見渡せばそこは芝だった
「はぁ…今日も暇だなぁ…」
僕は空を見ながら自身の職場について考えていた。
就職したが新入社員として任されることもそれほどなく毎日が進んでいるこの現状が今日の脳内議会のテーマであった。
満足してよいのか!否である!
「あっ、こんなところにいたんですね」
1人盛り上がっている所に1人の女性がきていた。
「小森さん、ごめんね、草抜きサボり気味で」
一緒に入社した小森さんである。黒髪の守ってあげたくなるような女性だ。
今日も僕と小森さんが任されている仕事は草抜き。
任される仕事といえば掃除、草抜きぐらい…
やっぱり、こんな仕事じゃだめだよね!
「草抜き…嫌、なんですか…?」
少し泣きそうな顔でこちらをみる小森さん。
どうやら声に出ていたらしい…
「いや、そうじゃない…そんじゃないんや」
少しうろたえたけれど思ってることを伝えなければならない…だって…
「周りを見てよ!広がるコース!手入れされた芝!なのに生徒がいないんじゃあんまりじゃないか!」
そう、草刈りのし過ぎでこれ以上ないくらいに芝は手入れされていた。
「まぁ…いまは閑散期ですし…夏になれば賑わいますよ」
小森さんの言う通り、車校は夏休みと冬休みから3月末にかけてが繁忙期でそれ以外は閑散期となる。
しかしすべての芝が整ってしまうほど時間を持て余していた。
「はぁ…なんか働いてる実感が欲しいよ…」
就職した桜ヶ坂自動車学校は小さな自動車学校である。
さらに残念なことに立地も悪かった。
春になれば川辺の桜が咲き誇る美しい名所で、周りでは祭りが行われるほどなのだが、それ以外ではこれといったものもなく田舎でも都会でもない中途半端さであった。
「一体ここの経営はどうやって成り立っているんだか…」