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50音順小説

イン・ザ・スカイ 50音順小説Part~い~

作者: 黒やま

ところどころ読みにくいところが

あると思いますが、ご容赦ください。

いつかあの青い空の中を翔けたい



きっとそこはひんやりとつめたくて とてもここちよいところだろう


こんなところよりはるかに すばらしいところ


地上でいつまでもくすぶっている僕に だれか背中をおしてくれないか



(いく)、何してるの?」


青一色で埋め尽くされていた僕の視界に、いきなり女の子があらわれた。


「空みてる。」


いつもと同じ答えをいつも通りそっけなく答えると彼女は眉をひそめ、


「いっつもこうやって屋上に来て空ばっかりみてさ。そんなにおもしろい?」


どうやら今日の彼女はご機嫌ななめらしい。


それより・・・


翔子(しょうこ)。重い、どいて。」


寝っ転がっている僕に覆いかぶさるようにしてまたがっている翔子は


その言葉を聞いてさらに不機嫌になってしまった。


「女の子にそんなこと言うなんて・・・郁にはデリカシーってものがないの。」


なんだかぶつぶつ言っているが、翔子がようやくどいてくれたので


また僕の視界いっぱいに空がひろがった。




この世界はつまらないことばっかりだ 


たのしいことも かなしいことも 僕にはない


ただなんとなく生きてるだけ


なんにもない


それなら なんにもない地上より


なんにもない空にいたほうが


何十倍も気分がいいはずだ




いつのまには僕は空の中にいた


僕はその一面真っ青な空を駆ける


力いっぱいぐんぐん、どんどんはやく


駆けている今この瞬間は楽しいと感じた


だが


しばらく駆けたら 僕は飽きてしまった


あぁ 結局ここも僕を満足させることはできなかったのか


そう思うと どうしてあんなに空へ執着していたのか

 

わからなくなってしまった


その時だった


突然一陣の風が吹き起こった


その風が吹いていった方向をみると


一羽のおおきなトリが空を翔けていた


僕はとてつもなくトリを追いかけたくなって


トリが翔けていった先にむかって 駆けていた


またぐんぐんと駆けていく


そうするとトリに追いついた


トリはおおきな羽をひろげ とても気持ちよさそうだ


僕も空をかけたい


駆けるのではなく 翔けたい


この胸いっぱいにそんな感情がこみあげてきた


僕の気持ちを感じとったのか


トリはひときわおおきく羽をはばたかせ


さっきより強い風が吹く


その影響で 僕のからだがふわっと浮き上がった


まるで背中をおすかのように


僕は空を翔ける 


とてもここちよい そんな言葉しかでてこない


だがその言葉が 今の気持ちをあらわすのにいちばんしっくりくる


そんなことを思っていたら また風が吹いた


僕が目をつぶって 数秒後目を開けると


一瞬にしておおきなトリは女の子に変化した




「・・・くっ。郁!」


はっと目を覚ますと


空は青色ではなくて 茜色に変わっていた。


「ずいぶん気持ちよさそうに寝てたけど、さすがに夕方に

なったから起こしちゃった。帰ろう。」


腕時計を見るとどうやら2時間ほど、寝入ってしまっていたみたいだ。


その間 翔子はずっとそばにいたらしい。


「はやくっ!はい、鞄。」


と、翔子は僕の鞄を投げてよこした。


いつの間にか機嫌は直ったようで、いつもの翔子に戻っていた。


「郁のことだから、何にも用意してくれてないとは予想してたけど

まさか忘れてるとは想定外だよ。」


いきなりそんなことを言い始めた翔子。


どうやらこのことで機嫌が悪かったらしい。


しかし、何のことを言われているのかさっぱりわからない僕は翔子にたずねた。


「僕何か忘れてた?」


「今日は私の誕生日。いつもは『おめでとう』くらい言ってくれるのに。

何も言ってくれないと寂しいじゃんか。」


そうだ。今日は彼女の生まれた日。


だから翔子はあんなに不機嫌だったってわけか。


「・・・あぁ、そうだった。うっかり忘れてた。」


「うっかりじゃなくて、すっかりでしょ。もう、今日は何かおごってもらうんだから。」


そんなことを言いながら翔子がこちらに背中を向けた。


「あれ・・・。」


「何?どうしたの?郁。」


「いや、なんでもない。」


目の錯覚か、夕陽のまぶしい光のせいなのかもしれない。


翔子の背中におおきな羽がみえた。


あの夢のなかのおおきなトリのような羽が。


天翔ける子。


あのとき一緒に空を翔けたのは、翔子だったかもしれない。


なんとなくそう思った。


なんだ。この世界にも楽しめることはあるのかも。


「翔子。」


名前を呼ばれた彼女は、振り返った。


「誕生日おめでとう。」


やっと祝いの言葉を述べられた翔子の顔は


逆光のおかげでよくみえなかった。























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