第十四幕 ビリビリ公園ランデブー
「あっ……ひっ……いたっ……ぅっ!」
「何? まだ興奮しちゃうの?」
「うるさいっ……あっ……きゃっ……」
「……はぁ」
僕はため息をつく。
はぁ……来週は学校行事で体育祭あるんだよな……鬱だ。
―――じゃなくて。
はぁ……僕が今月楽しみにしていたエロほn……じゃなくて、男性の本能を満たす有能かつ最重要的秘密情報の書かれた特別参考書の発売が延期になっちゃって……。
―――コレため息の9割。
何でだよ!
このエロほn……げふんげふん、この参考書のために僕は今月頑張ってきたんだ!
なのに……なのな……くそぉおおおっ!!
で、ため息の原因残りの1割は、
「はぁはぁ……もう、この痛みに慣れつつある自分が怖いわ……」
目の前でぜぇぜぇと息を荒げているこのショタコンさん。
学校では超が付く程の優等生で、容姿端麗頭脳明晰、運動も出来るしリーダーシップもある規律厳しいクラスの代表。
しかし裏では泣き叫ぶ幼い男児の純潔を貪り喰らう、悪魔の化身とも言うべきショタ界の狼。
その名も真田穹音!
うむ、なんと禍々しい響きなんでしょう。
「……あんた今、かなり失礼な事考えてたでしょ?」
「えっ! な、何てぶしつけがましい! 僕は年中ピンク色の事しか考えていないよ!」
「……そう言えばそうね」
「あら納得しちゃった! ……まぁ事実っちゃ事実なんだけど」
黒烏ん所の裸羽さんとの衝撃的邂逅を果たした次の日。
今日は土曜日で学校は休みなので、家で1日中ムフフでもして、下手したら自家発電行きだった僕。
テクノブレイクって怖いよね。
あ、知らない人は知らないままの方がいいよ!
社会的に!
んで、早速ムフフの第一歩としてエロほn……参考書(意地でも参考書で通す)を読もうとした、その時。
「和也ぁ〜、電話よぉ〜!」
「うおっ!」
家の1階、リビングから聞こえたマイマザーの声。
僕は咄嗟に参考書をベッドの下に隠し(え、何故に参考書を隠すかって? ……それは、その……い、犬が大事なモノを土に埋めるのと同じ原理で……)
「携帯じゃなくてわざわざ家電に電話とか……誰だ?」
僕は呼ばれるがままに電話のあるリビングへ。
そして、受話器を耳に当てて……
「はい代わりました」
すると、電話の向こうからせっかくの休日を無駄にするようなフラグを立たせる、最悪な声で最悪なワードが。
「……今から公園行って鍵探すわよ」
「……は?」
「ってかさ真田、何でお前ウチの電話番号知ってたの?」
「何でって、連絡網見れば丸分かりでしょ」
「あーなるほど」
「納得したなら早く鍵探しなさいよ!」
先ほどの電話の声の主、真田穹音に半ば脅しを受け、土曜日の昼間に公園でビリビリさんの鍵を探している僕。
ちなみに休日の公園、辺りには家族連れやら友達同士やらで幼き男児がいっぱい。
「ってかさ、下手したら鍵なんて掃除のおばちゃんなんかが既に捨てちゃっていたりするんじゃ……?」
この公園に鍵を落としてから、もう1週間も経っている訳であって。
今さらじゃもう遅いような……
「うるさいっ! 少しの望みに掛けて鍵を探すの……うあっ」
鍵探し中、またビリビリさんから電流が流れたらしい真田。
もうなんか不憫だ。
「うぅ……あっ……くぁっ……」
「……頑張れ真田」
不思議と慈愛の感情が沸いてきた。
なんかもう……頑張れ。
そんな事を思いながら、ふと空に向かい顔を上げた。
―――今日は快晴だな。
まるで、真田の心みたいに……(穹音だけに)
ってな感じでのほほんとしていたら、
「……ん?」
青い空。
雲1つない青い空。
その空に、1つの黒い点がポツンと現れた。
……何だ?
何か目の錯覚?
疲れからくる幻覚?
とにかく、空に黒い点が1つ。
―――初めは針の穴程の小さな黒い点だったそれ。
しかし、1秒、また1秒と経つごとにどんどん大きくなってくる。
ってか、なんかこっちに迫ってきてね?
凄い勢いで黒い点がこっちに迫ってきてね?
