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僕らの時代  作者: 西野了
14/21

麻衣が見たもの

 新学期から一週間が過ぎたが僕の前の席はずっと空いていた。大西健一は学校をよく休むが、こんなに続けて休むことはこれまでなかった。僕の左隣の麻衣も入院中で欠席なので、僕の周囲は少しばかり閑散とした雰囲気がある。

「あのさ中島、なんか大西って調子悪いみたい」

 昼休み、麻衣の席に座った小籔が例の調子で囁くように告げた。

「大西はいつも調子悪そうだろ。それに始業式の日は来ていたじゃなかったっけ?」

 僕は答えながら、頭部から血を流し倒れている麻衣を思い出し、少し嫌な気分になった。

「そういえば大西君、渡辺さんが倒れている姿を見てかなり動揺していました」

「へぇー」

 相変わらずクールな口調の石井に僕は感心した。あの騒然とした状況の中、麻衣を冷静に介抱し大西の状態まで把握している石井はいったい何者だ。

「石井さん、そのとき大西は何か言っていたの?」

 僕の背後からサイト―の低い声がした。

「ハイ、小さな声で『ヤバイ、ヤバイ』って言っていました」

「確かに渡辺さんはヤバイ感じだったけど、大西って超ビビりだよね、中島」

 小籔は偉そうに言ったけど、僕はそのときの大西の言動になにかひっかかるものを感じていた。たとえばそれは、家から出かけている間、頭の中が何かモヤモヤして気付いたら忘れものを一つしていた―そんな感覚だ。

「ヤバイ、ヤバイか、ふーん」

 サイト―がブツブツ低い声で呟いているので、僕は後ろを振り返った。汐崎も隣の席のサイト―を不思議そうに眺めていた。

「それからね、中島、サイト―君。田村の親がね、学校に何か文句いって、いろいろあったみたいだよ」

 小籔はまた新しい情報を提供した。奴はあまり大西健一には興味がないようだ。

「やっぱり麻衣のあの発言か?」

「うん、そうみたい。いじめによる自殺だから、損害賠償請求の裁判を起こすとか、起こさないとか、親がギャーギャー言ったらしい.」

「へえ、そうかあ」

 僕は夏休み中、家を訪ねてきた麻衣の母親の話を思い出した。麻衣の言ったことはやっぱり地雷だった。日の当たらないところでそれは爆発している。

「そのゴタゴタは甲子園の大会が始まる前にあったらしいよ」

「だけど、そんなこと誰も知らなかったなぁ」

 僕は振り返りサイト―に同意を求めた。一瞬、汐崎の灰色の瞳と目が合う。

「知らないな。うちの高校の機密保持はどっかの国の秘密警察並みだからな」

 サイト―は相変わらず妙な感心の仕方をする。

「それで、そのゴタゴタはどうなったのでしょう?」

 石井が熱心に訊いてきたので、小籔は少し驚いた。

「あっ、えっと、学校側が突っぱねたっていうか、相手にしなかったら、なんかそれで田村の親の方は諦めたみたい」

「根性なしだ」

 僕は小籔の話を聞いてイラついていた。腹の底から頭の方へ怒りの塊が移動してきたのがわかる。自分の子どもが不審死したのに、どうして田村の親は真相究明しないのだろうか? それとも彼らは本格的に裁判闘争をするために水面下で準備を進めているのだろうか。わからない。僕にはわからないことが多すぎる。ただ僕の胸の内には不快感がへばりつき、脳は外界に漏れそうになる怒りを抑えようとしていた。

「田村さんの親が本気で学校と争う気はないだろう」

 サイト―は名探偵のように眉間に右の人差し指を軽く当てながら、静かに言った。

「それは、どうしてですか?」

 石井圭の声は相変わらず落ち着いていたが、その響きはとても強い意志のようなものが感じられた。汐崎が少し怪訝な表情を浮かべ石井をチラッと見た。

「本当に田村さんの死に納得していないのならば、彼らはもっと早く学校に対し何らかのアクションを起こしているはずだ。田村さんが亡くなったのは七月の初めだ。麻衣ちゃんの例の発言は七月の終わりだ」

