馬車の中で揺れる4話
セレーナ:ミステリアスなセクシー系お姉さん
ビロー:元気、何を考えてるか分からない
ミカエル:少し大人びた少女、俗っぽくなった
サリーシュ:怒れる大声系少年、満身創痍
ディギル:マッチョなおじさん、疲労困憊
ミカは気付いてないが記憶が混乱中
セ・ビの隠し事している感じを出す
《場:馬車 優しい色の照明 上品なBGMon SE:
馬車》
セ「ねえねえ、ビロー、ワクワクだね!船の次は馬車なんて贅沢だよね、ワクワクだよね!」
ビ「そうね。これなら船と違って落ちる心配もないし、とっても気が楽だわ」
地「ミカエル・マキュローが意識を取り戻すと、そこは上品なつくりをした馬車の中だった」
セ「さっきはワクワクだったね!まだ僕の胸にそのワクワクが残ってるよ!」
地「燃える故郷が夢だったように天窓から見える空は青く晴れわたり、同乗している見慣れない彼女らの様子も内容を除けば明るいものであった」
ビ「先程の侵攻が指揮官殿の采配でうまくいったのは分かるけど、あんまり馬車の中で暴れないでちょうだい」
セ「最後の老人達もワクワクだったね!」
ビ「だから彼女もいるから、その話は控えてちょうだい」
《BGM抑える》
ミ「それはどういうことですか?」
地「彼女の同乗者は噂に名高い〈ミレーネの三傑〉"白夜月"のセレーナとその側近ビローの2人、気品が漂う車内で吐き出されたミカの一言に息も出来ないほど不穏な緊張が走る」
セ「おぉー、いつの間に起きてたのかな!僕の名前はセレーナ、君との出会いにワクワクしているところさ!」
地「息が出来ないどころか、起きたばかりの自分を早々に口説き始める整った顔立ちのパンプキンハット。歳は自分より明らかに下に見える。その華奢な体と不釣合いな大き過ぎるパンプキンハットを被った変人の握手に応じることはなく、ミカはその隣にいるボンキュッボンで頭がキレそうなクールビューティーを睨んだ」
ミ「あなた達が私の故郷で何をしたのか、詳しく教えてください。」
地「返答は返ってこない。けれど、大人の色気を撒き散らしつつも気品を失わないナイスバディー美女は目線でミカに何かを語っている」
ミ「? キョトン。」
地「訳が分からずキョトンとするミカだが、頬のほくろでさえセクシーに魅せる美女の目線の先には握手マチの手を降ろすことなくミカに微笑みかけ続けているパンプキンハットがいるのに気がついた」
《セにサス》
ミ「(握手すればいいのかな?)」
地「義務教育が始まる前くらいの子供が公園で出会った、やや大きな犬にふれあおうとするように恐る恐るパンプキンハットの方へと手を伸ばすミカだが、パンプキンハットはピクリとも動かない」
地「本当にこれで合っているのか。そんな自問自答をする気は毛頭ない、〔案ずるより産むが易し〕ミカが好きだった言葉だ。彼女の手は迷うことなく少しづつだが確実にパンプキンハットの手に近づいていく」
ミ「(後少し…)」
地「30cmの長い道のりを経て2人の手が触れ合った瞬間にパンプキンハットが壊れた玩具のようにいきなり動き始め、驚いて心臓が口から飛び出てるミカの手をブンブンと振る。もう散々に振り回す」
セ「よろしく!よろしく!よろしくね!ミカエル・マキュローさんよろしく!」
《サス消す BGM音量戻す》
ビ「それでは、私の方から状況を説明致しますね」
ミ「(え?何?なんで話を始めれるの?それにこの激しい握手はなんなの?この人達只者じゃないわ!)」
ビ「私達は敵ではなく貴女のお父様の友人でね。ちょっとした用事があってお父様を訪ねたのだけど…あのような事件に遭遇してしまって…」
ミ「そうですか。(止まらない⁈この嫌がらせ、まだ止まらないの⁈)」
ビ「少しでも助力しようとしたけど賊に襲われ…それでも、逃げている途中で偶然倒れていた貴女をなんとか助け出すことができたの」
ミ「それはありがとうございます。あの、それよりちょっと気になってることがあるんですけど…(怖いよ、そろそろ怖いよ!)」
ビ「分かっているわ。私達と貴女のお父様との関係よね。では、もう少し詳しくお話ししましょう」
ミ「(いや、この人を早く止めて!!)」
【美人たちの会話を割愛】
ビ「ーという訳なの。」
ミ「ハァ…はぃ……そうですか…」
地「結局30分近くも手を振り続けられたミカは肩に手を当てながら、疲れ果てた様子で椅子に深く腰掛けていた。この間に私が先程ミカが心なしかいい匂いもする美女に言われたことの概要を説明しよう。
まず、私達は貴女の敵ではなく、むしろ戦場で命を救った恩人やで。偉いやろ?恩感じるやろ?その恩を返すために"何でも"したいやろ?それに、行くあてもないんやろ?せやったらわしらと一緒に来たらええやん。ごっつええやん。んなら決まりやな。
以上やで。なんと簡潔かつ独特でクールなまとめ方…ごっつ惚れてしまいますわ」
地「ミカとしてはこれからの生活が保証されるうまい話だが、うまい話には裏があるのが世の常であり、現にミカは広場で見たサリーシュのことを忘れたわけではない。さっき老人達とかパンプキンハットが言ってたことも頭の隅にはあったのだが、それはあのバレーボール級の美女の話術が巧みだったのと…後は不思議な睡眠のせいと説明しておきましょう」
