5歳です-04
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何かあればベルを鳴らしてください、何もなくてもいいですけどと言ったミルシアは窓から去って行った。だからここは4階だっての。
「さて、今後はどうしようか。まず、覚えている事を書き出した方がいいよね」
記憶はいずれ風化していく。思い出した今だからこそ、乙女ゲームの内容を書くべきだ。ミルシアに用意してもらった紙とペンを使い、頭をフル回転して書き出していく。
"トワイライトの星々"。魔法が存在するヨーロッパ風の世界で学園生活を送りながら恋愛をする有り触れたもの。主人公は庶民であり、高等部2年が始まる時に編入してくる。年齢は兄上と同じで私より1つ上。本編開始は11年後になる。主人公について、攻略対象キャラクターについて、ライバル令嬢について、物語に関わる人物について、そして物語について。
「ちゃんと攻略しとけば良かったな」
このゲームには攻略対象キャラクター1人に対していくつかのルートが用意されている。コンプする前に前世の私は死んでしまっていた。
私という異物が入り込んだので少々違う点は出てくるだろう。特にニコル。甘え上手の小悪魔さんキャラであったが前世を思い出したのでそうはならないかな。いや、この容姿を使って優位に進められる事があるならするけどね。使えるものは使おう。
あとは……私と同じように前世を思い出している者も出てくる可能性はある。例えば主人公だったり、主人公のライバル役だったりが王道だ。イレギュラーは私以外だけと考えるのはやめておこう。それに、ゲームで描かれていない部分は未知の領域だ。
……未知の領域?
待てよ、私。
「恋愛対象、どっちだ?」
今世の性別は言わずもがな、攻略対象なので男である。しかし、前世の女の記憶を思い出した今は前世の意識がベースである。…………。自分の裸は見飽きているので大丈夫だ。うん、大丈夫だ。いくらベースが前世であれ、今はニコルである。好くのは女性だ。多分。それに第3王子だし、ゲームではいなかったがそれ以降に親に決められた婚約者が現れるだろう。
私は王子なのだから、ちゃんと女性を好きにならなくては。好きに、なるんだ。
「ニコルーー!」
「わああああ!?」
勢いよく扉を開いて中に入って来た兄上に驚きながらも紙を裏返しにしていく。兄上とはいうと左手に本を持ってきょとんとしていた。
ノックしてくれ。