第二十幕外伝 烏神獣が壊れる時
第二十幕外伝です。
第八幕以来の外伝です。
今回は露骨な表現はないものの、見方によってはR指定ギリギリのシーンがあるような、ないような。
苦手な方はご注意下さい。
「ケダモノ、お前のせいでリィゼが卑猥の道に走り出した」
「……は?」
「だから罰として、今ここで腹切れ」
「切腹ッ!?」
意味が分からない。
僕は今、明日学校でタイガーと一緒に読むためのお宝水着大全集なる写真集を買いに、近所の書店に来ていた。
自宅から自転車で約10分の所にある、大型の書店。
今は6月。
じめじめとした蒸し暑さの中、僕は自転車を書店の駐輪所に止める。
地味に噴き出す汗。
僕はその汗をぬぐいながら、書店の入口へと向かう。
ちなみに僕は貝殻ビキニより紐ビキニ派な人間です。
太もも太もも!
あ、あとヘソ!
鎖骨のくぼみ!
膝のうら!
僕ムフフ!!!
そして、書店の入口まで行き、いざムフフ求めて入店しようとしたら、
「……ターゲット捕捉」
と、背後から聞いた事のある声で、なんか嫌なフラグを立てるような言葉が聞こえた。
「…………」
……幻聴だ。
これはきっと幻聴だ。
うん幻聴。
僕、とりあえずは何も聞いていないって事にして、書店に足を踏み入れる。
「……ケダモノ、お前のせいだ」
……背後から聞こえた幻聴。
ケダモノとか、あんまり宜しくない幻聴だな。
耳の病気かな?
「……お前がリィゼに卑猥な事をしたせいで、リィゼは……」
……なんか幻聴をシカトしてたら、より一層酷くなった幻聴。
しかも内容に遺憾を感じる。
僕、どっかの裸羽さんには卑猥な事、一切してないよ?
「ケダモノ、お前のせいでリィゼは卑猥の道に走り出した」
「……は?」
幻聴って事にしたかった。
これは幻聴なんだって信じたかった。
けど、思わず僕、振り返っちゃった。
リィゼが卑猥の道に走り出した?
「だから罰として、今ここで腹切れ」
振り返った先。
そこには、どす黒いオーラを纏い、鋭く光る目付きをし、鬼神と化していたポニテ少女、
直江凪沙の姿があった。
……ってか、
「切腹ッ!?」
まずそこにツッコんでみた。
「リィゼが突然、エロくなった」
「……すげぇ唐突だな」
僕が写真集を買いに書店へ行ったら、たまたま同じく書店に用があって来店していた直江凪沙に何故か捕捉された。
何故か。
そして、唐突に切腹命令をくだしてきた。
唐突に。
もう僕、直江の考えてる事分からない!
「……ケダモノ、お前リィゼに何か吹き込んだだろ?」
直江の鋭い瞳。
めちゃくちゃ怖い。
ちなみに今、僕らは書店外のベンチに腰掛けています。
直江は学校帰りに直で来たのか、制服姿のままだ。
僕は一旦家帰ったから私服ね。
「吹き込んだって……そ、そもそも何の話だよ!!」
僕は最初の公園でと、この前の鍵探しの時以外ではリィゼに会っていない。
意外とまだ2回しか会っていないのだ。
「……リィゼは最近、妙にケダモノ臭がする」
直江のジト目。
「ケダモノ臭って、リィゼは烏の神獣なんだろ? まさに獣じゃん」
「そうじゃない。ケダモノはケダモノでも、市沢的ケダモノ臭だ」
「僕的ケダモノ臭? あ、もしかして犬の臭い? 昨日は白犬神社には行ってないんだけどな……」
「…………」
「……な、何その目? 何その威圧感? 何その殺意!?」
「…………」
「やめてっ! 無言怖いよ、僕が何をしたって言うんだよっ!」
「……単刀直入に言うぞ」
「……えッ!? ……あ、ああ……」
その時、今まで殺意むき出しだった直江の瞳が少し揺らいだ。
そして、視線をそらし、顔を少し赤らめる。
僕、思わず唾を飲んだ。
「……リィゼが突然エロくなった」
「……そ、そう言えば最初にそんな事言ってたね」
リィゼがエロに目覚めた?
