表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/32

美少女総選挙(1)

 ハッキリ申し上げよう。ありえない。


 何が「この村の一番の美少女を決める総選挙」だ。某国民的アイドルグループかよ。

 というか,村で立て続けに4件もの殺人事件が起きている最中さなか不謹慎ふきんしんこの上ないではないか。

 村長がとんだドスケベジジイであることは知っていたが,さすがにぶっとび過ぎである。

 あれだけ日菜姫,日菜姫と連呼していたのに,に服する気は一切ないようだ。日菜姫が作ったラタトゥイユは吐き出して返上へんじょうしなければなるまい。


 

 村長が浜辺で告知した総選挙の開催概要は以下のとおりだ。

 開催場所は,この村のちょうど中心に位置し,この村で一番大きな神社である浪杜なみと神社。

 開催日時は,今日の夜18時。

 入場料は,無料。


 条件は悪くない。いわゆる「神イベ」の気配がただよう。

 とはいえ,時期が悪過ぎる。そんな気分になれるタイミングではない。一体誰がこんなノーテンキなイベントに参加するというのか。



 しかし,結果として僕は参加することにした。


 理由は他でもない。倫瑠に「行け」と命令されたからである。

 僕が命令拒否の態度を示したところ,倫瑠は,「民俗学研究者が村のお祭りをボイコットして不貞寝ふてねをするってどういうこと?」と正論を言った。思うに,正論は弱者が強者に立ち向かうための武器であって,倫瑠のような強者が弱者である僕を搾り取るために使うものではないのだが,今の僕にはの言う元気もなかった。

 



 僕の予想と,一般社会通念いっぱんしゃかいつうねんに反して,波杜神社の境内けいだい満員御礼まんいんおんれいだった。老老男女ろうろうなんにょがところせましとひしめき合っている。ひょっとすると村人全員が詰めかけているのではないか。


 僕は,オールスタンディングの会場の3列目付近で,老人にもみくしゃにされながら,本殿ほんでんに設けられたステージを観察する。


 ステージの中央にはスタンドマイクが一本そびえ立っており,その後方には装飾されたひなだんが設けられている。本家本元ほんけほんもとのA◯B総選挙のステージが忠実ちゅうじつに再現されていると言っていいだろう。

 僕を総選挙に追いやった倫瑠の正論は,実は正論ではなかったのではないかという気がしてくる。民俗学研究者にとって村のお祭りが大切なのは,村のお祭りが古来こらいから続くものだからである。伝統的なお祭りには,民俗学者の大好物である,村の慣習かんしゅう信仰しんこう残滓ざんしがあるのだ。

 しかし,この美少女総選挙はどうだろうか。

 倫瑠が古民家に持ち込んだものを除き,インターネット機器の存在しないこの村で,誰がどうやってA◯B総選挙について知り,それをこの村に持ち込んだのかは見当がつかない。ただ,一つ確実に言えることとして,この美少女総選挙はこの村の伝統のお祭りではない。A◯B総選挙のパクリであり,歴史などこれっぽっちもない。民俗学的には何ら価値がない。



 ステージの端には,投票箱が置かれていた。正方形の金色の箱に「投票箱」と書かれているので,これが投票箱で間違いないだろう。A◯B総選挙とは違い,事前投票によってすでに決まっている結果を発表するのではなく,会場で観客が投票を行うという仕組みらしい。仮に日菜姫が存命だったら日菜姫に投票したに違いないが,日菜姫がこの世を去った今,僕は誰に投票すればいいのだろうか。日菜姫の名前を記入して,無効票とするのが通すべき筋だろうか。

 


 そんなことを考えているうちに,とある重要なことに気が付いた。

 そもそもの問題として,一体,この美少女総選挙には誰がエントリーしているのだろうか。

 日菜姫と八津葉がこの世を去った今,少なくとも僕の知る限り,この村に若い女性はいない。殺人があるたびにできた人だかりの中でも見かけなかったし,今だって会場に詰めかけているのは性別判別が困難なくらいに年老いたBBAババアばかりである。


 しかも,選挙で競い合うためには,最低でも2人の候補者が必要だ。

 まさかとは思うが,半世紀前には美少女だったと称する御婦人ごふじん方が出てきて,目クソ鼻クソの争いを繰り広げるということはないだろうか。

 ありえる。クソイベ,最悪のクソイベだ。無銭イベントであっても,思わず「金返せ!」と叫びたくなるレベルのクソイベだ。

 やはり今日は喪に服そう。

 


 スピーカーの大音量が襲ったのは,僕がステージにきびすを返そうとした瞬間だった。







 「るろうに剣心」の作者の方が児童ポルノの所持で逮捕されたというニュースを見ました。


 児童ポルノが規制される根拠は,児童の保護にあります。児童は未熟ゆえに判断能力がなく,性行為等に対して正しく同意する能力がない,というものです。

 たしかに,同意なく撮影されてしまったポルノ写真や画像が出回ってしまうことは,被写体の方を深く傷つけることになるため,被写体の方を保護するために刑事罰を設ける必要があるかもしれません。


 しかし,以下の例を考えてみてください。


① 性行為も,ポルノが外に出回ることを合意している13歳の被写体のポルノを所持すること

② 性行為も,ポルノが外に出回ることも合意していない(つまり,無理やり犯された)20歳の被写体のポルノを所持すること


 ①と②を比べてみて,どちらをより規制すべきだと思いますか。


 ②だけ,もしくは①②の両方を規制する必要があると感じるのではないでしょうか。

 ①だけを規制して②を規制しない法律はアンバランスだとは思いませんか。

 重要なのは被写体の「同意の有無」であり,被写体の「年齢」によって規制の有無を切り分けるのは理屈が通らないのではないでしょうか。

 児童ポルノの単純所持規制には,どこかに「ロリコンキモい」「ロリコンを排除しよう」という悪感情がある気がします。



 というようなことを,菱川がジュニアアイドルにハマっていた数年前にはよく考えていたのですが,ロリコンが完治した今となっては,ロリコンはキモいので規制はやむなしと思っています←ぇ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