空から何かが降って来てる。
そして……
「…………」
僕は気付いた。
空から降って来てる黒い点の正体に気付いた。
ああ、確かに黒い。
凄い勢いでこっちに来てらぁ。
未確認飛行墜落中物体には黒い翼が生えてて、
前とは違う、白のキャミソールを着てて、
無造作ショートの黒髪、愛くるしい女の子の顔。
空から降って来た未確認飛行墜落中物体―――翼の生えた少女は、もう僕の上空僅か数メートルの所にまで着ていた。
「なっ……お、お前リィ」
チュドーンっ!!
墜落。
「痛いっ……いやっ……あっ……」
真田はまだビリビリさんの餌食になっている模様。
目をぎゅっと閉じて、めっちゃくねくねしてる。
なんかエロいな。
……そしてその真田から右に5メートルの所。
「ぐはっ……」
猛スピードで空から墜落してきた黒羽の少女。
それを身体で受け止めた僕。
……衝撃の勢いはハンパなく、事実僕は衝撃に耐えきれずに地面にぶっ倒れ、背中強打。
頑張って頭だけは守りました。
そして黒羽の少女は、倒れた俺の上にまたがり馬乗り状態。
「ちょ……なっ……おまっ……くはっ」
衝撃と痛みのダブルアタック。
僕はもう生きた屍状態。
「……ケダモノ?」
一方の墜落黒羽少女―――リィゼは、小首を傾げて一言。
「ノーケダモノ……僕ピンク紳士……ガクッ」
儚い人生であった……
「……ピンク紳士?」
おうむ返しの如く、僕の顔見て指差すリィゼ。
その瞳は、無垢。
「イエス……イエェェェッス……」
僕は親指を立て、歯をキラリんッ!
「ピンク紳士っ!」
リィゼは僕を見てにこり。
……か、可愛いっ!
って、違う違う!
「でリィゼ、悪いけど僕の上からどいてはくれないだろうか?」
「あ、うん」
僕の願いに素直に答え、リィゼは僕の上からどいた。
ふぅ……背中痛い。
けど僕も起き上がる。
「大丈夫?」
リィゼの透き通るような透明紫紅色の瞳が、僕の顔を覗きこむ。
「あ、大丈夫大丈夫……はっ!!」
背中をさすりながら起き上がる僕は気付いた。
ここ、公園。
周り、人いっぱい。
リィゼの背中、黒翼。
……視線がっ!!
「ちょ、リィゼ背中の翼隠せっ!」
「ん?」
「ん? じゃなくて、翼だ翼っ!」
僕は咄嗟にリィゼの手を引き、公園の端へ。
一方の真田は
「まだっ……電流がっ……あっ……」
……御愁傷様。
キャラ設定のコーナー
ファイルNo.3
真田穹音
佐薙中学校3年3組、出席番号10番。
身長:155センチ
体重:44キロ
誕生日:8月12日
血液型:AB型
メインヒロインのコマを差し置いて出番の多いクラス委員長さん。
表は真面目、裏は変態というギャップキャラです。
ちなみに好みは可愛い系小学生男子。
先に言っておきますが、作者はショタコンではありません。
ショタコンの気持ち分かりません。
興味すらありません。
ただ、変態ではあります。
この後はどうでもいい細かい設定集。
真田家は父親が大手製薬会社の部長、母親は茶道教室の講師を勤めている、共働き一家。
兄弟は大学生の姉が1人。
ちなみに家族の誰もが穹音の性癖の事を知りません。
初期設定では喜怒哀楽の激しい天真爛漫少女になる予定でした。
実際、作内では感情豊かな真面目少女としてキャラ立っていますね。
ただ、喜怒哀楽でいう怒の部分が少し多めになってます。
最近になって穹音は書いててキャラ薄いなぁ〜と感じ始めていたり。
確かに真面目キャラとしてキャラ立ちしていますが、周りに変態市沢や変態タイガー、出番がない事がキャラとして定着しつつあるコマと、キャラが濃いヤツばっかりいて、なんかね……。
しかも、最近登場したリィゼ、友達の直江と姉小路、筋肉バカ大内も今後そこそこの設定があるので、より一層穹音のポジションが……。
何とかして穹音にも活躍してもらわないと!
第2のコマになってしまうよ!
……どうしよう。
ってな感じで、私神は毎回超行き当たりばったりで書いています。
なので、生暖かな目で見守ってくれたら嬉しいです!