野生児のようにいろいろとしているからね。しかも、私を道連れにして。1人で行け、何度死ぬかと思ったことか。
「そーかー?」
「ルクスは規格外なんだよ」
「それって、凄いって言いたいの?」
「そうなる、かな」
「やった!」
素直で悪気がなく連れ回されるから困ったものだ。
満面の笑顔を浮かべるルクスに脱力してふと思った。こいつに連れ回されて転ける、落ちる、溺れる等などをして回避や防御を体が勝手に覚えて受け身を取れたからこそ、誕生日パーティで階段から落ちた時は打ち身だけで済んだのではないかと。前世の私はインドアで反射神経はよろしくなかったし。
「俺の顔になんかついてるか?」
「ううん」
どうやら私はルクスの無茶振りに救われたようだ。