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天才魔法少女は爪を隠す  作者: 茴香バニラ
1章 幼少期
5/15

実演します


9歳の誕生日の衝撃。

学校に来年から通うことになりました。


ドレイクがそう話してくれたとき、驚きと共に嬉しさが込み上げてきた。

確かに皆と離れるのは寂しいけど、魔法学校だよ!!

ああ、まるっきりファンタジーの世界です。本当にありがとうございます。

その驚きと喜びは顔にあまり出ていなかったらしく、ドレイクに呆れられたのは誠に遺憾だったけども。


王国立高等魔術第三学園。

このオルスルテナにある三つの王国立魔術学園の一つで、第一学園には貴族のお偉い様が。第二学園には中級貴族様や下級貴族様が。第三学園には貴族たちの正式な跡継ぎではない三男以下や次女以下の子供達と平民が通っている。

まぁ、自然界のニッチのようなものだ。

本来なら第一学園に通うはずの私の立場は、義妹が奪ってしまっているので私は彼女の代わりに妾の子が通う学園に放り込まれたってわけだ。

んー、魔法が学べるならどこでもいいんだけどなぁ。

それでも第一から第三までで教師陣の質が違うことと学園の設備の良さを考えるとどうしても上の方がいいと考えるのが普通なのだろう。

まぁいっか!

どっちかというとぐるぐる縦巻きロールのお貴族の女の子より、平民の女の子との気軽なお喋りの方が魅力的だし!

入学試験は筆記と実技。ただし、今回学園に私を押し付けるのが目的の豚親父のおかげで落ちることはない裏口入学のようなものだ。

試験は教室を選ぶ基準にするらしい。

実技試験の方が得点率は高く、魔法の素質があるものを見分ける試験なのだろう。

まぁ、ほどほどに頑張ろうっと。


そんなわけで私は新入生期間に友達を作るため、笑顔の練習を鏡の前で毎日にらめっこしつつ頑張っている。

うう~っ、動け私の表情筋!!



「いいか、お嬢。まず学校では姓を名乗っちゃなんねー。

ステュワート家ではお前のことをいない子扱いしてっからな。名乗れるようになるよう努力はする。だから、待っててくれ。

大丈夫。学校に入学してくる才能ある平民に姓はねーからな。

平民扱いされるだろーが、我慢してくれ」



別に名字がなくても苦労しないなら名乗らなくてもいいのになー。

そう思いつつ、頷きを一つ。



「学費は大丈夫だし、給食はあるんだが……その他の支援を本家はしねーつもりだから自由に使える金は働いて作らなきゃならねー」



ふむ……アルバイトか。

何にしよーかな。



「はいはーい、お仕事について提案なんだけどー!」



キースが手を上げてドレイクにアピール。

相変わらず自己主張激しい人だなぁ。

仕方なくドレイクはキースに発言を許した。



「お嬢様、付与魔法使えるから鍛冶屋とかどう?」

「は?」



ドレイクが間抜けな声を出す。

レイナとカロンも驚いたように目を丸くしていた。



「付与、魔法?」

「あの適正が千人に一人の!?」

「まだお嬢様は9歳ですよ?」



三人とも固まっているけどどうしてかな?

ものに魔法を転写するのは飛行魔法ほど大変じゃないんだけど。

あと、千人に一人は絶対いるわけだしさぁ。私がなっててもおかしくなくない?


それにしても、鍛冶屋かぁ。熱いし重労働っぽいし、なんかやだな。

見てるのは楽しいんだろうけど、女の子の私からすると鍛冶屋っていうのは大変なお仕事のように思えるし、この細い腕で鉄を打て、と?私の腕、たぶん簡単に折れちゃうよ?



