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天才魔法少女は爪を隠す  作者: 茴香バニラ
1章 幼少期
6/15

友達です


キースの魔法のショックから立ち直った私は決意する。

この世界で、私が使う魔法はすなわち魔術師の最上階級、賢者に相当する可能性がある。

そんな魔法を入学試験なんぞで使ったらどうなるか?

そんなのあの豚親父にバレるばかりか周りの生徒たちに引かれてしまうだろう。

魔法のせいで学生生活ボッチとか、嫌すぎる。



「で、お嬢。お嬢の魔法は……」

「す、素晴らしいですね!キース!私もそんな魔法を使えるようになったら嬉しいですわ!」



思わず叫んで誤魔化す。

明日から普通の魔術師レベルを学ばなくては……。



「で、お嬢様のお仕事の件ですが、何かご希望はございますか?」



キースの得意げな自慢に飽きたのか、レイナが問いかけてくるのにうむ、と私は考え込んだ。

バイト、といえば私が前世でやっていたのは本屋や飲食店、事務の仕事などだった気がする。

もう少しで医者の免許が取れたなら、免許を使った高額バイトをしてみるはずだったのだが……。


あ。

あるじゃない!!魔法を使って稼ぐやり方が!!



「治癒魔法で稼ぎます」

「「「却下」」」



なん……だと……?



「お嬢様、治癒魔法も使えるものがいないわけではありませんが、使えるものは少なく、その効果によっても価値が変わってきます。魔工師と同じく誘拐される対象になりますよ」

「はい……」



レイナのお仕置きが耳に痛い……。



「お嬢、本気で学園行くのか?貴重な魔術師感満載で心配なんだが……」



ドレイクの言葉にカロンもキースも頷いた。

そんなに信用ないですかね?私。


とりあえずお仕事はキースの伝手で探しておいてくれるらしい。

元々そうしておいたらよかったんじゃと思った私は悪くないはず。




大混乱の誕生日会が終わって、私はこそっと部屋を抜け出した。

『ゲート』を使って向かうのは、いつもの練習場にしている荒野。

そこそこ大きめの魔法を使ったせいでそこかしこにクレーターやら凹凸ができているのだけど、ほとんど人の来ない山の上だ。

問題はない。


すぅっと深呼吸してそっと手を伸ばす。

開いた手の平に魔力を集中させ、始める魔法は召喚魔法。

魔力と水を溶いて作ったインクで大地をキャンパスに魔方陣を描く。

いくら厨二っぽいとはいえ、召喚魔法と言ったらこういうのだよねぇ。

そこにもういっちょ厨二病をプラス。



『混沌のマグマに眠りし者よ。その翼を広げ、我が声に応えて顕現せよ』


『キシャアアアアアアアア!!』



魔方陣の上に現れたのは、ファンタジーではお馴染みのあの生き物である。

そう、ドラゴン。



「フレア!!久しぶり!!」

『シュラよ。主はなぜ我らドラゴンとの縁を繋ぐ?ドラゴンは人間とは馴れ合わぬことになっておるのに……』

「人は人!私は私でしょう?聞いて!私、魔術学校に通うんだって!いいでしょう~」



フレアと呼んでいる彼女は雌のドラゴンで、私の召喚魔法ではお馴染みのお相手だ。

気位が高いものの、根はいいドラゴンなのでよく彼女の背に乗って空中散歩を楽しませてもらっている。



『ほう?ならば、ここに来ることはもうないのか?』



別に広い土地があればいつでも呼び出せるのだけど、フレアと会うのはもっぱらこの場所だった。

少し寂しそうな色が混じっている彼女の声音に喜びを覚えつつ、私は首を横に振った。



「私には『ゲート』があるからね!いつでも来れるよ!!」

『本にシュラは人間にしておくのが惜しいものよ……』



くくっと面白そうに笑う彼女に私は、今日の目的である頼みごとをすることにした。



「ねぇ、フレア。鱗を一枚頂戴!!」

『そんなことだろうと思ったわ。尾の近くに生え変わりの鱗がある。

古いものは取るがいい』

「わあい!!」



ドラゴンの鱗というのは貴重なもので、加工するととってもいい魔道具になる。

私は今回、ペンダントを作る予定なのだ。

フレアの鱗は紅く透き通っていて仄かに熱を持つ。

見た目がいいから使っているのだが、その素材は他のものよりも付与魔法が多くかけることができる。

私が今回作るのは魔法抑制のペンダント。

これは物理的に例えると、重い重荷を持ったまま体を動かすことで鍛えるウエイトトレーニングのようなものの魔法バージョンである。

キースの魔法を見ていて全力を出してはいけないと気付いた私はこのペンダントをつけることにより、全力で魔法を放つことが出来るようになるのだ!!

なんて素晴らしい!!


摘み取った鱗で早速ペンダントを作り、お気に入りの付与魔法用のペンでするすると魔法の転写を行っていく。

このくらいだろうか。



『なんだ?それは』

「シュラ特製魔法制御ペンダント!」



そっと自分の首にかけるとずしっとした重さがすぐに肩に来た。



「うん、いい感じ。じゃあ……」



全力の魔法展開。

一番得意の炎魔法だ。


ボンッ!!



この前のキースのファイヤーボールより少し大きめのものが現れ、空気を焼いた。



『は?主、弱くなったか?この前より随分と小さな魔法だが……』

「よし!成功っと!」



生意気なことを言うフレアの頭にペンダントを載せると、どしゃっとフレアは崩れ落ちた。



『なっ……!?なんじゃこれ、重すぎる……』



危うく立てなくなったフレアの頭から慌ててペンダントを取り除く。

フレアは疲れ果てたように息を吐いた。



『……やはり相変わらずの化け物加減よ』

「なんか言った?」

『いや、何も』



そっぽを向いて知らん顔をするフレアに思わず笑ってしまう。

しばらく笑っていると、フレアは何かを嗅ぎつけたのか嫌がるような顔をする。

ドラゴンの嗅覚は人なんかよりずっと上だ。

そして、勘なんかも人よりずっと。



『……シュラ、気を付けるがいい』

「へ?」



いきなり深刻な表情になったフレアは重く告げる。



『魔族が動き始めた』



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