「確かにそうですけど・・・・・・」

 石井は納得していなかった。

「それに石井さんも気付いているだろうけど、この高校の野球部は『聖域』だ。そこは誰も侵すことができない神聖な場所さ。そしてこの街の多くの人はその『聖域』を崇め奉っている」

「野球部に刃向うことは、この地域から排除されてしまう」

 石井はうつむき加減で思いつめたように言った。

「じゃあなぜ渡辺さんは、あんなケガを負ったのですか?」

 彼女の切羽詰まった表情に僕はかなり驚いた。そして彼女が投げかけた疑問の意味もわからなかった。(だって麻衣は野球部に反抗して報復を受けたのだろう?)

「そう、石井さんが言うように麻衣ちゃんの事件はおかしい」

(エッ?)

 僕はサイト―の言った意味も理解できなかった。そして小籔も汐崎も僕と同じような表情をしていた。

「エッ、だってサイト―君、渡辺さんはいじめ発言の見せしめで、誰かに階段から突き落とされたんじゃないの?」

 小籔は言ってしまった後、キョロキョロと辺りを見回した。教室には僕らと同じように数人のいくつかのグループがあったが、僕らのことを意識している奴はいなかった。

「小籔、そんなことしたら、逆に疑われるだろ。麻衣ちゃんが言ったことが本当で、田村さんがいじめられて死んだってことが」

「確かにあのことは個人的な事故だったと処理されることが、高校にとっても野球部にとっても一番都合がいいはずです。でも渡辺さんの事件は起こってしまった」

「そうだ。麻衣ちゃんが大ケガをした事件はこの流れに逆らっている」

「それとも、この流れとは別の動きかもしれません」

「うん」

 サイト―は真面目な顔をして小さく頷いた。僕と小籔はサイト―と互角に対話している石井をあっけにとられて見ていた。

「なんか、複雑だね」

 それまで黙っていた汐崎がボソッと言った。彼女はいつものように片肘をついて右の手のひらに形の良い顎を載せていたが、その視線は窓の外ではなく僕らの方だった。

「確かにそうですね」

 石井は静かにそう応えたが、その口元には微笑みが浮かんでいた。

 僕は無意識のうちに汐崎の顔を見つめていた。彼女の澄んだ灰色の瞳は真っ直ぐ僕を見ていた。僕はそのとき気が付いた。汐崎が教室の中で、僕たちの中で、初めてリラックスしていることを。

「中島、いくら涼子クンに夢中だといっても、そんなにマジマジ見つめるのはいかがなものか?」

 サイト―の意地悪な声が僕の鼓膜を振るわずと同時に、僕の血圧は急上昇した。僕の血圧値は200を突破したかもしれない。

「ウ、ウルセー。サ、サイト―、何言ってんだよ!」

 僕は激しく動揺した。小籔は必死に笑いをかみ殺し、石井まで楽しそうな表情を浮かべていた。

僕はどうしてよいのかわからず、虚ろに目を動かしていた。そして困ったときには汐崎を見るのだ。彼女は困惑している僕を見て、にっこりと優しく笑った。そのミステリアスな笑顔は僕の呼吸を止める。

(僕の世界は汐崎を中心に回っている)

 夏の終わりの陽光に包まれた汐崎を見ながら、僕は痺れた頭でそんなことを思った。



 それから一週間経っても大西健一は学校を休み続けていた。麻衣もまだ退院していなかった。そして夏が終わり秋の空気が僕の周りを包みつつあった。

 僕にとって今年の夏は特別だった。生まれて初めて夏の暑さを肌でじっくりと感じることができた。八月の眩い日差しは地面を反射し僕の目を射た。熱風は遥か南の国から吹いてきた。汐崎と出会うことで僕は少し哀しくて、とても大切な夏を初めて手に入れることができた。

