第十三幕 犬と烏の友達関係
「う、うぉおおおぉぉ……?」
「へっ?」
あの公園での一件から少し時間が経った後。
正直家に帰って早速ムフフをしたかったのだが、まぁ、一応公園での出来事(黒烏神社の事)をぺちゃぱいさんに報告するため、白犬神社に来ていた僕。
そしたら。
「……あぁ、やっぱりコマはコマだ。リィゼより平清盛だ」
「あ、あああ……っ!?」
神社の端、茂みの中にコマさんはいた訳で。
何故かその……言葉を濁す事なく言うのであれば、全裸だった訳で。
艶のある若い健康的な色の肌。
すらりと伸びた細い手足。
なめらかな曲線を描く背中のライン。
そして、
リィゼに劣るバスト
リィゼに劣るヒップ
リィゼに劣るウエスト
……うん、残念。
ってか、
「……何? もしかして今、神獣の間では素っ裸がブームなの?」
「……死ねッ!!」
次の瞬間、僕の身体は宙を舞う事になった。
「つ、つまり、この時期は私達神獣の長である聖獣様が地上に降りてくる訳であってねっ!」
「はいはい」
「だっ、だからそのっ、聖獣様に会う前に身体を清めようと、禊ぎを行おうとしていた訳で……」
「はいはい」
「け、決してそんなあんたみたいな変態行動を起こしていた訳じゃなくて……って、あんた聞いてんのっ!?」
「はいはい聞いてます」
はぁ……とうとうコマが露出狂になってしまったとは……(泣)
昔はあんな無垢で健気な女の子だったのに……(泣)
もう、おじいちゃん悲しいよっ!
……ってな茶番は置いといて。
時刻は夕方6時半。
現在白犬神社ではお犬様が真っ赤な顔して何かを語り出しております。
お犬様のお話によりますと、お犬様の神様的上司に当たる方が近々地上に降りてくるとのことで(神様にも上司部下ってあるの!?)
上司に会う前に身体を清めようと、神社裏の井戸水で禊ぎをしようとしていたお犬様。
そこをわたくし、変態の使いが目撃してしまった訳でございまして。
「もう最悪……二度ともコイツに醜態さらしちゃった……ああ……」
僕が宙を舞っている間に(グーを顎に入れるのはよくない)コマはとっとと着替え、頭を抱えひたすらに唸っていた。
「ま、まぁ……ドンマイ」
「死ねッ!」
ドカッ
「黒烏神社!?」
「ああ。ついさっき、そこの神獣さんに出会ってね」
あれから何とかコマの機嫌を回復させ。
僕は本題でもある黒烏神社の事について話を始めていた。
「なんかさ、黒烏神社の神獣……リィゼ、人間と一緒にいたんだよね」
「人間っ!?」
なんかかなりオーバー気味に驚くコマ。
「そう。まぁその人間って言ってもウチの学校の顔見知りでさ、口数少ないクールガールなんだけど、ぼでぃの方がどっかのお犬様くらいに残念で……」
「人間……リィゼが人間と……まさか……」
僕にとってはお犬様の件でツッコミをいれないコマの方こそがまさかだよ。
じゃなくて、
「……ってことはクロウ君も? まさか……」
何やら1人でぶつぶつ呟くコマさん。
あれ?
何か僕孤立してる?
「あ、あのー……コマさん?」
「クロウ君が人間に見られて、神力無くしていたら……ぶつぶつ」
「おーい、聞いてる? 自分の世界に入ってないかい?」
「でも、リィゼは人間と一緒……もしかして、リィゼ達も……ぶつぶつ」
「おーい、おーい……おーい…………」
「そしたら……黒烏神社も……きっと……ぶつぶつ」
「…………」
「と、とりあえず今度白虎様が来たら1回聞かないと……ぶつぶつ」
「……話聞けよこのぺちゃぱい(ボソッ)」
ドカッ
「ぐはっ……」
コヤツ……侮れん。
「……ってかコマ、お前黒烏の神獣と知り合いなのか?」
普通に疑問。
「知り合いもなにも、リィゼとは親友だし、く、クロウ君は……その……」
何かくねくねしだしたコマ。
真っ赤になって。
……なんか大人のおもちゃみたい。
「……そもそも僕、リィゼには会ったけど、もう1人の方には会った事無いんだよね」
クロウだっけ?
まぁ直江に聞きゃ分かるかもだけど……
「……えっと、クロウ君はリィゼのお兄さんで、リィゼは妹……まぁリィゼ達は神獣の中では珍しい、兄妹の関係なの」
「へぇ……神獣にも兄妹とかあるのか……」
ロマンだね。
何が?
いや、妹と言う響きが。
「神獣で兄弟がいるなんて、本当に稀よ。その場合は兄弟で1つの神社の主となるのよ」
どこからか眼鏡を取りだし、インテリ気取りで説明を始めるコマ。
うわ眼鏡似合わねぇ。
「……とにかく、最近はリィゼともクロウ君とも会っていなかったし……今度会いにでも行ってみようかなぁ」
「…………」
神獣にも友達とか兄弟とかがある。
何か、人間みたいだ……
他人に対して絆の感情を持てる生き物というのは、人間しかいないって前にテレビで言ってたな……
怒りや嫉妬、性欲なんかは人間じゃなくても持てる。
しかし、絆だけは人間のみ。
たまには真面目な事も言う桃色紳士、市沢和也です。
キャラクター設定紹介
ファイルNo.2
コマ
白犬神社神獣
身長:147センチ
体重:40キロ
誕生日:12月31日
血液型:不明(神獣だし)
恐ろしい程メインの出番が少ない狛犬メインヒロイン、コマ。
コンセプトは素直な元気いっぱい娘。
好きな食べ物はクッキー、嫌いな食べ物はドッグフード(プライド的な理由で)
地味な話、序盤での一人称は「私」ですが、最近だと一人称は「アタシ」。
これはただ単に作者のミスです。
ここからは多分今後本編ではあまり説明しないであろう細かい設定(つまりはどうでもいい設定)を紹介。
白犬神社は市沢君達の住む町の外れにある、山の麓に建っています。
境内前には段差のある階段があったり、ベンチは石製でいつも冷たいし、とにかく不便な神社。
白犬神社のご利益は「厄除け」。
江戸前期に建てられた白犬神社。
当時狛犬の石像を作る時、間違って白い石で石像を作ってしまい、そこから白犬神社と名がつけられた。
神社は木製の小さな社が1つに鳥居、境内には古いトイレと水道がある。
神社入口には街灯もあり、神社裏には井戸も。
神社の周りは山、つまりは木しかない。
いつもは夕方頃にちびっ子達が遊ぶ場所として活用していたり、たまに近所の老人達が散歩がてら参拝にくる。
コマはこんな神社で暮らしているのです。
ちなみに神主さんはいるはいるんですが、たまに掃除に来る程度。
お賽銭とかは神社の修復費や維持費などの必要最低限のみ回収し、後は基本放置。
薄々ですが、神主さんもコマ(神獣)の存在を感じているらしく、コマのために余ったお賽銭等を放置したり、たまに自らお供え物として食べ物等を持って来て、置いておく事がある。
優しい神主さんですね。
コマは意外と快適な暮らしをしているのです。