Stage5『この身を授かった大恩』①
Stage5『この身を授かった大恩』
深宵園-御子之宮
自機:博麗霊夢
砂浜から草原を飛んで超え、霊夢は宮殿の上空に到着する。宮殿は深宵園の中心に位置しているようだ。どの方角を向いても同じくらいの遠さに岸辺が見えた。霊夢の視界には、至るところで白煙や抉れた地面など、戦火の爪痕が見て取れる。
「どこも滅茶苦茶ね。せっかく狭い世界なんだから仲良くできないものかしら」
霊夢が足元の方を見ると、そこにある宮殿は周囲を高い壁で囲われていた。深宵園の東西にある月と垂直線上のところに、石造りの門が二か所見える。霊夢は門を目印にして地上まで飛んで行き、壁の内側へ向かう。門の高さは鳥居ほどあり、精巧な模様が上から下まで彫られていた。
そうして地に足が着きそうな位置につくと、霊夢の目には宮殿の巨大さがはっきりと映った。海岸からもその姿を望むことができた宮殿は、山と見間違うほど天高くそびえていた。門からは石畳の道が宮殿まで続いている。いくらか離れたところに開け放たれた入り口が見えたが、宮殿の大きさに距離感が狂ってしまったのか、霊夢は入り口の正確な大きさを判別できなかった。
霊夢は入り口目がけて飛んで行く。すると入り口は接近するほど巨大になっていき、その目前まで迫った時には門と同じ大きさになっていた。霊夢は入り口を抜けて宮殿の中に入る。すると、そこには仄かな明かりが満ち溢れていた。
「この光の感じ……」
霊夢の脳裏に、幻想郷と深宵園を繋いでいた水路の光景が過ぎる。宮殿内の光は水路の光と同じように感じられた。
ふと霊夢は自分の呼吸がゆっくりとしていることに気付く。先ほどまで周囲を警戒して飛んでいたのに、今では眠る時のように全身が弛緩しそうになっていた。舟の中の不思議な安堵感と似た感覚だ。しかしその安堵感は舟の中よりも強さを増し、霊夢を包み込もうとしているようだった。
きっとこの先に幻想郷へ舟を送った張本人がいるのだろう。先ほど猿から聞いた言葉とは別に、霊夢に直感めいた確信が生まれる。
どうやら宮殿はそれほど複雑な造りではないようだ。目の前には大広間のような空間が広がっているだけだった。足元では通路を示すように赤い敷物が中心へと続いていた。そして広間の中心には上階と繋がる螺旋階段がある。調度品は殆どなく、螺旋階段を囲むように高い燭台が立っている程度だった。
しかし何事もなく進むことはできないようだ。訪問者の気配を察知したのか、螺旋階段の先、上階と繋がる天上の穴から、幾多の妖精が出てきた。霊夢は臆することなく飛び、宮殿の最奥へ向かっていく。




