夢の実現です
結局自分の限界がある程度広がるまで10日をかけて、私は気を失わなくなるまでに魔力量を増やした。
ふっふっふ。
これで私の野望の一つ……『異空間収納魔法』通称四次元ポケットを実行することができる!
詠唱はもう必要ないので、いつもと同じ結界を見えない空間に作り出す。
目に見えないそれを風船を膨らませる要領で穴から空気と魔力を送り込んで膨らませていく。
目指せドラ〇もんの四次元ポケット!!
とはいうものの、それだけでは空間と空間をつなげる穴でしかなく、モノをしまえるだけなので少し細工をした。魔力を液体化してインクにして書いた魔方陣を空間の中に設置。
これだけであーら不思議。
この空間中では時間経過がなく劣化の進まないそれに代わる。
異次元に作ったから制限のない収容能力!
それに一度作ったら何度もエネルギーを使わずに使えるとっておき仕様。
奥さん、これはお買い得ですよ!!
なんて頭の中でセールストークをしつつ、作り上げたそれにいろんなものを放り込んでみたけどどれも元の状態のまま取り出せた。
ただし、生きたモノは怖くて入れられない。
酸素もないわけなので、中で死んでしまう可能性があるからだ。
一つを成功させると次のものを作りたくなるのが人の性。
私が次に取り掛かったのはドコでもドア的な魔法だ。
でも、行ったことのない場所に行くのは座標点が定まらないので、一度訪れたことのある場所。
紋章を残した場所にのみワープできる『ゲート』を作ってみた。
これがめちゃくちゃ便利で、この魔法のおかげで私は軟禁されながらも限界まで離れられる場所を探し、魔法実験にうってつけな平野に紋章を残して探検することができるようになった。
ドラ〇エのルーラみたいに上に飛ぶ仕様ではなく、厨二患者も大好きな紋章が周りを縁取る穴のような魔法である。
ちなみに紋章に意味はない。私の自己満足だ。
次に試したのが透明人間魔法、『光学迷彩魔法』という魔法。
戦闘機を透明化してレーダーに映らないようにするものとは違い、直接光を反射させないように迂回させることで人の視野に自分を映さないようにすることができる。
ただし、音や匂いが消せない分完ぺきではないのが残念なところ。
悪いことに使うにはうってつけの魔法なのだけど、できればこれは面白魔法として置いておきたい。
スパイ活動とかできそうだよね、簡単に。
忍びのシュラちゃんでござる。ニンニン。
忍びシリーズとするなら変身魔法も試してみた。
人間に化けるのは割と簡単なんだけど、動物は難しい。
しっかり観察して細分まで想像できるようになって初めて動物に化けることができる。
最初、どう見てもデフォルメされたウサギにしかなれなくて一生懸命観察したのだ。
長かった……。
人間で化けたのはレイナとドレイクだった。
レイナになったとき、思っていた以上にレイナとカロンの仲が良いことが判明。
私の中のお節介の血が疼いた。
カロンはキースとは真反対の性格で、不愛想だしほとんど笑わないロボットみたいな人だ。
何故だか私との戦闘訓練中だけは微かに笑っているのでちょい戦闘狂な部分があるのかもと予想。
でも、レイナの前だと優しい顔するんだねぇ。
ちょっとほっこりした。
ドレイクになったときは、キースが真面目にしてて笑いそうになった。
上司に対する態度は真面目なのね。
影分身はやってみたけど、体を二つ動かすのが難しくて断念。
最後に試したのが飛行魔法だ。
箒で飛ぶのは持ち歩きしないといけないから不便だということで、私は浮遊魔法の応用としてこの魔法を使うことにした。
重力をなるべく消し、微量の魔力を風魔法で操る。
磁力などの力を生かしたこの魔法がなんだかんだで一番大変だったんじゃないかな。
あっちこっち自分の好きな場所に飛んでいけるようになったときには、物理的に天に昇ったよね。
どの魔法も苦労したし、時には魔力の使い過ぎでぶっ倒れたこともしばしば。
その度にレイナには叱られたけど後悔はしてない!
使えば使うほど分かる魔法の有難み。
例えばだけど、砂漠で水が出せる魔法使いがいれば旅人は長く旅をしていられるし、極寒の土地でも魔法で地面を温めれば植物が芽吹き、人が住める環境にすることができる。
特に私は元医学生なのが幸いしたのか、治癒魔法に関しては自信がある。
実際の人に対しては使っていないけど、森に住んでいる野生動物たちでこの魔法を試している。
片目の潰れた熊や翼を折った鷲みたいな動物たちを治癒すると瞬く間に肉体が再生して、元気に私に襲い掛かってきた。
余談だが、この世界の生き物はものすごく大きい。
ウサギでさえ私の腰の高さまでのサイズだし、鷲は私の体と同じ大きさだった。
熊は普通より一回り大きいくらいだったからあんまり驚かなかったんだけど。
攻撃してきた野生動物がどうなったか?
そりゃあ、必要な分は狩って他は逃がしましたよ。
とりすぎたら生態系が壊れちゃうしね。
そんな調子で治癒魔法を続けていたらいつの間にかケガどころじゃなく死なない限りは完全回復させることができるようになった。
動物たち様々ですな。御馳走さまです。
さすがに死んだ生き物は生き返らせることはできなかった。
出来たら怖かったし、これでいいと思う。
死者を生き返らせたところで、ゾンビとかになられても困るからね。
魔法の特訓をしない間は護衛兵のみんなから武術の教えを受けたり、おしゃべりしたりレイナと料理を作ったり、失敗したり。
ドレイク主催の座学でレイナと常識について学んだり、なかなか有意義な日々を過ごしている。
ただ、魔法が使えるようになっても、私は護衛のみんなやレイナには言わなかった。
一応、あの豚親父の耳には入らないように情報規制しとかないとね。
私の目標はギルドに所属して、のんびりちゃっかりお金を稼ぎつつ冒険者ライフを楽しむことなのだから!
そんな私、シュラは6歳で覚醒してから早3年。
9歳の誕生日を迎えた。