イベント率100%4
自宅に到着し、俺はインターホンを押す。インターホン越しに会話をする。
「美咲帰ったぞー」
「お帰り~、直ぐいくからちょっと待っててね」
「ああ、わかった」
インターホンが切れ、直ぐに玄関のロックとチェーンの外れる音がし、ドアが開く。
「お疲れさま」
美咲は水色のエプロンを着けたまま俺を出迎える。
「ああ、ただいま」
俺はドアを閉めてロックを掛けると、美咲は甘い声で俺の右腕に自分の腕を絡めてきた。
「んなっ! ど、どうしたんだよ……」
俺の腕に美咲の慎ましく控えめな二つの膨らみが押し付けられ、その感触は服の上からでも十分に感じられる。
これがもし直接なら……って! 俺はなに考えてんだっ!
刹那さんのせいで思考が変になってやがる!
「ご飯にする? お風呂にする? それとも……」
な、ななななな! なにベタなセリフを言ってんだ!
「お、おい! 美咲! お前……」
「……言わない。恥ずかしいもん」
美咲は頬を桜色に染め可愛く笑う。
セリフを最後まで言われるよりも破壊力が凄まじく、これでニヤけない男がいるわけがない!
俺は顔を背け、美咲の腕を払いリビングに向かう。
「バカやってないで飯だ飯!」
「ねぇ、志雄? 変な想像したでしょ?」
「してねぇーよ!」
美咲は俺の顔を覗こうとするが俺は再び顔を背ける。
「ホントかなぁ?」
美咲は俺の右頬を人差し指で突く。
「んなこといいから、さっさと飯にしようぜ!」
「はーい」
「直ぐに焼くから座っててね」
「いや、手伝うよ。俺でもご飯よそったりくらいはできる」
「それじゃあ、お願いね」
「おう、任せろ」
美咲はハンバーグを焼き始め,その片手間にハンバーグ用のデミグラスソースを作っていく。
香ばしい肉の香りが充満し鼻腔を擽るなか、俺は二人分のご飯をよそい。、美咲は少食の為少なめ、俺は特盛で食卓に並べる。ひとつ言っとくが特盛はハンバーグの時だけだぞ!
「冷蔵庫の中にポテサラも入ってるからね」
美咲に言われ、冷蔵庫を開けると二つの皿にポテサラが盛り付けてあった。
「他にすることあるか?」
「大丈夫だよ。もう出来るから志雄は座っててね」
俺は椅子に付き、美咲を眺めながらハンバーグの出来上がりを待つ。
美咲はフライパンからハンバーグをヘラで掬い、ブロッコリーやコーンそしてニンジンのグラッセとポテトを皿に盛り付ける。
「お待たせ~」
「おお~めっちゃ美味そう」
美咲は皿を並べ手前の椅子に腰掛ける。
「じゃあ食べようか」
「だな、いただきます」
「はい。召し上がれ」
箸で一口サイズに切り分け、ハンバーグを口に入れる。
「う、うめぇー!」
口の中で肉汁が溢れ出し肉の弾力があるにも関わらず口の中で肉がとろけ出す。デミグラスソースの香りと甘みが肉を包み食を進める。
「喜んでもらえてよかった。じゃあ私も食べようかな。いただきます」
「マジで美咲のハンバーグうめぇーよ。ホントお前はいい嫁さんになれるよ」
俺は再びハンバーグを口に入れる。
「えっ! そ、それって……」
「んあ? 美咲は気も利くし料理も上手いしな、将来お前の旦那になる奴が羨ましいくらいだ」
「バカ志雄……」
「おいおい、なんで褒めてんのにバカなんだよ」
「別に……さっさと食べてお風呂入っちゃってよ」
美咲はぷいっとそっぽを向く。
「ああ……」
褒めたのになんで拗ねるんだよ……女って分からんな……。
「なんで自分がなろうと思わないのよ……」
「んっ? なんか言ったか?」
美咲はボソッと呟くが俺は食べるのに夢中で上手く聞き取れなかった。
「ううん。なんでもないよ」
「そうか……」
俺は残りの飯をかき込み食器を美咲にまかせ、風呂に向かう。
----◆◆◆----
食べ終わった食器を洗いながら私はため息をつく。私と志雄とは生まれた時からずっと一緒にいる。
幼馴染として家族として……。あまりにも近すぎる距離……。
「やっぱりこの距離がダメなのかな……」
それに志雄の主人公属性体質……最近レベルがあがってるような……。
鈍感。難聴。フラグ発生率……。まさかこれから様々なイベントが起きて、女の子の友達が増えてくとか、それどころかみんな志雄のことが好きとかそんな落ちないよね?
