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第十七幕 獣の呪い

水色と白を基調としたチュニックワンピースに、青を出したデニム。


右手首と左足首にはミサンガが巻かれ、明るい茶色の髪には可愛い犬の髪飾りが付けられていた。


そして、その頭からはぴょこぴょこと犬耳が2つ、デニムの腰部分に空いた数センチの穴からはふさふさの尻尾。


「…………」


僕は絶句した。


「おかえり、遅かったね」


何故だ。


何故僕の自宅の、僕の部屋に……




コマがいるんだッ!?
















事の発端を話そう。


僕は先程まで、市民公園にて真田とビリビリさんの鍵を探していた(前話参照)。


そして時刻は夕方になり、真田と別れ、僕は帰路についた。


ここまでは普通。


そして、自宅に帰り玄関で靴を脱いだ時、知らないスニーカーを発見。


で、そのままリビングへ行ったら、母親がソファーに座りながらテレビを見ていて、僕をちら見するなり一言。


「アンタにお客さんが来てるわよ。待たせてんのも悪いから、部屋に入れといたからね」


などと言う、何とも僕のプライバシーを無視した発言。


僕は勝手に部屋に人を入れた事に少し苛立ちを感じ、母親を睨みつつ、タイガーでも来てるのかと二階の自室へ。


そして自室のドアを開けてみたら。














「……えへ、お邪魔してます」


「…………え?」


ニコッと笑うコマ。


いつもは巫女装束を着ているコマだが、今日はいかにも最近の若者らしい服装。


カジュアルと言うか、何と言うか……って、そんな事ではなくて。


「……え? な、何でお前がウチにいんのっ!?」


もう僕の頭の中はパニック状態。


「何でって、大事な話があるから」


真顔で言うコマ。


しかし僕はそれどころではない。


「お前耳と尻尾はどうやって……ってかその服……いや違う、そもそも何で僕の家を……」


取り乱し中。


「……アンタ、そうとう混乱してるみたいね」


「あ、当たり前だろ! お前は神獣なんだ、耳尻尾があるんだ! 社会的にバレたらヤバいだろッ!」


「まぁそうだけど、耳は帽子かぶれば大丈夫だし……」


するとコマは足元に転がっていた帽子を指差す。


「それに、尻尾は……ほら」


帽子を拾い、かぶりながらコマはくるっと後ろへ向き、背中をこちらに向けた。

そして尻尾を背中にピタッとくっつけた。


すると、程よく尻尾はチュニックワンピースの裾の中に入り、正面から見た感じだと全く尻尾は見えない。


僕はただただ唖然。


「ね? 普通の人間と変わらないでしょ?」


帽子をかぶり、尻尾を隠したコマはまさに普通の中学生くらいの少女だった。


「ちなみにこの服はね、スピカが買ってくれたの!」


嬉しそうにこちらへ向き直るコマ……って、


「え? スピカ?」


なにそれ?

スピカ……って確か、乙女座の星だっけ?


「ああ、スピカはアタシの友達よ。銀猫神社の神獣!」


いや知らないよ。


「でね、アンタの家はそのスピカのさらに友達から教えてもらったんだ!」


「友達の友達から?」


私の友達の友達はア〇カイダだ……って言った政治家が昔いたような。


「そう! 神獣情報網を甘くみない事ね!」


いやだから知らないよ。




















「……はい、お茶」


「ありがと! で、茶菓子の骨っ子クッキーは?」


「え? ないよ?」


「え〜っ! 使えないなぁ」


「ってか、お茶にクッキーは合わないだろ」


大事な話がある。


そう言ってコマは僕の家を訪ねてきた。


さっきは突然の事に少し取り乱したが、今は何とか落ち着いた。


「……このお茶の味、もしかして伊右衛門?」


「残念、綾鷹」


今僕が台所から持ってきたお茶をコマは一口。


ちなみにもうコマは帽子をとっており、犬耳が丸見え状態。


コマは僕のベッドに腰掛け、僕は勉強机の椅子に座る。


「やっぱりお茶は緑茶に限るわ!」


「コマって案外、嗜好がじじくさいな」


「え?」


「あ、いや、何でもない」


僕はお茶を一口。


「……で、大事な話って何?」


ここで僕は本題を持ち出す。


コマがウチにきた理由。


それは、大事な話があるから。


「ん? ああ、話ね」


するとコマは、視線を足元に。


「えっと……その、これはさっきね、白犬神社に遊びに来たスピカから聞いた話なんだけど」


「ん?」


コマはちょっと顔をひきつらせ、チラッと僕の方を見た。


「いやね、アタシもスピカから話聞くまでは知らなかった事なんだけどね……」


「何だよ」


「えーっと……その……」


いつもハッキリとした物言いのコマとしては珍しく、言葉につまっている様子。


「……お、怒らないで聞いてね」


怒らないで?


「何? お前何か悪さでもしたの?」


もしや……露出プレイに目覚めたとか?(当てずっぽう)


「……いや、悪さでは……あ、ある意味……その……悪さなのかな?」


「いや知らないよ」


「…………」


「……何だよ、早く言えよ」


何かもどかしいな。


その時、コマが切り出した。


「……アンタさ、獣の呪いって知ってる?」


「獣の呪い?」


なにそれ?


