第二十三幕 体育祭開幕直前秘話・前編
それは、体育祭開会式の30分前の事。
「かったりぃー・・・」
「あ、コラ市沢! サボってないで手伝いなさい!!」
体育祭30分前、佐薙中校庭南端の桜の木の下。
「別にサボってはないよ。ただぐーたらしているだけさ」
「それをサボってるって言うの!!」
気温21度、空は快晴、風は弱い。
「・・・はぁ、いい天気だな」
・・・僕こと、ピンク色選手権初代王者市沢和也は桜の木に寄り掛かり、何となく空を眺めていた。
「市沢っ! 真面目に働いてよ!!」
そして、僕の隣でSMプレイの高飛車キャラのお姉さん顔負けの怒鳴り声でピーチクパーチク喚き散らしているこのお方は、僕のクラスのショタコン委員長真田穹音。
え? 何言ってるか分からない?
だったらネットで「SMプレイ 動画」で検索よろ。
「はぁ・・・なんか・・・可愛い女の子とムフフでもしたいなぁ」
「何言ってんのよ変態! アンタ仮にも体育委員なんだから、真面目に準備を手伝い・・・」
「僕は痛いの嫌いだから調教する側がいいな・・・あ、でも痣とか傷だらけの痛々しい女の子は見たくないし・・・つまるところ、僕にはSMプレイは向いてないのかも」
「えすえっ・・・って、な、ななな、何言ってんのアンタ!?」
「個人的にはさ、僕好みの女の子は従順よりもちょいツンだけど基本ほんわかと言うか・・・つまりMっ子ではないんだよ」
「なっ・・・」
「さらに言うと、年は少し上が良くて、髪は・・・ちょっとカールってた方がいいかな。あ、でもストレートロングな清楚系やぱっつん姫カットも捨てがたいな・・・」
「・・・きもっ」
「もっと言うと、包容力が一番よ。一番は包容力。僕の甘えをしっかりと受け止めてくれる寛大な包容力」
「・・・クラス委員の私が言うのもアレだけど、アンタなんかクラスで一人ハブられちゃえばいいのに」
・・・もう既に半ばぼっちだよぼかぁ。
・・・今僕と真田はクラスの代表と言うことで体育祭最後の準備・・・保護者観覧席の確保・・・つまりは校庭の隅っこにブルーシートをガンガン敷いていくという作業をしていた。
僕、体育委員(仮)
真田、クラス委員
ってことでのお手伝い。
なんで昨日のうちに・・・当日の朝なんかに・・・という疑問には、先ほど大内から、
「すまん、ブルーシートの事、忘れてた」
とか言う殴りたくなるような説明がほどこされ、
今、各クラスの体育委員とクラス委員が総出で体育祭最後の準備をしている・・・ってとこだ。
「もう・・・ホント大内君も適当だよね。天然と言うかなんと言うか」
「まあ、大内(筋肉バカ)だからね、しょうがないよ」
うん、しょうがないしょうがないもう手遅れ。
「ってかさ、いつになったら本来の体育委員さんは戻って来られるのであろうか?」
「・・・アンタが言う? 眞中君を入院送りにしたアンタが」
「あれは事故だって言ってるだろ。だって僕が眞中止めなければ、キミの右腕の・・・」
「・・・アンタ、感電死したいの?」
「・・・ごめんなさい」
疲れるなぁ。
「・・・で、時に真田幸村さん」
「・・・殺すわよ?」
「・・・・・・」
無言の殺気。
「・・・あ、あのさ、話変わるけど、ちょっと聞いていい?」
「・・・何?」
わおっ、冷めてる!!
「・・・キミ、前見えてるの? ソレ?」
「・・・・・・・」
今の状況を簡単に説明。
僕、ブルーシートを校庭の端に敷き敷き中。
真田、ブルーシートを校庭の中央付近に敷き・・・。
今の僕らの服装を簡単に説明。
僕、体操服。
真田、体操服・・・と、
・・・黒マジックでレンズを盛大にベタ塗りしたメガネ着用。
・・・謎だよね。
「・・・どうしたの真田? なんで視界シャットダウンしてるの?」
「・・・・・・」
「・・・真田、そこ校庭の真ん中だよ?」
「えっ!?」
「どこにシート敷いてるのさ。キミこそ作業サボってるかのように・・・」
「・・・っ」
しかし真田はメガネを取らず、恐る恐るといった様子で移動を開始。
やっぱり前、見えてないみたい。
「・・・・・・」
謎だ。
あの真面目って文字を擬人化したみたいな人間の真田が、ふざけていると?
ってか、どうした?
近日、私神スピンオフ掲載!
黒い翼との出会いの物語!!