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天才魔法少女は爪を隠す  作者: 茴香バニラ
1章 幼少期
10/15

入学試験です


今日は王国立高等魔術第三学園の入学試験日です。

受験票を持っていくと、受付のお姉さんに貴族用の教室に連れていかれた。

貴族のほぼ全員がコネ入学で、その残りの枠を平民の優秀な子たちが奪い合うという試験なので、受験会場を分けるのも当然だろう。


とりあえず自分の席に着いて、開始を待つ。

前の席の男子が騒いでいたとしても私には関係ない。



「それでは……筆記試験始め!!」



問題形式は日本とそう変わりはない。

大問10個の試験で、1問目が歴史、2問目が礼儀作法、3問目が近隣国についての問題、4問目は常識を問う問題で王の名前や現賢者の名前などが問われた。5問目は生物で、魔物について。6問目は地理、7問目は算数。8問目は魔方陣で、9問目は魔力石について、10問目は付与魔法についての問題で、大概は当てはめ問題。

全ての教科を一度にしたようなものと言ったら分かりやすいだろうか?


目立ちたくないのでトップ成績なんて取るわけもなく、筆記試験は6割を目標に頑張った。

歴史、魔方陣、魔力石、付与魔法についての大問を一切手を付けずにである。


ちなみに、全力を出しさえすれば満点が取れたはずのテストである。

全ての答えは頭の中には浮かんでいた。


試験終わりの合図で、ペンを置いた。


次は実技試験。

教室移動のときに、一人でいる少女を見つけ、声を掛けてみることにした。



「試験、出来ました?」

「へ……?ああ、完璧ですの!!」



金髪だが、ふわふわウェーブの髪の美少女でお嬢様というよりもお人形さんのような見た目をしている。



「リリア・デュラク・サンドライトですの。貴女のお名前は?」

「シュラです。名字は詳しく聞かないで」

「分かりましたの。シュラさんはどうですの?」

「まぁまぁです。落ちはしませんから大丈夫ですよ。あと、呼び方はシュラで構いませんよ。リリアちゃんとお呼びしても?」

「私が呼び捨てにするなら、シュラも呼び捨てで構いませんの」



初対面ではあるものの、話し相手がいなくて寂しかったのだろう。

リリアは楽しそうに話していた。


室内練習場には5つの的が置いてあった。

それなりに強い素材で出来ているのか、火炎魔法や雷撃魔法ではびくともしない。

そこで平民クラスが区切られた練習場の半分で試験を受けているのを見つける。

ギルガディスもその中にいた。

というか、試験中でもフードは外さないんだなぁ。

勿体ない。



「それでは、今から順番に自分の一番得意な魔法を全力で放ちなさい」



的が壊れたら満点と試験官は言っていたのだが、非常に固いらしくそう簡単には壊れない。

私の前にいた者たちは傷さえつけていないのに、満足そうにしている。

……そういうこと、なんだろうなぁ。


的を壊すことができたのは今のところ二人。

貴族の男の子と、さっき話していたリリアだった。

そして、ギルガディスの番が来た。



「氷の刃よ的を貫け!アイスニードル!」



短縮詠唱魔法にどよめく周囲。

的は半分に割れていた。

はぅーっ、ギルガディスかっこいいなぁ。



「試験番号652番!」

「はい!!」



自分の番が来る。

私は一番初歩の魔法。

『ファイヤーアロー』を使うことにした。

呪文は暗記してある。ただ、魔力を使うのが無理矢理引きずり出される感覚を伴うので気持ち悪いだけだ。



「……炎の精霊よ。我が手に集いて一矢の弓矢と化せ。っ……ファイヤーアロー!!」



気持ち悪さに堪えながら、発射する。

ペンダントの効果によって削られた魔力は、何とか炎の弓矢の形を保ちながらもヘロヘロと宙を弱々しく飛んでいった。

的に当たってもぽふっと小さな炎が上がったのみで、雑魚にも程がある魔法だった。



「どんまいですの」



リリアにそう声を掛けられる。

ちょっとだけ隠していることに罪悪感を覚えた。


試験はそれで終わりらしく、やることのなくなった私はリリアと学食に向かった。

学食は安く、学生だけではなく受験生たちもこぞって食べに行く。

今日の日替わりは兎肉のローストらしい。

私とリリアも日替わりを頼んで、ちょっと足りないお腹にはケーキで補充を行う。


イチゴのモンブランだった。

めっちゃ美味しい。幸せ。


ギルガディスの姿はなかった。

まだ合格発表していないから寮に入るわけないものね。

家で家族の人と食べてるのかな。


思い浮かぶのは、あのかっこいい獣人の横顔ばかり。


ギルガディスは甘いもの得意かなぁ。

美味しいお店発見して連れていったら仲良くなれるかな。





そのころ、教師陣は……


「あの652番、変じゃなかったか?」

「いえ、私はそう思いませんでしたが。何か感じたのですか?シュラデウス先生」

「何だか、まるで魔法を抑える力が働いていたような」

「まさか。誰が何の目的で彼女の魔法を邪魔するんですか」

「さぁな」



シュラデウス・トロメニルは自分の教え子になるだろう少女のテスト結果を見つつ考える。

大問10問中の6問。

完璧な解答ばかりなのに、なぜ他の問題を一切解いていないのか。

消して書き直した形跡もなく、あえて白紙にしたような意図が見えるのは何故なのか。

実技試験でも、彼女は詠唱に戸惑いを覚えているようだった。

詠唱が始まった途端、薄ら寒くなるほどの魔力が動いた気がするのに、すぐさま魔力を掻き消すような気配があった。

その魔法を人目に晒してはいけないというように。




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