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宙〈そら〉へ撃て  作者: ヒヨコ
プロローグ
2/2

プロローグ アリューシャンの海2

少しおかしな所もありますがご容赦を。

ヨボヨボになった『きりしま』は見る見るうちに艦隊から引き離された。

「おエライ方さんにどやされますね....。だからこの老体にゃ無理だって言ったのに」

小野寺はやるせない表情をしていた。やる気がなかったとはいえ、責任感はあった。

自分の手に沢山の乗組員の命を預かっている。それくらいの事は小野寺も重々承知していた。

だからその面では不謹慎ながら決戦に参加出来ないことにホッとするも、心のおっくーーーー、の方に使命感もあったのでなんとも言えない、簡単に言うとモヤモヤとしていた

「........」

国東も黙り込んでいた。彼もまた葛藤と戦っているのだろう。

艦橋はエンジンの唸りに支配されていた。


沈黙を破ったのは、CICオペレーターからの報告だった。

《か、艦長!! レーダー上から友軍の艦隊が消滅しました!!》

声が上ずっていた。それもそうだ。何の前触れもなく決戦艦隊がロストしたのだ。艦は一瞬でパニックに陥った。

しかし、小野寺は冷静だった。思い当たるふしがあったからだ。

「副長、例のヤツですかね?」

小野寺の顔は真剣だった。国東も考え込んだ。

「可能性は大でしょう。直径100キロの艦隊が1発で消滅するのは普通じゃ有り得ません」

小野寺の”思い当たる節”とは、前回の大海戦、第2次ハワイ沖防宙戦である。

『きりしま』も後方支援部隊として待機していたのだが、今回と同じく艦隊が一瞬で消え去った。慌てて現場の海域に向かうと、”戦闘艦だった”破片がおびただしく浮遊していた。

この時、ステルス偵察衛星オロチが防衛艦隊の最期を見届けていた。ミサイル攻撃中、敵プラントを中心として、半径200キロのドームが覆い尽くしたその瞬間。


木っ端微塵、という言葉がなるほど妥当だ、と思うほど艦が粉砕された。


後の解析で、いわゆるバリア内で原子規模で振動を起こし、艦をバラバラにすることが判明。国連軍では便宜上『エネルギードーム』と呼んでいる。

「勝てるわけねーよなー、こんなんじゃ」

小野寺は任務を投げ捨てたい気分だった。

と、

《こちらCIC。自衛艦隊司令部より帰還命令です》

「撤退か。分かった」

今更艦隊が消滅した現場に行ったところで何も残っちゃいない。1隻で敵のプラントに向かおうなどもってのほかである。

「現海域を離脱、本土へ帰投する。面舵180度。発動、今!」


最後の海戦も、人類側の敗戦で幕を閉じた。

これで、滅亡はまぬがれない。

このニュースが世界を駆け巡った時、人々は絶望した。

しかし、国連軍は最後の切り札を残していた。



海戦から3週間後。アメリカ・サンフランシスコ港に寄港し、久しぶりの日本・佐世保港に帰投した。

到着するなり、自衛艦隊司令がやって来た。

何事かと、艦が浮き足立つ中、小野寺は艦隊司令、麻川治彦海将と面会していた。


「司令。早速ですが質問です」

口火を切ったのは小野寺だった。

「なぜあのような無謀な作戦を立てたんですか?」

麻川は黙って聞いていた。

小野寺は続けた。

「海保の巡視船や小型警備艇まで動員して。これで勝てるとは思ってませんでしたよね? なぜこの作戦を立てたんですか?」

麻川は黙っていた。小野寺の溜まっていたものがついに爆発した。

「答えろ!! なんで無茶な作戦をさせた!?」

「....」

「大切な隊員達、乗組員たちを失う事ぐらい馬鹿な国連司令部だって分かってたはずだ。分かっててあーゆー特攻攻撃のような事させたのかって聞いてんだよ!!」

リムパックでで出会った時のマークスの笑顔を思い出していた。

マークスは犬死した。理不尽な攻撃を目の前にして。人類が勝てるはずのない相手に殺されたのだ。そう思うと黙っていられなかった。

「....すまない」

麻川が一言言った。

「あれは陽動作戦だったんだ」

小野寺は絶句した。

「まさかその陽動作戦のために、多くの乗組員を犠牲にしたってのか!? ふざけんな!!」

隣で凄まじい怒号が飛んだ。

小野寺はその怒声に驚いた。隣にいた国東が激昂したのだ。

普段はとても冷静で、怒鳴る事など皆無だった。その国東が怒り狂っている。

「どの艦の乗組員だって、死ぬことぐらいは覚悟しているさ。こーいう仕事だからな。でもって犬死させることは無かったはずだ!! お前らは馬鹿か!!」

その怒りの意味は分かっていた。

国東の息子が乗っていた海上保安庁の巡視船『いき』も、あの海域で乗組員と共に海底に沈んだ。冷たく暗い世界に。

「だから君たちを呼んだんだ」

麻川が言った。

「なぜあの陽動作戦をしたのか。それらは君たちに関わってくるので話しておく」

小野寺と国東は怒りを抑え座った。

「あの時、実はアメリカからある艦が日本に向かっていたんだ。しかしながら、すでに奴らに見つかっていた。だからそちらに攻撃が行かないようにする為に必要だったんだ。分かってくれ。頼む」

「ある艦?」

小野寺と国東は同時に訊いた。

「地球側最後の切り札だ。名前は――――――」


「新生『きりしま』だ」

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