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イベント率100%

志雄が歩けばイベント発生

「志雄、志雄ってば! もうぉ~やっぱり起きないし!」



 俺の肩を揺らし、睡眠の妨害をする聞きなれた声が聞こえる。昔から当たり前の様に毎朝窓から侵入し、俺の睡眠の邪魔をする。



「進級して間もないのに遅刻する気? いいかげん起きなさいって!」



 仰向けで寝ている俺に乗り、声の主は飛び跳ねる。


「うう……重い…」


「ひどっ! 私は重くないよ!」


 俺は重い瞼を開くと制服姿の美咲と目が合う。


「起きた?」


「ああ、多分な……おやすみ……」


「寝るなーー!」


「ん……」


「ふ~ん。まだ寝るんだ? なら、私にも考えがあるんだからね!」


 痺れを切らし美咲は俺から掛け布団を剥ぎ取る。掛け布団だけならまだ良い。美咲は俺のパジャマに手を掛け、第一ボタンを外しに掛かる。


「……っ! ば、ばかっ! やめろって!」


 俺は美咲の手を払い、慌てて起きる。


「やっと起きた。ほら、さっさと着替えて顔洗ってきなよ。朝ご飯もう直ぐできるから。それと、志雄母おかあさんもう出発しちゃったからね」


 美咲はそれだけ言ってリビングに向かう

「あいつ何考えてんだ……。俺が起きなきゃマジ脱がす気だったのか?」


 俺は疑問を口にしつつ、学校に行く準備を始める。


 俺は寝ぼけ眼でグレーのカッターシャツと学園指定の黒いスーツに着替える。


 俺達の学園は将来の事を考え男子はスーツと定められている。社会に出ればスーツは当たり前になっていく。そのために学生の時からスーツを身につけ心身ともに学んでいく。それが綾瀬学園の教えだ。


ただ、このスーツは綾瀬学園の特注品で胸には綾瀬のAGと書かれたエンブレムが縫い付けられている。逆に女子の制服は男子と違い桜色をベースにした上下で、スカートはピンクと白のチェクに桜模様。上は白のブラウスに茶色のブレザー。上着のブレザーは男子と変わらずAGのエンブレムが縫ってある。男子とは違い実に学生らしい制服だ。



 俺は着替え終わると、洗面所で顔を洗い、歯を磨がいたが、眠気は一向に治まらない。徹夜後の睡眠は疲れた身体を簡単には癒してくれないらしい。



「ふぁ~眠い~」


 欠伸をしリビングの扉を開ける。扉を開けると、味噌汁の良い香りが充満していた。


「どれだけ、寝れば気が済むの? 昨日結局十時前には寝てたよね」


「そうだっけ? 覚えてねぇや」


 俺は椅子に腰掛ける。すると、美咲はご飯をよそい、味噌汁と鮭をテーブルに並べる。


「平均睡眠時間多い割には、自分で起きたことないよね」


 美咲はエプロンを椅子に掛け、その椅子に腰掛ける。


「ん? まぁな。俺には美咲がいるし、俺はお前じゃないと起きれそうにないしな」


 俺は味噌汁を啜る。


「え? それって……」


「ほら、母さんだと、勝手に遅刻しなさいって言って、起こしてくれないしさ。それに俺の部屋は目覚ましないしな」


「……今は私が志雄を起こしてるけど、志雄が起きなさ過ぎて、起こしてくれなくなったんだよ」


「いや、起こしてもらった記憶が無いんだが……」


「ダメだこいつ、早く何とかしないと」


「朝一から、もうネタか!」


「ネタ以前にホントに自分で起きれないと、この先いろいろ大変なんだよ!」


「でも、これからも美咲が起こしてくれんだろ?」


「うう……。まぁ、ね」


「なら、問題ないな」


 俺は残りのご飯を掻きこんだ。


「まったく、この男は……」


 何か、美咲がボッソっと呟いたが俺は聞き取れなかった。


「ん? なんか言ったか?」


「ううん、なんでもない」


「ん? まぁいいか。んじゃ、そろそろ出るか?」


「ああ、そうだ! 志雄は外で待ってて。私、鞄とって来ないと」


「なんだ玄関から来たんじゃないのか?」


「うん。窓の方が行き来早いからね」


 美咲は食器を水に付けて二階のから自宅へと戻っていった。


 俺は、玄関を出て戸締りをし、美咲の家の前で待つ。すると、直ぐに美咲は玄関から顔を出す。


「おまたせ。行こっか」



 美咲と俺は並んで学園に向かう。俺達の通う私立綾瀬学園は家から徒歩三十分くらいの所にある比較的近くの学園だ。


 そしてこの場所、綾瀬町は海に浮く人工都市。その所有者は世界的大企業綾瀬グループだ。この工都市に綾瀬はいったい幾ら掛けたのか? そこは明かされてはいない。それに、この都市にある全ての会社は綾瀬グループ系列だ。十分に利益をえているのだろう。


