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美少女総選挙(3)

「アピールタイムは以上じゃ。興治,ひな壇に莉李ちゃんをエスコートしとくれ」


 村長の指示に従い,興治が莉李ちゃんの手を引く。


 「俺の莉李ちゃんに触るな!」「いやいや,俺の莉李ちゃんだ!」「いやいやいやいや,俺のだ!」というヲタヲタしい怒号どごうが飛び交う。僕の隣にいる老人は,声は出さなかったものの,いわゆる「彼氏面(かれしづら)」で,えらそうに腕を組んでいる。


 ひな壇にちょこんと腰を下ろした莉李ちゃんは,怒号の聞こえた付近の全てに微笑みを配った。完成されたアイドル対応である。



「それじゃあ,2人目の候補者を呼ぶとするかのう」


 村長がコホンと咳払いをする。

 2人目の候補者は誰なのだろうか。1人目で幼女というジョーカーがすでに切られてしまっている。2人目が誰であれ,莉李ちゃんほどのサプライズはないだろう。



「エントリーナンバー2番。飛鳥井倫瑠」


「ええええええええええええっっっ!!?」


 会場に響き渡ったのは,他でもない僕の奇声きせいだった。


 まし顔で,カツカツとヒールを鳴らしながらステージに現れた倫瑠の姿を見てもなお,僕は状況を飲み込むことができなかった。

 倫瑠が総選挙に出馬しゅつばするなど,ミツユビハコガメについに5本目の指が生えるようなものだ。絶対にありえない。

 倫瑠は,この村の住人ではないし,目立つ舞台には決して立ちたがらないし,そして何より,引きこもりだ。その倫瑠が,目立ちたがり屋が自己顕示欲じこけんじよく発露はつろさせる場である美少女総選挙に出る道理どうりはどこにもない。

 なぜだ。なぜ倫瑠はここにいるのか。なぜ普段は着ることのないフリフリの赤いトップスをまとい,ステージを我が物のようにして闊歩かっぽしているのか。

 

 見知らぬ女性の名前が呼ばれたことに呆気あっけにとられていた観客も,やがて倫瑠の並外れたルックスに気が付き,き始めた。

 「俺の倫瑠ちゃんだ!」「いやいや,俺のだ!」という先ほど聞いたような野次やじも沸き上がる。そんなに欲しいのならば是非ぜひとも責任を持って引き取ってくれ,と僕は心の中で毒づく。



 スタンドマイクの前で立ち止まった倫瑠は,莉李ちゃん用に下げられたマイクを,自分では上げず,興治が上げるのを待ったのち,普段より3オクターブ高い声を出した。



「はじめまして。飛鳥井倫瑠です。今日は,遠い星から,大好きなみんなに会いに来たよ」


 あざとい。何が「遠い星」だ。古民家に引きこもっていただけではないか。何が「大好きなみんな」だ。今まで村人との交際を意図的に絶っていたではないか。


 僕が吐き気をもよおす一方で,観客からは「可愛い!」「俺も大好き!」といったラブコールが続出した。世迷言よまいごとである。倫瑠の本性を知ってしまったらこんなことは言ってられない。

 倫瑠はびせられる声援をさも当然と言わんばかりにドヤ顔をする。

 その表情に対してまた歓声が沸く。ヲタクは大抵Mなので,ドSの倫瑠は案外ハマっている。



「倫瑠ちゃんのマゾフェミニストは何じゃ?」


「はあ?」


 倫瑠に睨まれた村長が恍惚こうこつの表情を浮かべる。村長はまさしくマゾフェミニストである。


 再び倫瑠が3オクターブ上に調律ちょうりつする。



「発表します! もしも私が勝ったら…」


 倫瑠がニヤリと笑う。けの皮のがれた悪魔の笑顔である。



「私に投票しなかった悪い子ちゃんを,今回の一連の事件の犯人として警察に突き出しちゃうぞ」


 会場がざわめく。

 相変わらずかわい子ぶった喋り方だが,内容には可愛さが欠片かけらもない。単なる脅しである。自分の意に沿わない人間に冤罪えんざいかぶせ,豚箱ぶたばこに押し込む。それは完全に悪魔の手口ではないか。







 伸び悩んでいたブックマーク数が,1日で6つくらい増えたので,やはり幼女は偉大だな,と思いました←


 拙作を応援してくださっている方々,本当にありがとうございます!

 謎解きパートに入ってからなかなか謎解きが始まらずにご迷惑とご心配をお掛けしていますが,これからのストーリーは,莉李ちゃんが前線に駆り出されることもなく,倫瑠による合理的な謎解きとなります。


 冬の童話祭が始まるまでに完結させるという菱川の目標は見事に潰えていますが,変わらずご愛顧いただけると幸いです。

 今週末,菱川は出張で大阪に行く予定となっていますので,人一倍乗り物に弱く,さらに腱鞘炎にも悩まされている最中,新幹線の中での執筆を頑張ります!

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