表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才魔法少女は爪を隠す  作者: 茴香バニラ
1章 幼少期
2/15

特訓です


「水の精霊よ。我が手に集いて力を持って飛び立て!

ウォーターボール!」



ひっぎゃぁぁぁぁぁ!!痛いっ!痛いよぉ!!

中学校二年生の時期に起こった黒歴史が蘇ってくるぅぅぅぅ!!


どうも、シュラです。

あれだね、呪文ってのは精神衛生上良くない。

恥ずかしすぎて悶えるんだが。


手の中に現れた水風船の中身のようなウォーターボール。

ぱっと手を前に突き出せば飛んでいき、木に当たって弾けた。

この大きさになるまで結構かかったのは、私の才能がないからなのか……。


私の複雑な家庭事情から、自分の身を守るため魔法の特訓を始めた。

もちろん、あの豚親父に万が一でもバレないようにみんなにも内緒だ。

それに、異世界転生と言ったら魔法使わなきゃ損でしょ!!という考えもあった。

前世(まだ確定はしてない)では真面目に現実的な考え方しかできない状況だったから、ホラーものとかも一歩引いてみてたんだよ。

けど、憧れはなくもなくて。

暇な時間があったらすぐにスマホでファンタジー小説を読んでいた。

だから、自分も魔法が使えるということを知ってものすごく嬉しかったのだ。



魔法は最初キースが教えてくれたのだが、思っていたものよりずっとショボかった。

キースのファイヤーボール、人魂みたいな小さくてふよふよしてたし。

あれじゃあ木に穴も開けられないじゃん。

せめて、スーパーマ〇オのファイヤーボールくらいのものは投げたい。


でも、キースが教えてくれたのは無駄だったわけじゃない。

魔法には色んな魔法があって、攻撃とか防御だけじゃなく、治癒魔法や付与魔法が有ることを知った。

魔法は割りと一般的なもので、誰でも使えるらしい。

ただし、一般人も使えるものから、賢者などの高位の魔術師しか使えないものもあるのだそう。

付与魔法がその代表例で、人口1000人の国で1人か2人しか使えないそうだ。

うん、面白そう。


ついでにキースについてだが、こいつは割りと典型的なナルシストさんだ。

残念なことに顔はいい。顔は。

ただ、結構馬鹿だけど。



「お嬢様がもうちょい早く生まれてたらなぁ。俺が落としてあげるのに」



指通りのいい金髪を指先で弄びながら、緑色の目をこちらに向けてくる。

こちらは指先に火を灯す魔法に集中している振りだ。



「本当、お嬢様は良い女になるよ。あんな父親じゃなかったら……」

「……キース、あんまり口が過ぎるとダメですよ。壁に耳あり障子に目ありです」



まだ小さな手でキースの唇に人差し指を載せて制すると、キースはそのエメラルドの目を丸くした。



「こういうテクニックはあるんだから、まったくうちのお嬢様は……」



少し照れているらしい。

変なことをしたつもりはないのだけれど。



「分かったよ。

で、壁に耳ありショージにメアリーって?」

「いつどこで誰が聞いているかも分からないから悪口には気を付けろと言う忠言だよ」



あの日本語は不味かったかなとは思う。

キースは何となくで納得したようで、何も言わなかった。


とりあえず魔法を使うことが出来るようになったのはキースのおかげだ。

それに、キースからは6歳の誕生日に魔術書ももらったし。

すぅっと息を吸い込んで手の平に魔力を集める。

詠唱をしていて分かったのは無理矢理魔力を引き出しているという感覚だった。

その感覚を自分の意思で操れれば、上手く行くのではないかと思ったのだ。

魔力と呼ばれる辺り一面に漂う霧のような力を集めて手の平の中に。

空気中の水分を集めて集めて凝縮して……。


放つ!!



バシャンッッッ!!



さっきのよりもずっと大きな水球が体サイズにまでなって、物凄いスピードで飛んでいった。

ありゃりゃ、想像以上だ。

木をなぎ倒した私の魔法は辺り一面に水をまき散らして終了した。


物音で誰かが来ることはない。

一応、家から出て森で練習してるからね。

バレるかと思ったけど、レイナの昼寝の隙をついて抜け出したから多分大丈夫。

レイナが起きて気づいたとしても、基本的にあの人は放任主義だ。

ある程度の時間なら大丈夫なはず。


その日の魔法特訓は良いところまで行った。

水魔法も大きすぎるものじゃなくて、手の平サイズまで圧縮して威力を強めることができたし、あんまり威力を高めようとすると氷になってしまうことも分かった。

無詠唱魔法ってのはよくファンタジーの小説なんかで出てくるけど、これほど便利なものはないね。

戦闘においてだって自分の手の内を見せる前に攻撃できた方が有利に決まってるし!


使えば使うほど楽しい魔法だけど、使えば使うほど疲労するのは体力なんかと同じで当然といえば当然な話。

それと魔法も使えば使うほど、限界に近いところまで使うほど回復した時の使える魔力量は増えていることにもここ一週間ほどで気が付いた。

詳しい理屈はわからないけど、筋肉と同じなのだろう。

切れれば、次は切れないように繊維を増やす生命の仕組みみたいな。


味を占めた私は部屋に戻ってから、外で練習した結界を部屋中に作って異なる属性の魔法を一気に同時展開して……寝込んだ。



その次の日も同じことをしたが、寝込まなかったので結界の数を増やして10回ほど繰り返す。

結界内での緑の閃光が視界を焼いたのを最後に私はその日、意識を失った。



「お嬢様は馬鹿なんですか!?なんでベッドの横の床に倒れてるんです!?」

「……ごめんなさい」



気を失うと結界も魔法も解けてしまうらしい。

鬼のような形相で説教をするレイナを前に私はただただ正座で耐えるしかなかった。

レイナさん、マジで怖い……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