 だけど時の流れは無愛想で無常だ。僕にとってかけがいのない夏はすでに消え去ってしまった。

そしてまた田村が死んだことも、高橋が停学になったことも、麻衣が大ケガをして入院したことも、クラスの多くの人間は忘れ去ったかのように日常の生活に戻っている。実際、大抵の人間にとってそれらことは、最初から大して関心のあることではなかった。だから僕の前の席が空いていても大多数の人間は何も言わない。新学期になってこの高校をやめた奴が僕のクラスでは何人もいたが、そのことが話題になることはほとんどなかった。

 その日の放課後、僕はサイト―と麻衣の入院している病院を訪れた。昼休み、僕はサイト―にいっしょに病院に見舞いに行ってくれないかと頼んだのだ。

 麻衣が入院してから僕は最初の日を含めて三回ほど見舞いに行った。僕は彼女が病院に運び込まれた日以外は短時間しか病室にいなかった。二回目の見舞も三回目も麻衣は元気なくぼんやりしていた。僕が何を言ってもほとんど関心を持たなかった。だから僕はやるべきこともなく、三十分も経たずに部屋を退出したのだった。

 そんな事情をサイトーに説明すると、奴はフムフムと鷹揚に頷き「麻衣ちゃんもいろいろなことを抱えて大変だなあ」とポツリと答えた。

「うん・・・・・・」

 僕の曖昧な返事が聞こえたのか、汐崎は小さく首を傾げた。教室の彼女は相変わらず自分からほとんど何も喋らないけど、僕たちの会話をちゃんと聞くようになっていた。どうして汐崎がそんなふうになったのか、僕にはわからなかった。だけどそれは僕にとって、とても嬉しく心躍る変化だった。そして少しばかり淋しい気持ちもあった。

「中島、麻衣ちゃんがケガをした夜、高橋が訊いたよな?」

「ああ、バイトの駐車場に高橋が急に現れたときのことか?」

「あのとき高橋が言ったように、麻衣ちゃんのことで中島、何か隠していないか?」

 僕は反射的に辺りを見回した。今日は小籔も石井もいなかった。この二週間、僕が胸に溜めていたことを最も伝えたかった人間は、サイト―と汐崎だった。

「汐崎とサイト―だけだぞ」僕は真面目な顔をして二人を交互に見た。サイト―と汐崎は無言で小さく頷いた。

「麻衣、あいつ、自分を突き落とした人間を知っている」

「うん」サイト―は数回首を縦に小さく振った。

「だけど、あいつ、その名前を言わなかった」

「麻衣ちゃんは自分を突き落とした犯人を以前からよく知っているのだろう」

「・・・・・・たぶん」

 僕が二週間かけて懸命に考えて思いついたことをサイト―はすでに気付いていた。こいつの頭の回転の速さと認識の広さに、僕はいつも呆れてしまう。だけど今日はなぜかそのことに安堵した。

 汐崎は僕らの会話にかなり驚いたようで、切れ長な瞳を大きく見開いていた。

「麻衣ちゃんはそのショックでまだ病院に籠っているのかな?」

「たぶんそうだと思う」  

「まあ、そのあたりは本人がどう処理するかって問題だからなあ。でも俺も麻衣ちゃんに会いたいし、ともかく見舞いに行こう」

 というわけで、僕とサイト―は退院をクズっている麻衣に会いに行ったわけだ。

 僕らが麻衣の病室に着いたのは、午後六時を数分過ぎたときだった。僕は麻衣のベッドわきのカーテン越しから声をかけた。

「おい麻衣、元気か?」

「はあー」

「麻衣ちゃん、デザート買ってきたよ」

 サイト―の声が聞こえたのか、さっとカーテンが開いた。

「カオルゥ、アリガト―」

 麻衣は僕が見舞いに来たときには、ついぞ見せたことのない満面の笑みを浮かべてサイト―を招き入れた。それから僕を見て、ジャッキベッドの背もたれを上げろと左手と顎で指示した。僕はリモコンでベッドの背もたれを適当な角度に上げ、オーバーテーブルを設置しようとした。