「……アタシ達神獣は、人間に見られるとその神通力を失うって事は、アンタ知ってるわよね?」


「あ、ああ。神社にお参りに来た人の願いを叶える力(神通力)だろ?」


「……そう。アタシ達は一応は神様だし、それなりの量の神通力は生まれつき持っているの」


そしてコマはお茶を一口。


……いつにもないシリアスムードが僕の部屋の中を漂う。


「……で、問題」


「問題っ!?」


唐突だなっ!


「その……アタシ達神獣が人間に姿を見られ、神通力を一気に失う。その時、その失った神通力はどこにいくと思う?」


「え?」


失った神通力がどこに行くかって?


……え?


……知らないよ。


「……正解はね」


その時、僕は初めてコマの申し訳なさそうな、悲痛な表情を見た。


「……神通力は獣の呪いに姿を変えて、神獣を見た人間に譲渡される……みたいなの」


「……はい?」


意味分からん。


「本当、アタシもさっきスピカから聞いたばかりで、真実なのかは分からない。けど……」


「けど?」


「…………」


そして、コマはベッドから立ち上がった。


「……簡単に結論を言うね」


「……あ、ああ」


「……アンタは犬神獣のアタシを見て、神通力を奪った。

そしてその神通力は、犬の獣の呪いに姿を変えて、今アンタの体の中にある。

つまりはアンタ、今呪いを受けているの」


「……呪いっスか?」


もう寝ようかな。


全く意味が分からない。


絶対ガリレオも意味が分からないって言うぞこの展開。


「そう、アンタは今犬の獣の呪いに呪われているの。その呪い―――犬の獣の呪いの効力、それは……」


「それは?」






「―――犬はいつでも人間の下、決して人間の上には立てない生き物。

人間の命令には絶対、人間に餌をもらい、人間に飼い慣らされる。

刃向かえば、罰を受ける。

故に犬は人間の上に立てない。絶対に人間の上の存在にはなれない。

すなわち向上心、希望が与えられない。


……犬の獣の呪い。


それは……希望の消失。


すなわち、アンタの夢や希望は今後一切、叶わないって事よ……」


「……はい?」

キャラ設定紹介のコーナー




ファイルNo.6


達知太智(タツチ タチ)


佐薙中学校3年2組、出席番号15番。

身長:150センチ

体重:45キロ

誕生日:10月1日

血液型:AB型


言わずと知れた「18禁書目録」こと、佐薙中エロス四天王の1人。


2次元大好きなネトゲ廃人予備軍。


見た目地味男。




以外、もう達知関係なしの話。




今回、ちょっと新しい言葉が作品内に登場しました。


獣の呪いです。


今回はちょっと神獣や神通力、そして獣の呪いについておさらい&補欠事項を紹介していきます。


まず、神獣。


神獣とは、ぶっちゃけ神様の事です。

この小説内の神様の定義として、神様は獣の姿をした人間型の形状をしています。


それがいわゆるコマやリィゼといった、人間に若干の獣の特徴を盛り込んだ「神獣」と言われるものです。


神獣は神様が住まう(神界)で産まれ、神様界のトップである天照の神から神様として認められた神獣だけが地上に降り、神様として神社に住み、人間の願いを叶えるために頑張るのです。


神獣は各地の神社1つにつき1体が御神体として住み着いているわけですが、たまに兄弟2人で1つの神社の御神体として住んでいる場合なんかもあります。


神獣は生まれつき「神通力」、すなわち神社にお参りに来た人の願い、祈りを叶える力を持っています。


神獣は参拝客の願いを叶え、参拝客は願いを叶えてもらう代わりにお賽銭やお供え物を神社に贈る。


これが現代世界にも通じる、神社と参拝客のあり方です。


しかし、神獣は一回でもその姿を人間に見られると、その神通力のほとんどを失ってしまいます。


神獣は神通力の力により存在しているようなモノなので、自らの存在を保てる程度の神通力は残りますが、参拝客の願いを叶えるような、大きな力は完璧に失います。


そうなった場合、神獣は参拝客の願いを叶える事が出来ず、そして故に参拝しても願いが叶わない神社は評判が下がり、いつしか参拝客0の廃神社と化してしまうのです。


こうなったら最後。


神獣は神獣が住まう世界(神界)に帰る他ありません。


そしてこの神獣は2度と、地上には戻ってこれなくなるのです。






そして、その神獣を見て神通力を奪ってしまった人間には、その神通力が獣の呪いと化して人間の中に譲渡されます。


獣の呪いの効力は神獣により異なります。


例えば、犬の神獣の姿を見て、犬の獣の呪いを受ける事となった場合、作中にもあった「希望消失」の呪いが発動するわけです。


他にも、例えば狐の神獣の姿を見て、狐の獣の呪いを受ける事となった場合は「本音の逆転」の呪いが発動、


像の神獣の姿を見て、像の獣の呪いを受ける事となった場合は「質量倍加」の呪いが発動。


上記のはネタバレにならないように作品内では登場しない獣での例ですが、こんな感じで見た神獣によって呪いの効力は違うのです。


ちょっと作品の核心に触れますが、烏神獣のリィゼを最初に見てしまった直江凪沙にはもちろん、烏の獣の呪いが今掛かっています。

効力は後の作品内で。


そしてその呪いは、人間が死ぬまで続きます。






……少し長くなりましたが、神獣とはこんなモノなのです。


分かって頂けたかな?

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