「……それだけじゃない」
そして徐々に声が小さくなる直江。
僕、何故か緊張。
「……リィゼ、エロはエロでも……」
「う、うん……」
「……お、女の子同士の方に……め、目覚めたらしくて……」
「……は?」
「お、お前が何か吹き込んだんだろッ! この変態ケダモノッ!」
珍しく息を荒げている直江。
顔真っ赤っか。
……ってか、
「……女の子同士?」
黒烏神社。
白犬神社に比べたら少し大きな神社だ。
立地的には住宅街の外れにあり、神社の周りには大きな木が所狭しと植えられている。
鳥居から拝殿へと真っ直ぐに繋がる石畳の境内、派手さはないが、地味に装飾の凝られた木製の立派な拝殿。
そして狛犬は無く、鳥居の上に小さな烏の模様が描かれていた。
「……ここが黒烏神社か」
僕は生まれて初めて、黒烏神社へと訪れていた。
白犬神社よりも明らかに豪華絢爛だな。
思わず境内をキョロキョロ。
「……お前、本当にリィゼがおかしくなった原因を知っているのか?」
僕の隣には直江。
「……まぁ、多分」
あの後、僕は直江からリィゼの豹変っぷりを聞いた。
ある日、リィゼが突然エロくなったと。
顔が赤く、目がトロンとして、とても従順になって。
そして、その……直江に対して変な行為をしてくると。
まぁ詳しくは自重。
ムフフ大好き市沢君も、R指定は大嫌い。
で、僕はその話を聞いて考えた。
一言で言うと、もの凄いデジャヴ。
なんでだろう?
神獣が突然エロくなるとか、デジャヴハンパねぇ。
そもそも外伝って辺りに謎の共通点的なアレを感じる。
……で、何か知らんがリィゼの現状について、僕をめっさ疑っている直江。
僕はその疑いを晴らすために、こうして黒烏神社まで来たわけなのだが。
「……あ、凪沙お帰りぃ!」
拝殿の方から猛スピードでこちらに駆け寄って来るのは、黒い翼を生やした女の子。
「た、ただいまリィゼ……」
直江、苦笑い。
リィゼは白いノースリーブを着ていて、翼の黒によく映えていた。
そして、顔は白でも黒でも肌色でもなく、ほんのりとした赤。
……デジャヴ。
「遅いよ凪沙っ!」
リィゼはスピードを落とさずに直江の胸元(と言っても平野)へダイブ!
直江はそれを優しく抱き止める。
「ご、ごめん。今日は書店へ行ってたから」
「もぉっ、凪沙は私のモノなんだから、早く帰って来てよ!」
「だ、だからごめん」
その時、直江は凄い睨みを効かせて僕の方へと視線を向けてきた。
何?
まだ僕何もしてないよ?
一方のリィゼは直江の胸元へ頭をぐりぐり。
で、そこでリィゼは顔を上げて、笑顔で一言。
「ねぇ凪沙?」
「な、何リィゼ?」
直江、ぎこちない態度でリィゼに対応。
相変わらずリィゼの顔は真っ赤。
何かエロい表情やな。
「凪沙のおっぱい揉んでもいい?」
「……ブッ!!」
衝撃の一言。
僕、思わず吹く。
直江、ジト目。
「……あ、ケダモノいたの?」
その時、やっと僕の存在にリィゼが気付く。
「ゲホッゲホッ!」
僕、蒸せ中。
「ん? どうかしたの?」
「ゲホッゲホッ……おえっ」
やべ、呼吸がっ。
「……? ……まぁいいや」
リィゼ、満面の笑み。
そして……リィゼは直江に向かって……
「えいっ!」
「うえっ!?」
僕は蒸せつつも、直江の悲鳴じみた声を聞き、何故か男のロマンを感じて横を見た。
……そして、僕は鼻血を盛大にぶちまけた。
……あんまり露骨に表現を書くとR指定を食らうので、ここからは音声のみでお楽しみ下さい。
あ、何をしてるのかは皆さんの想像にお任せします。
「……ちょっ、リィゼ! 止めなさい離しなさいっ!」
「凪沙、本当に平野だね。お山無いね」
「なっ!? よ、余計なお世話……ひゃうっ!!?」
「でも先っちょは敏感なんだね! えへっ!」
むにっ
「ちょっと……止めなさいって……」
「ふふっ、凪沙可愛いよ!」
「リィゼっ! ……うあっ」