「そういえば、お弁当作ってきたよ」


「ああ、サンキューな」


 俺は美咲から弁当を受け取り、鞄にしまう。


「それと今夜何食べたい? リクエストがあれば作るけど?」


「ハンバーグ!」


 俺は即答した。


「はやっ! ホントにハンバーグ好きだね。なんか子供みたい」


「そうか? 俺は美咲のハンバーグが好きなだけで、他では食べたいと思わないぞ。 母さんもたまに作るけど、俺の口には美咲の作ったやつの方が美味いな」


「ばか……そんなに褒めなくても言ってくれればいつでも作るのに」


 美咲は頬を赤らめる。


「んじゃ、今日の晩飯はハンバーグで頼む」


「うん。帰りはスーパー付き合ってね。食材買わないと」


「OK! 荷物もちは任せろ!」


「うん。頼りにしてるね」


 他の誰かが聞けば付き合ってるとでも勘違いされそうな会話を続け俺達は通学路を進む。

 もう少し行けば他の生徒とも合流する。しかし美咲はなぜか脚を止め立ち止まる。


「ねぇ、志雄……?」


「どうした?」


 振り向くと、美咲は上目遣いで俺を見あげた。


「志雄は……私が彼女だと嫌かな?」


「……はい!? な、なんだよ急に!」


「ほら、今の私達ってさ……なんか恋人みたいな会話してない?」


「そ、そうかな……ははは」


 なんだ! なんだ! 美咲の奴、急にどうしたんだよ?


「ねぇ、志雄は私のこと嫌い?」


「え? き、嫌いじゃねぇよ」


「じゃあ、好き?」


 登校中になんなんだこの展開は!


「えっと……」


「私はね……そ、その……」


「美咲、お前……」


 美咲の頬は徐々に染まりだす。しかしその逆に美咲の唇がプルプルと振るえ、なにやら必死で堪えている様に見えた。


 そうか、そういうことか! 俺は美咲の額にデコピンをかます。


「あうっ……いったぁいよ~志雄……」


 額を擦りながら美咲は俺を見上げた。

 端からみれば、お前いい雰囲気になにしてんの? だとか、言われそうだがこれで良い。

 俺は美咲を置いて学園に向かう。


「待ってよぉーー」


 美咲は俺を追いかけてくる。


 そして追いついてきた美咲に声をかけた

「んで、昨日どんなゲームしてたんだ? 他の誰かが聞いたら誤解されるセリフだぞ」


「あはは。あのセリフなかなか恥ずかしいものがあるよね」


「あのな……頼むから何の前触れもなく、ギャルゲーの日常を再現しないでくれ……」


 美咲は昔からギャルゲーのワンシーンを前触れもなく再現しようとする。その矢鱈と凝った再現力に昔の俺は翻弄されていた。

 お陰様で、気が付けば俺さえもアニメやゲームに詳しくなってしまった。そして一番厄介なのは、美咲が本気でシナリオを考えると、予言としか言いようがないセリフと行動を取らされてしまう。


「昨日の作品はなかなか出来だったよ。志雄もやる?」


「やらねぇーよ。ったく、俺はアニメの方が楽でいいんだって」


「志雄はギャルゲーまったく才能ないもんね」


「美咲に借りるギャルゲーは難易度高すぎるだけだろ?」


「そんなこと全然ないから! 超初心者でも出来るようにヘルプまで付いてて、なんでバッドエンド出せるのか逆に私が教えて欲しいくらいだよ」


「俺は、ほら、なんつうか……他の娘に冷たくするのはかわいそうだろ」


「好感度やフラグ、分岐点、この重要な点さえ見落とさなければ全部の選択で冷たくする必要性はないんだけど……それに他の娘の高感度も下げないとルートに入れない場合もあるんだよ」


「それが、分かればやってるって!」


「はぁ~ギャルゲーを極めないと、リアルで女の子攻略できないよ」


「いや、ギャルゲーの攻略法で攻略って、どこの落とし神だよ」


「あははは」


 俺達は、くだらない話に花を咲かせ、学園に到着したーー。



更新遅くてすみません。

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