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Stage5『この身を授かった大恩』③

「これでっ……どうだ!」

 霊夢の弾幕が、舟ごと淡子を包む泡を破裂させた。淡子を乗せた舟は不規則な軌道を描きながら高度を下げていく。もはや淡子からの弾幕はなくなっていた。やがて舟は床に不時着する。霊夢はその傍まで飛んで行き、淡子の様子を探った。

「博麗の巫女に勝負を挑むなんて笑止千万! ……腕試しとやらには満足したかしら?」

 起き上がろうとする淡子に霊夢は告げる。淡子は四つん這いの姿勢のまま、霊夢を見上げて笑みを浮かべた。

「いや、お強いですね……。これなら末っ子ちゃんの相手を任せても安心です」

 その言葉を受けて霊夢はにこりと笑い、淡子をお祓い棒の先端で指す。

「私としても、幻想郷に迷惑かけた黒幕をぼこぼこにできて満足です」

 そう言って霊夢は本当に満足そうに笑った。淡子は返す文句を見つけられないのか、目を横に泳がせて「いやー……」と言葉を濁していた。少しの間、淡子にとっては気まずい沈黙が流れる。

 先に沈黙を破ったのは霊夢だった。

「大体、なんだって住民を幻想郷に送ってきたのよ? 貴重な作品を保存するため?」

 淡子は首を横に振る。

「いいえ。確かに住民はすべてお母様の大切な造りモノです。でも、だからこそ今まで深宵園から外に出さず生活してきました」

 言葉の途中で淡子は黄色い月を見上げる。その瞳には月から降る光をいっぱいに注ぎ受けていた。

「住民たちはお母様に体をもらって、気持ちを通わす機会をもらって、この世界に生まれてきたんです。私にはどうしても、それが傷つくのを見ていることができなくて」

 そう言う淡子の顔は、笑顔を浮かべながらも、苦しみの色が深い影を落としている。霊夢はそんな淡子を真っ直ぐ見つめていた。

「末っ子ちゃんたちが仕掛けたこと……癇癪起こしちゃう気持ちは理解できます。でもそのせいで皆が傷つくのも、私は嫌だったので。だから泣いている子たちを外の世界へ送ったんです。私なりの我が侭ですよね」

 淡子は視線を霊夢へ移す。口は笑わせていたが、その瞳は潤んでいた。

「ね、ね、幻想郷ってどんなところですか? いいところですか? みんなは元気で過ごせてますか……?」

 霊夢は髪の毛をかき、溜め息を一つ吐く。

「馬鹿言わないで。どうせ地獄だって思ってるわよ」

「え……」

「異邦人の連中、どいつもこいつも泣いてたんだもの。みんなと一緒がいいって」

 霊夢は両手を腰に当てると、顔を上げて紅い月へ視線を向ける。眼光は鋭く、月で揺らめく炎の色を見据えていた。

「幻想郷は確かに楽園よ。でも、どこを楽園とするかなんて、人それぞれじゃない。きっと、あの子たちには幻想郷以外に楽園があるのよ」

 霊夢は視線を淡子に移す。霊夢はただ真っ直ぐ、淡子の姿を見つめていた。

「はやいとこ、幻想郷へ引き取りに行きなさい。住みやすい楽園は私が準備しといてあげるから」

 淡子は口を一文字に結び、こくりと頷く。そして淡子は霊夢の足元へ手を向けると、軽くその手を振るった。すると霊夢の足元に、見慣れた茎で編んだ舟が現れる。

「お願いします。この舟は月に着けば消えてしまいますから、その先は気をつけて……」

 霊夢は再度紅い月を見上げて、何一つ恐れず声を挙げた。

「任せなさい。異変の黒幕はぶちのめしたし、最後に馬鹿一人こらしめるくらい朝飯前よ」


Stage Clear!

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