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美少女総選挙(2)

「皆のしゅう,本日はご参集さんしゅうのほど感謝する」

 

 ワイヤレスマイクを握りながら,村長がゆっくりと舞台袖ぶたいそでから現れた。その後ろには,村長の息子である興治が,老人を散歩させる老人ホームの介護職員さながらに,ぴったりと付いてきていた。



 村長と興治が2人並んでステージ端の演台の前に立つ。


「本日司会を務めるのはわしじゃ。で,隣はアシスタントの興治じゃ」


 アシスタント,というと,普通は女子アナやグラビアアイドルなどの若い女性が務めるものだ。そこに朴訥ぼくとつな坊主頭を置くのだから,巳織村の若い女性尽きた説はより濃厚となる。



「それじゃあ始めるかのう」


 スピーカーの音量がイカれたくらいに大きいのは,主な観客が耳のイカれたジジババだからだろう。この音を浴び続けていたら,僕の耳までイカれてしまいそうだ。



「早速,今回エントリーしてくれた美少女を呼ぶとしよう」


 境内の隅々から歓声が上がる。会場のボルテージは,まさしくマックスハイテンションである。



「今回エントリーしてくれた美少女は2人じゃ」


 とりあえず,最低決行人数はそろったというわけだ。

 村長が「美少女」と言い切っている以上,元美少女エクスびしょうじょ美老婆びろうばは出てこないと理解したいところであるが,まだまだ油断ならない。



「まずは,エントリーナンバー1番。大場莉李おおばりり!」


 おおおお,という地鳴りのような歓声が湧き上がると同時に,僕の視界は人で塞がった。僕よりもステージに近いところに陣取じんどっていた客が,一斉に背伸びをしたからである。

 負けじと背伸びをし,ステージ上の光景を確認した僕は,なぜ観客が一斉に背伸びをしたのかが分かった。


 境内に向けて笑顔で両手を振りながらステージの中央に進んでいたのは,年齢一桁台の小さな女の子だったからである。


 高めのツインテールに,白色のワンピースから伸びた細い小麦色の手脚てあし。これを仮に「美しい」と評したとしても,莉李ちゃんは美少女ではない。美幼女だ。



「莉李ちゃーーーーーん!!!」


 会場を包み込む莉李ちゃんコールは暖かいというより,怖い。


 アシスタントの興治が,スタンドマイクの高さを限界まで下げたが,それでも莉李ちゃんの身長には合わなかった。マイクに口を近づけようと背伸びをする莉李ちゃんがとても可愛い。

 なお,僕が莉李ちゃんに対して抱く「可愛い」という感情は,すべて「子どもとして可愛い」という意味であって,「女性として可愛い」という意味ではないことを念のため断っておく。



「おおばりりです。5さいです」


 莉李ちゃんが舌足らずな声で,不慣ふなれなですます調を使って自己紹介を始めた。可愛い。



「ちゃーむぽいんとは,おおきなおめめです」


 莉李ちゃんはグーにした両手を口元に当てると,上目遣うわめづかいでゆっくりと境内を見渡した。可愛い。



「とくぎは,しんたいそうです」


 莉李ちゃんは,右手で右足を持ち上げ,いわゆるY字バランスを披露した。ワンピースのすそがめくれ,もう少しで下着が見えそうになる。可愛い。



「莉李ちゃん,今回の総選挙で勝ったら,何かするとか,そういった約束はあるんか?」


「まにふぇすとですか?」


「まにふぇすと? なんじゃそりゃ?」


「せいけんこうやくです」


 莉李ちゃんは5才にして早くも村長よりも博識はくしきなようだ。バカな女の子も可愛いが,実際にお付き合い,その先の結婚までを考えるならば一定の知能は求めたいところである。莉李ちゃんには合格点を差し上げよう。




「うむ。よく分からんが,莉李ちゃん,そのマゾフェミニストとやらを発表しとくれ」


「はい。わたしがかったら,このむらのおうちをぜんぶおかしのいえにたてかえます」



 村長が,それはまいったな,と言わんばかりに頭をかく。


 莉李ちゃんはマジで可愛い。とはいえ,数百人の村人が一堂いちどうかいしてまで,幼女をでる必要はどこにあるのだろうか。


 一体,この総選挙の趣旨は何なのだろうか。

 連続殺人事件がもたらした悲しみを和らげるための,単なる余興よきょうに過ぎないのだろうか。







 やっぱり児童ポルノの単純所持を規制するのはやめませんか。

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