ふにゃっ
「はいは〜い、ボタン外しますよ!」
「ちょっ! 待って、ケダモノが見て……あれ? 鼻血出しながら倒れてる?」
「はいボタン外し終わり! あ、こっちのフックも外すね!」
パチッ
「……えっ?」
「うわぁっ、凪沙肌白いね。すべすべぇ!」
「うわっ、いつの間にフックを……」
「えへへ! 凪沙可愛いっ!」
むにっ
「っ!?」
「……直に触ると、意外にふっくらしてるね」
「いやっ、ちょっとリィゼ、止めなさ……ぇっ」
むにむに
「えへっ、柔らかぃ〜い!」
「うぅっ……リィゼ……っ!」
「凪沙よだれ垂れてるよ?」
「う、うるさ……い……ってか離しなさい……」
「うわぁ、凪沙顔赤いよ! 本当に可愛い! 食べちゃいたい!」
ブハッ……
(↑市沢君の鼻血が度を増した音)
「あっ……いやっ……」
「……先っちょ、硬くなってきたね」
「はぁ……はぁ……リィゼっ……うっ」
「気持ちいい?」
「……はぁっ……うっ……」
「……凪沙、ふにゃふにゃになってきたね」
「はぁ……はぁ……」
「……本当に敏感だよね、凪沙」
「はぁ……あ……ぁ……」
「……じゃあ、さっき言った通りに食べちゃおうかな?」
「……えっ?」
はむっ
「……ッ!?」
「れろれろ……ちゅぱっ」
「くあっ……いやっ……だめっ……」
バタリっ……
(↑この辺で市沢君、意識を失う)
「……えへっ、凪沙はずっと、私のモノだからね!」
「り、リィゼぇ……」
「下もいっちゃう?」
「へっ?」
ちょんっ
「ひゃあっ!!」
「……えへっ! 好きだよ、凪沙っ!」
僕は物凄い気だるさの中、目を覚ました。
「……んん」
なんだ……ここ?
僕は石畳の上に横になっていた。
何故だろう……凄い貧血感。
僕の服は所々に赤い染みがあり、なんかグロい。
「…………」
僕はボーっとする頭を何とか動かし、記憶を探る。
僕は今まで、何してたんだ?
ってか、僕今倒れてる?
いつ倒れた?
あんまり記憶が……
……で、何とか上半身を起こし、辺りを見回して気付く。
「……黒烏神社?」
僕の目の前。
そこには赤い神社の鳥居。
鳥居には、黒烏神社の文字が。
そして、その鳥居の向こう……
「……ッ!」
僕は全てを思い出した。
ああ、そうだ。
僕は直江の話を聞いて、リィゼの異変を見に来たんだった!
そうだそうだ!
そして、神社に着くなりリィゼが直江に抱きついて、そして……
ブハッ!
「うっ、いかん鼻血がまた……」
ちなみに、鳥居の向こう。
そこには衣服を乱し、生気を失った顔をしている直江が、木に寄りかかり、1人放心していた。
「……神獣もやっぱり獣なんだな」
僕は改めて神獣の発情期の怖さを思い知ったのだった。
そしてもう1つ。
「……僕はてっきり、リィゼは純粋無垢な女の子かと思っていたけど」
僕は苦笑い。
「……本性は小悪魔なんだね」
木に寄りかかる直江の頬に、一筋の涙がこぼれた。
今話は謎のやりきった感がハンパねぇ。
……何かすみませんでした。
キャラクター設定紹介のコーナー。
ファイルNo.10
中津岳志
佐薙中学校生活指導係の教師
身長:180センチ
体重:79キロ
誕生日:3月3日
血液型:A型
モブキャラもいい所。
あだ名はやっちゃん。
本編第一幕と第二幕以来出番がない。
タイガーの天敵でもある。
今後、有効活用していきたいキャラの1人。
不定期連載。
もしも〇〇だったらシリーズ。
第2回
もしも超能力が1つだけ使えるなら、何の能力がいい?
市沢
「透視。誰が何と言おうと透視」
タイガー
「保育園に不法侵入しても罪に問われない能力」
真田
「小学校に不法侵入しても罪に問われな……いや、何でもないわ」
直江
「今話の内容を読者の記憶から消せる能力」
達知
「画面の中に入れる能力」
大内
「超能力? 何だそれ、食えるのか?」
結論。
コイツらもう手遅れ。