「コーイチ、それはいらないの! アタシはカオルに食べさせてもらうのだからぁ」

「片手ではケーキは食べにくいよね」

「ねーっ。コーイチは乙女心がわからない鈍感オトコだからァ」

「鈍感、鈍感。麻衣ちゃんはケガ人なのにねーっ」

「ねーッ」

 僕は二人の会話を聞き、またもバカバカしくなって脱力感を覚えてしまった。だけど久しぶりに麻衣の笑顔を見たので、(まあいいか)とも思った。

「どう、おいしい?」

「うん、アタシ、イチゴショートが一番好きなのよゥ」

「中島に麻衣ちゃんの好きなお菓子を訊いたけど、こいつ知らなかったよ」

「ダメダメ、コーイチはいっつも肝心なコトがワカッテないのよ」

「だから麻衣ちゃんのイメージでイチゴショートを選んだ」

「エーッ、アタシのイメージってイチゴショートかあぁ。エヘへへ―」

(何がイチゴショートだ! こいつはケーキだろうが饅頭だろうが甘いものだったら、豚のように何でもガツガツと食べるだろ)と僕は思ったが、もちろんそんなことは口に出さない。

 僕がそんなことを考えていると、サイト―は白いビニール袋の中からレモンティの缶をひとつ取り出した。それからプルタブを引っ張ると、麻衣の左手に手渡した。

「アリガト―」

 麻衣は素直にそう言うと、渡されたレモンティの缶を傾けてゴクゴクゴクと飲んだ。

「ケガはどう? 膝はまだ痛むのかな?」

「ウーン、足の方はもうほとんどダイジョーブ」

「右腕が利き腕だから、いろいろ不便だよね」

「ウン、まぁーそーだけどォ」

「麻衣ちゃんの右腕、不自由だから、俺や中島がその右腕代わりということで、いろいろやってあげるよ。なっ、中島」

「あっ、ううん、うん」

 いきなり話を振られて僕はあやふやに答えるだけだ。

「麻衣ちゃんが教室にいないと俺らやっぱり元気がでないよ。それに大西もずっと休んでいて、中島の周りはもの淋しい雰囲気が漂っているんだ」

「エッ! オーニシ、休んでるの?」

「うん、麻衣ちゃんがケガした次の日からずっと来てないよ」

「そう・・・・・・」

 麻衣はそう言うと急に眉間に皺をよせて何事か熱心に考え始めた。いつも条件反射的に行動する彼女にしては珍しい行為だった。数分間、僕とサイト―は熟考する麻衣を黙って見つめていた。

「ねえ、麻衣ちゃん」

「エッ?」

 サイト―の声で我に返った麻衣は、僕らを見て怪訝そうな表情を浮かべた。彼女はどうして目の前に僕とサイトーがいるのか理解できないようだった。それでも徐々に先程までの記憶が蘇ってきたのか、フムフムと小さく頷いたり「アッ、そうかあ」と呟いたりした。

「ねえ麻衣ちゃん、何か悩んでいることとかあるのかな?」

 サイト―の発する言葉は押しつけがましくもなく、また遠慮している響きもなかった。一流の心理カウンセラーはきっとこんな風に話しかけるのだろうと僕は勝手に想像した。

「ウーン」

 麻衣は静かに天井を見上げた。その瞳は遠い風景を眺めているようだった。サイトーも僕も再び口をつぐんだ。カーテンが仕切られている隣のベッドからテレビの音が聞こえてきた。誰かが何かを騒々しく話しているみたいだった。

