第二十五幕 僕と彼女の神社へいらっしゃい!
結論から言ってしまえば、体育祭は何事もなく無事に終了した。
本当に、何事もなく無事に終了した。
何事もなく…
本当何にも、ラッキースケベの1つとも起こりやしない、平穏無事な賢者たちの体育祭だった。
少なからず期待はしたさ。
女子の騎馬戦…誰かが転倒するな否や、ポロリを期待して僕とタイガーはカメラ片手にスライディングからのフラッシュ連写。
しかしそこに写るは砂埃とピンボケの何か。
多分女子の腕か何か。
ムフフの欠片すらありゃしない。
しかもそれが原因でカメラの持ち込みが教員にバレて、やっちゃん御指導の元にカメラ没取。
もちろん抗議はした。
中学時代などたった3年。
3年しかない女子中学生のブランドをこの期に確保せんとしていかがする!と。
しかし教育者とは無慈悲なもので。
「なら親を呼ぶぞ」と脅され、僕とタイガーは泣く泣く抗議を取り消した。
これが現場の声だ。
どうか世の教育者たちに届いて欲しい、今まさに現場で生きる中学生男子たちの声だ。
どうか…どうか…
閑話休題。
僕には今、やらなくてはならない事が多々ある。
まずに学級委員長真田穹音の片腕に光る、ビリビリさんを何とかする事。
ショタコンの極みをひた走る彼女にとっての死活問題。
常日頃から興奮による電流に苛む委員長。
何とかしないと多分彼女は死ぬ。
か、いっそ電流に慣れてその手の事で興奮する新たな境地にでも達してしまえば…
次に半分死んでる眞中を何とかしないと。
まぁコレは奴さんの回復を待つのみ。
頑張れ眞中、生きよろ眞中!
そして、もう1つ。
「さっき神通力が来たの。今晩白虎様が下界に来るって…」
「どうしたぺちゃぱい、そんな震えて。どんなに震えても無いものは無い、揺れないよ?」
「アンタ本当に殺すわよ」
それはとある夏の夜、白犬神社の境内。
例のゾクゾクするベンチ…が夏の気温でヒンヤリ感を失い、普通のベンチへと変わり果てていたそのベンチに僕とぺちゃぱいワンコ神ちゃまのコマは腰掛け、その時を待っていた。
「…はぁ。何かアンタといると緊張してる私がバカみたいに見えてくる」
「謙遜はよくないよ! コマはバカなんかじゃない! 確かに、確かにそのお胸は謙遜気味な発育をしているけどだ、中身はすくすくと立派なレディにちょっと待って待ってよ待ってコマさんその手に持ってる2tハンマー降ろして!?」
「…はぁ」
ため息ばかりの神獣さま。
力を失い、神としての立場が危うい現状下での、上司介入。
神様界のリストラと言ったところか。
全ては僕に責任があること。
だから僕は、残念賞まっしぐらな体育祭だったとしても、止む無く、致し方なく、しょうがないから、
このぺちゃぱいワンコを守ってやろうと思う。
守る、と言ってもどうやって守るか。
相手は神様の中でもかなりお偉い方とみてる。
果たして、一介の一般思春期真っ盛りな人間がどうこう出来る相手なのか。
それは正に、
神のみぞ知る。
「……っ!!?」
その時、隣に座るコマが息を飲んだ。
刹那、僕とコマの目の前…そこに、白い靄と光が集って行く。
まるで…空間に穴が開くみたいな…
幻想的とも言える靄と光が集って、そこに今までなかった1つの人影を作った。
「来たか…」
僕は隣のコマを見る。
いつもの天真爛漫、無邪気に発情期を迎えていたコマの姿はそこに無く、
ただただ顔を白く、これから起こるであろう展開に恐怖し震える…
1人の、か弱い女の子の姿があった。
「…らしくないじゃないか」
僕はそっと、コマの手を取った。
夏真っ盛りだと言うのに冷え切っている、その小さな手。
「僕は言ったハズだよ、絶対にこの神社を…コマを守ってみせる、って」
だから僕を信じてくれ、と。
「…この変態」
コマは強張りながらも少しだけ笑った。
この白犬神社を、コマの神様としての地位を守って、
そして、さらにこの神社を繁栄させて、コマに神様の力を取り戻させて、
神様の力を取り戻したコマに、
世界をピンク色に染めて!
とでもお願いする未来、を見て。
「白虎だろうが天照だろうが何でも来い! この僕が…どんな奴でもピンク色に染めて、全てを納得させて…コマの全部を守ってやる!」
そして目前に現れる人影。
神々しいとは正にこの事。
僕はコマの手を握ったまま、ベンチから立ち上がる。
神と人とのガチンコバトル。
守るべき女の子の為に、とか熱いね!
僕は全てを、コマとの全てを思い出す。
そして、
「あ、ハロー神様、初めまして。ところでアナタ、ムフフって事に興味はお有りで?」
今作に関しては、本当に謝罪の言葉しかありません。
って、自身の他作でも言ってる話ではあるのですが、特に今作に至っては本当の本当に色々とお時間を掛け、かつ消化不良な展開の数々。
全てが中途半端な形になってしまった事、本当に申し訳ありませんでした。
そして、本来なら言うべきかどうかの事なのですが、
改めて、ありがとうございました。