ギャルゲーとかだと大体高校二年くらいだし……。
「はぁ~ありそうだぁ~」
私が悩んでいると、お風呂場から志雄の声が聞こえる。
「美咲ぃーーシャンプーの替えどこだよぉーー!」
「はーい。いま行くからちょっと待っててぇー!」
「よろしくなーー」
食器を拭くのをやめて、お風呂場に向かう。しかし向かう途中、固定電話が鳴り出した。
私は黒井家の電話に出る。
「はい。黒井です」
『ああ、美咲ちゃん。私だけど、志雄いる?』
電話の相手は志雄母(お母さん)だった。
「いまお風呂入ってますよ」
『そう、少し遅かったみたいね』
「どうしたんですか?」
『実はシャンプーの替えを買い忘れたのよ』
「それなら、今日は私のシャンプー使ってもらって、明日買ってきます」
『そう、悪いわね。ああ、それと後で志雄に電話するようにって伝えてもらえる?』
「はい。わかりました」
そう言って電話を切り風呂場に向かう。
---◆◆◆---
浴槽に浸かりのんびり待つこと数分――。
脱衣所のドアが開き、脱衣所と風呂場を繋ぐ曇りガラス越しに美咲のシルエットが浮かぶ。
「電話鳴ってたみたいだけど誰だった?」
「志雄母だったよ。シャンプーの替え買い忘れたんだって」
「マジかよ! シャンプー少しも残ってないぞ」
「今日は私の使いなよ」
「う~ん。しゃぁなしだな」
「言っとくけどそのシャンプー六千円以上もするんだからね」
「んなっ! 俺の十八倍もすんのかよ!」
「女の子だもんそれくらい普通だよ」
「ったく……一体なにを入れたらそんな高くなんだよ」
俺は文句を言いながらも美咲のシャンプーを使う。
「それと志雄母があとで電話するようにだって」
「ああ、わかった」
美咲が脱衣所を出て行くと、俺は美咲のシャンプーを手にプッシュし頭をわしゃわしゃと泡立てる。女性物のシャンプーは甘い匂いがし、シャワーで流すと男性物のシャンプーと違いが一発でわかるくらい洗い流したときの髪質が違う。流石は俺の十八倍の値段だ。
風呂を上がり、俺は水色と白のチェックのパジャマに着替え、首にタオルを掛ける。
「美咲上がったぞー」
リビングの扉をあけ美咲に声をかける。
「そこに麦茶入れといたよ」
美咲は本当に気が利く幼馴染で助かる。
俺はリビングのソファーに腰掛け喉を潤し寛ぐ。
「美咲もこっちで入ってくんだろ?」
「志雄がのぞかないならね」
「ゴホッ! ゴホッ! 誰がのぞくかっ! 俺が今までのぞいたことあったかよ!」
危うく飲んでいたお茶を吹きかけた。
「すでに両手で足りないくらいにはあると思うんだけど……」
美咲はジト目で俺を見る。
「あれは故意じゃなく事故だ! カウントすんじゃねぇ!」
「それでも見たことに変わりないんじゃないかな? かな?」
美咲は某鉈ヒロインの口真似をする。
「それは……その……」
正論なだけに俺は口ごもる。
「それじゃあお風呂行ってくるけど、本当にのぞかないでね」
「だからのぞかねぇよ! それともアレか? それはのぞいてくれってフリか?」
「志雄くん。ご飯いらないんだね」
美咲はとびっきりの笑顔で俺をみる。
「す、すみません……」
美咲さん笑顔が怖いです……。
その後美咲は着替えを取りに家に戻って行った。
その間に俺は国際電話で母親に電話を掛ける。
「もしもし母さん? 電話まで掛けてなんのようだったんだ?」
『ちょっと相談よ……』
「ん? どうしたんだよ?」
『妹ほしい?』
「はぃ? な、なんの話だよ!」
『こら! 親のあんなことやこんなことしてるシーンを想像しない!』
「敢えて言うなよ! 母さんが言わなきゃ想像しなかったよ! 第一そんなことを俺に確認すんなって! それは母さんと親父の問題で……」
『志雄!』
母さんの一喝で俺は背筋を伸ばす。
「は、はい!」
『いいから答えなさい。欲しいのか、欲しくないのか、どっちなの?』
「……えっと……ほしいかな……」
『そう。それならお父さんにも言っておくからね。それじゃおやすみなさい』
「……ああ、おやすみ……」
母さんがいちいち確認する意味が俺にはわからない。別にデキたらデキたでそれはそれで家族が増えて嬉しいことだと思う。しかし、敢えて息子に今から子作りします宣言しなくてもよくないか?
「志雄? どうかした?」
美咲が着替えをバスタオルに包み、近づいてきた。微妙に黒色の下着が見えているのは言わないでおこう。しかし美咲が黒の下着とは……。
「ああ、いま母さんと話してて、ちょっとな……」
「なにかあったの?」
このことを美咲に話すか俺は迷ったが、家族同然の美咲なら話した方がいいかと思い伝えることにした。まぁ、いろいろとアレだが変に意識する方も可笑しいしな。
「実は母さんが妹ほしいかって電話だったんだ」
「えっ!」
「だよな! 驚くよな。いちいち報告するなんてさ」
そう、これが正常な反応だ! やっぱり俺は間違っちゃいない。報告ならあとでいい。前もってこれから子作りしますなんて言わなくていいんだ。
「う、うん……ねぇ志雄……」
「ん? なんだ?」
「志雄母が妹欲しい? って聞いたんだよね?」
「ああ。それで俺は欲しいって答えといた。家族が増えるのは悪くないと思うしな」
「……考え過ぎかな……」
「ん? なんだって?」
「ううん。なんでもない! それじゃあお風呂入ってくるから」
そう言って美咲は風呂に向かう。
次回! ちょっぴりエロ展開!!