「オーニシ・・・・・・」

「ウン?」

 サイトーは優雅に首を傾げ、僕は耳を疑った。

「オーニシ、恨んでるのかなァ?」

「それは麻衣ちゃんを、ということかな?」

「ウン・・・・・・そう」

「大西が麻衣を突き落としたのか!」

 僕の声は無意識に大きくなってしまっていた。麻衣は眠たそうな眼差しを僕に向け、「フゥ」とため息をついた。

「シュータと神山もいた」

 僕は麻衣の言っていることがわからず、もう一度問いただそうと言いかけた。だけど僕の口から言葉は出てこなかった。麻衣のつぶらな瞳から涙が溢れ出て、掛布団のシーツをポタポタと濡らした。

「アタシ・・・・・・何、やってもダメだ」

 涙を流しながらも目を閉じた麻衣は、静かにそういった。サイト―の両手が麻衣の左手を包んいた。隣のベッドからお笑い芸人の喋り声と編集された乾いた笑い声が聞こえてきた。



 僕とサイト―が病室を後にしたのは午後七時過ぎだった。それから僕らは病院前にある薄汚れたラーメン屋のカウンターに座って、ラーメンが出来上がるのを待っていた。

「なあサイト―」

 僕は水の入っているグラスを手に持って眺めているサイト―に声をかけた。

「ん?」

 彼の顔には珍しく疲労の色が浮かんでいた。(それはほんの僅かだったけど)

「麻衣を突き落とした奴は大西健一なのかなぁ?」

「うーん」

 名探偵の友人にしては歯切れが悪かった。

「石井の話でも、大西は『ヤバイ、ヤバイ』って言っていただろ?」

「ああ」

「麻衣は、どうしてハッキリ言わないのだろ。あいつ余計なことはペラペラ喋るくせに」

 サイトーは黙っていた。僕は少しイラついてきた。

「ヘイ、ラーメンお待ち!」

 店主の妙に甲高い声が聞こえ、僕とサイト―の前にラーメンの入った赤茶色の丼が置かれた。

 僕とサイト―は黙ってラーメンをすすった。ズルズルという音だけが小さな店の中で響いた。僕らはラーメンを食べ終わるまで、お互い何も喋らなかった。

「中島」

 サイトーは水の入った透明のグラスを右手で弄びながら言った。

「麻衣ちゃんの爆弾発言を無視した方が学校や野球部にとっては得策だと俺、言っただろ」

「うん」

「変な言い方だけど、麻衣ちゃんは報復された方がいいと思っていたのではないかな」

「自分の言ったことが本当だって証明されるからか?」

 サイトーはグラスを持ったまま頷いた。

 僕は脳天気で気分屋の麻衣がそこまで考えて行動したとは思えなかった。大体あいつは物事を深く考えずに突進する。今回はたまたまサイト―が言ったような状況になったのかもしれない。

 僕は幼馴染がそのような状況に置かれたことにショックを受けた。そして彼女に対して振るわれた暴力に冷たい悪意を感じた。

「麻衣ちゃんがショックを受けたのは・・・・・・」

 サイトーはそこまで言うとグラスの透明な水を一口飲み、ふうと大きく息をついた。いつもクールなこいつも麻衣の言葉に感情的になっているみたいだった。

「大西健一が麻衣ちゃんを突き落としたのかもしれない。だけどもっと衝撃的だったのは、彼のそばに神山と大西秀太がいたことだろう」

 僕はその言葉を聞いた瞬間、圧倒的な力のようなものを感じざるを得なかった。神山や大西秀太の存在は、さえない高校生である僕とは比較の対象にもならないほど巨大だと、理由もわからず感じたのだ。

(あいつら、いったい何を考えている?)

 僕はしばらく呆然としていたのだろう。ポンと右肩を軽く叩かれ振り返るとサイトーが「帰ろうぜ」と言った。僕らは店主にラーメン代を払い、店を出た。外は暗い闇に満たされ、ぼんやりとした街灯の光が一定の間隔で道路を照らしていた。


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