《暗転 ミにサス BGMoff》
ミ「サリーシュが最後に言っていた"裏切り者"って言葉も気になるし、それに、この人達と血だらけで倒れてた父との関係も怪しい…」
地「目を閉じ今回の件について深く考える14歳、その考え方が少し大人びているのは16年の記憶が戻りつつあるせいなのかもしれない。そう考えるとミカちゃんの精神年齢は14+16だから……3zy………うん、ごめん。何でもない」
《明転 SE:馬車》
ビ「それで、これから貴女はどうするの?貴女が望むのなら途中の村で降ろしてあげるわ。でもそうしたら、その後の面倒は見てあげられない」
《照明暗くSE:ミカの心の声》
ミ「(この人の言う事を信じていいの?そういえば、領主館で見たサリーシュの傷は広場で見た時にはちゃんと手当てされていた…一体誰に?何のために?)」
ミ「(何でミレーネ軍はわざわざ攻めにくいあの街に攻めてきたの?)」
ミ「(父とこの人達との関係は本当に只の友達?父はサリーシュと領主館で何をしていたの?)」
ミ「(傷ついた彼を村の誰かが1人で広場に行かせる理由は思いつかない。という事は彼の傷を手当したのは村の人じゃない…じゃあこの人達?いや違う、助けられたのは私だけ…そうなると残るのは………ミレーネ軍?)」
ミ「(サリーシュは…いやサリーシュだけじゃないサリーシュの母親の領主様がミレーネ軍と繋がっていたってことなの…?ガンドラの誰もここが攻められるなんて思ってないとふんで、領主様達を洗脳でもして攻めてきたのね)」
ミ「(つまり、領主様もサリーシュもミレーネ軍と繋がっていた。私の父はその事実を知り、国を護るために優秀な友達を呼んだという訳ね)」
地「ここにそのサリーシュがいたら変わってしまった想い人の意見をどう感じるだろうか。まだまだ未熟な推理故に物語は面白くなってきた。美女の危険で濃密な香りが、優しい微笑みとほくろが、小さく揺れる大きなバレーボールが、無言で我らの主人公に問いかける」
《SE:バレーボールの声》
ビ「どうするの?」
地「それに応えるようにミカは目を開けた」
ミ「行きます。行って街の皆の為にも働きます!」
ビ「そう」
《BGMon》
ビ「貴女はあんな事があって疲れたでしょう。まだまだ目的地までは時間があるから休んでて」
セ「そうだな!いいワクワクにはいい睡眠が必要不可欠だからな!」
ミ「はい、ありがとうございます。ではお言葉に甘えて…」
地「〔案ずるより産むが易し〕前のミカが好きだった言葉だ。この14歳ミカエル・マキュローの決断に不敵に微笑むビローと疲れて小動物のように丸くなって寝ているセレーナ、3人を乗せた馬車の列が夜の闇に向けて大きく揺れ始めた」
《BGMあおってからFO》
《場転:夜の街道 サいる》
地「そして、すっかり日が暮れ何も見えない暗闇の中に馬車が止まる。疲れ果てて熟睡している2人を乗せた馬車から出てきた長く美しい黒髪を持つ美女が、闇の奥で縛られた男に一枚の写真を見せた」
ビ「この絵をご存知かしら?」
サ「そんなもの知らない‼︎」
ビ「よく思い出して、貴方の“命”がかかってるのよ…コマイチ君」
サ「⁉︎……聞いた事のない名だ‼︎それより貴様らよくも皆を‼︎覚えとけよ‼︎」
ビ「そう。知らないって言うのね」
サ「復讐してやるからな‼︎」
ビ「うるさいわね、馬車から離れて正解だったわ。ちょっとディー!」
サ「必ず‼︎必ず復讐してやる‼︎」
デ「なんだぁ?もしかして…また、仕事かぁ。勘弁してくれよぉ、ここに来るまで村どころか茶店もありゃしねぇ。もうクッタクタだぁよ」
サ「聞いているのか‼︎このガンドラに攻めてきたこと後悔させてやる‼︎」
ビ「まあ、そういう道を選んでるからね」
デ「うへぇ大嫌いだぜ、この悪魔ぁ」
ビ「もう、機嫌を直してよ。お望み通り仕事をあげるわよ」
サ「ミレーネなど恐るるに足らん‼︎貴様ら覚えておけ‼︎」
デ「嫌だね。俺ぁセレーナ様の命令しか聞かねぇ。面倒臭せぇがこの小僧の護送が終わったら帰る、これが俺のやり方だ」
ビ「その坊やの“命”、あげるわ。」
サ・デ「「え?」」
ビ「その坊やはもう用済みよ。期限も決めないから煮るなり焼くなりあなたの好きなようにしなさい」
サ「ちょっと待て‼︎さっき自分で俺のこと絶対に殺すなって言ってただろ‼︎オイ‼︎」
デ「大嫌いだぜぇ、この悪魔ぁ。」
サ「コラ‼︎ 何ニヤけてるんだよ‼︎」
ビ「褒めてくれてありがとう、そのだらしのない顔をどうにかしてから行きなさいよ」
デ「あぁ」
《デ、サを持ちはける》
サ「俺の話を聞けええぇぇぇぇ‼︎」
地「闇に消える次の世代の怪傑達、その1人が手に入れてしまったのは一枚の秘密、星だけが知っている秘密。それが人に知れた時、また“塔”が唸りをあげる」
優しい色の〜on:台本の指示はたまに曖昧
SE:効果音だが長いSEもあり、多種多様
サス:前からの照明と組み合わせるのが一般的
あおる:短時間強める演出
FO:フェードアウト、本当はF.O.