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天才魔法少女は爪を隠す  作者: 茴香バニラ
1章 幼少期
1/15

始まりです

処女作です。

ゆっくりのんびりやっていきたいと思いますので、温かく見守ってやってください。


誤字・脱字などありましたら教えていただけると嬉しいです。


毎日毎日変わらない朝。

そのはずだった。



「うわぁぁぁぁぁ!!」

「お嬢様っ!?」



頭の中にいきなり閃光が走って、ホワイトアウトする。

と、同時に膨大な記憶の波が私に襲いかかってきた。

走馬灯のように流れる『私』の記憶。

それは幼少期の自我の芽生えた辺りから国立大学の医学部に入学し、その大学の図書室で本を開いた辺りまで。

流れに翻弄された私の頭の中はぐらぐらしてて。

うぅ……、吐きそう。


そして、もう一つが『今の』私の記憶。

二度目の私の人生の記憶だ。


そこは私の前の世界にはなかった魔法が飛び交うまるでファンタジーのような世界。


オルスルテナ。

それが今、私の生きる国の名前だ。


科学技術の発展がない代わりに魔法がその生活を支えている。

魔法の使えないものは剣士になったりするものもいる。


日本よりは大分文化の進みが遅くて、未だに薪木や馬車を使っているような世界だが、腐ってもサブカルチャーの溢れる日本で育った私はわくわくが止まらない。

まぁ、潔癖症ってわけじゃないし!大丈夫でしょ!


吐き気も収まってきて、辺りを見渡す。

真っ白な壁に囲まれた日本での私の部屋よりも大きな部屋に、木製のドレッサーとクローゼット。

カントリー風の椅子と机などの家具。

棚の上には可愛らしい熊のぬいぐるみがちょこんと座っている。

そして、心配そうにベッドの脇から私を見つめるメイドのレイナ。


あ、放置してた。



私は今、シュラ・アルデル・ステュワートという名前になっている。

親の階級は伯爵。

その長女として生まれたはずの私は今、ちょっと厄介な状況に置かれている。


私を生んだ母はステュワート伯爵の正妻で、とても美しく気立てのいい人だったらしい。

人が羨むような美貌と、艶やかな紺色の髪。

大きなアーモンド型の目は透き通るような青色で、彼女に見とれなかった男性はいないほどだったそうだ。


つまり、私の母は典型的なモテ女だったらしい。

まぁ、騎士曰く私にもその容姿は受け継がれてるみたいだし、お母様様々だね。


そんな私の母だけど運命の巡り合わせが悪かったのか、滅多に遭遇しないはずの盗賊に襲われて殺されてしまい、私の父親……デブでめっちゃくちゃ態度がデカい屑の見本のような男だ……グレズリンは伯爵の権威を振りかざし、狼藉を働くようになった。


不倫なんぞは当たり前。

可愛い幼子にまで手を出そうとする屑っぷりに私の母に仕えてきた使用人たちは腹を立てたけど、一応は伯爵の立場だから迂闊なことを言えば、彼らが生きていけなくなってしまう。


それでも、母が遺した私だけは、と近親相姦だけは回避してくれたようだ。


ありがとう。

あんな豚に抱かれずに済んだのはみんなのおかげです。


そんな男が思い通りにならない私を跡継ぎになんぞするわけもなく、どこから連れてきたかもしれない女を後妻として迎え入れた。

まぁ、継母というわけだが、あんまり綺麗な人ではない。

意地悪そうなつり目に痩せぎすの体。

ごてごての宝石がついたアクセサリーで全身を覆っているようなセンスのなさそーな人だ。


あの宝石、どこから持ってきたんだろう?

そんな良いとこの出とは思えなかったのだけど。

……まさか、私の家の財産を使って買ってる、なんて簡単に想像ができた。


そんな女が連れてきた私の妹は、真ん丸に太った子豚ちゃん。

性格は良くないらしく、メイドを上から目線で扱っているのを見かけたことがある。

……血は争えないな。

あの父にしてこの子供ありといったところか。


あの男の遺伝子を私も受け継いでいると思うと絶望もしたくなるのだが、DNAはただの塩基配列でしかない。

うん、そう思おう。

そうでも思わないとやってらんない。


子豚ちゃんは見た目の愛嬌も糞もないけれど、継母にとっては可愛い娘。

そんな彼女に伯爵の家を継がせたくなったとき、邪魔になるのは正妻の娘である私だった。

幸運にも豚親父は私を疎んでいるから、追い出すのも簡単で私は伯爵別宅に押し込まれたというわけだ。

シンデレラみたいに苛められたなら、1万倍にして十年後くらいに返してやるのになぁ。


ほとんど干渉がないのを見ると、私はいないものとして考えられているのだろう。

まぁ、自由でいいけどね。


母方の祖父母が生きていたなら私もこんな扱いを受けなかったのだろうが、二人とも早世してしまっているらしく、私には一人の後ろ楯もない。


そんな私の側にいるのは新人メイドのレイナと護衛兵が3人だけだ。

護衛兵の名前は隊長のドレイク、魔術師のキース、槍使いのカロン。

彼らは私の護衛とは名ばかりで主には豚親父が私につけた監視役だろうというのが私の予想だ。


ドレイクは私の母が生きていた頃からの護衛兵で、母の死後豚親父に忠誠を誓うことでその身分を守った。

周りが裏切り者と揶揄しているのに反して私の味方ばかりしてくれる。

剣の修行がしたければ相手になってくれたし、魔法が知りたいと言えば、魔術師のキースに頼んで教えてくれるように頼んでくれた。

キースやカロンも似たような感じで、ふっと気が緩むと豚親父の批難ばっかりしている。

んー、将来的にあいつらを潰すのには賛成派が多いならいいか。


あとこの前ドレイクが見つめていたロケットの中の写真が、鏡に写る私に似ていたから、母に対して思うことがあるのだろう。

片想い、とか?


レイナはいい子だけど、新人で割りとドジっ子体質。

今まで勤めてきたメイドを含める使用人たちをほぼ一掃して豚親父は新しい者を雇っている。

恐らくは私を担ぎ上げての下剋上を心配しているのだろう。

貴族になりたいわけじゃないからいいんだけど。

ドジっ子といえば、レイナはこの前も水を運んでたのに転んでドレイクにぶっかけてたっけ。



あ、レイナのこと、また忘れてた。



「大丈夫よ。ちょっと嫌な夢を見ただけなの」

「ふぇぇぇ、驚かせないでくださいよぉ。黙りこんじゃって心配したじゃないですか」



涙目のレイナに苦笑いで謝りながら、私は考える。




生き残るためには、何をすべきか。



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