「私のような細腕で鉄が打てるとお思いですか?キース」

「そういうわけじゃなくて!お嬢様、付与魔法得意でしょう?この前もナイフに細工してたの知ってますからね」



確かにこの前レイナと一緒に料理をしてた時に、小さなフルーツナイフを見つけたから付与魔法をかけて遊んだのだ。

確か【帯炎】と【急速冷却】だったはず。

レーザーの原理なのだが、おかげで面白いくらい素材がすぱすぱ切れて楽しかった。

ただ【帯炎】はダメだ。下手すると素材が燃えるから。



「お嬢、そのナイフ見せてくれ」



ドレイクの頼みに台所からそれを持ってきて渡す。

もちろんケースに入ったそれをドレイクは慎重に取り出して、とりあえずと試し切りの材木に刃を当てた。

さくりと材木に切り込んだ刃はあっさりと材木をバターのように真っ二つにして見せた。



「……お嬢」



深刻そうな顔のドレイクに思わず後ずさり。

あれそんなに悪いことだった?振動とか、ガス切断の方が良かった?

別にそっちでも付与できるよ?【斬気】とか【超微細振動】とか。


頭の中で混乱する私に、ドレイクは問いかけた。



「付与魔法を使ったことのあるもんはどれだけある?」

「えっと、ナイフと服と靴と帽子とあと紙?そのくらいだと思いますけれど」



目をきょろきょろ泳がせる私に、ドレイクはため息をついた。



「お嬢。付与魔法ってのは限られた連中しか使えない技術だ。

もしお嬢が付与魔法を使えるってことが外の連中……例えば、お嬢の父親にバレたらどうなると思う?」

「専属の魔工師にでもされるのですか?」



魔工師というのは、付与魔法を行う魔術師の職業だ。

キースが確か言っていたはず、魔工師は個人ではなく国が保護する一種の職人……だと……!?



「専属じゃなく、秘密裏に隠されたまま一生牢屋暮らしだぞ。

それくらい魔工師には価値があるんだ。お嬢、付与魔法のことは内緒にしておけ。いいな」



ドレイクが私の身を案じてくれているのは痛いほど分かった。

申し訳ない。私はまだこの世界の常識を知らないんだよ。



「……お嬢、まだ隠してることはねーか?」

「ヤ、ヤダナー。ソンナコトアリマセンヨー」



棒読みになってしまった。

ううっ、周りの目が痛いよぅ。

でも、どこまでがOKラインなのかわからないから迂闊なことは言えない。

私の魔法『ゲート』『飛行魔法』『異空間収納魔法』などはもしかすると常識から離れているかもしれないからだ。



「ね、ねぇ、キース。キースの魔法が見たいですわ」


無理やり方向転換。

できればこの前のファイヤーボールより威力高いのを頼むぞ、キース。

あれがこの世界の最強レベルだったら、私は泣く。



「お?俺の魔法に興味あんの?じゃあ、そうだなー、とっておきの魔法見せてやるよ」



ナルシストキースの楽しそうな声に、うまくかじ取りができたと溜息を吐いた。

外に出てキースは屋敷の隅にある訓練所に向かう。

さすが伯爵家別宅といったところか、小さな公園ほどのスペースに3つほどの的が置いてあった。



「じゃあ、お嬢様。俺の得意魔法とくとご覧あれ!!」



すぅっと息を吸い込んで、キースはきりっと的を睨む。

……真面目にしてたらイケメンなのになぁ。これが残念なイケメンというやつか。



「大地に吹き付ける風の精霊よ。我が命令を聞きて渦となせ!!

ウィンドブラスト!!」



厨二病全開の呪文に頭を抱えたくなりながら、それでも魔法の完成を見届けるため目線を飛ばす。

5mくらいのサイズの竜巻が的に当たってその的を浅く削った。

思わず言葉を失う。



「言葉もないか?お嬢」



ニッと笑うドレイクと得意げなキース。



「相変わらず、キースは魔法だけは天才ですねぇ」



そう褒めるカロンのそばで言葉を無くして唖然としているレイナ。

もちろん、唖然としているのは一緒でもレイナと私の気持ちのベクトルは真逆だ。



「あのぅ、つかぬ事をお聞きしますが……キースは我が国の中でどのくらいの魔術師になるのでしょう?」

「キースは王国立高等魔術第三学園の元主席だな。王宮魔術師には及ばないだろうが……国の中では上級の実力者ってとこだ」



……嘘だ!!

キースのレベル以下なんて聞いてない!!





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