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第十一幕 翼の出会い

「はい、では以上でクラス委員会の集会を終わりにします」


佐薙中学校、会議室。


今、この会議室から出てきたのは、各学年各クラスのクラス委員の生徒達。


そう、今まで会議室ではクラス委員会の集会が行われていたのだ。




「あ、穹音ちゃん!」


「ん?」


3年のクラス委員である真田穹音は集会に出席し、集会が終わった今まさに会議室を出ようとしていた。


そこへ、とある女子が話掛ける。


「……あ、友姫に凪沙っ!」


真田穹音に声を掛けた女子。


それは姉小路 友姫と直江 凪沙。

穹音の友達で、他クラスのクラス委員だ。


「穹音ちゃん、これからすぐ下校?」


ウェーブのかかった色素の薄い茶色の髪。

身長が平均的な穹音に比べて若干の低身長。

そして……キセキと言っても過言ではないスタイルの良さ。


おっとり系女子の姉小路友姫。


「まあね、今日はもう帰るけど?」


「そうなんだ〜、じゃあ途中まで一緒に帰らない?」


友姫はニッコリ笑顔で穹音を誘う。


「……そうね、じゃあ一緒に帰ろうか」


穹音は誘いを受け、共に帰る事を了承。


「…………」


そして、穹音と友姫の間で黙っているのは凪沙。


身長は穹音と友姫の中間くらい。

長い黒髪を後ろでポニーテールで纏めている。

そして……友姫とは真逆、残念としか言い様のないボディ。



無口なクール系女子の直江凪沙。


「じゃあ、帰りましょ!」


穹音は友姫と凪沙と共に、校舎の昇降口へと向かって行った。













「ソプラノリコーダーはレモン味、アルトリコーダーはイチゴ味。もちろん女の子のリコーダーに限る話だけど」


リコーダー ペロペロしたいな ホトトギス


こんにちは、市沢和也です。

もう一句。


ソプラノと アルトを舐めたよ 最上川


……あ、実際には舐めてないからね?

舐めたいけど舐めてないよ?

いや本当だよ!?

あ、通報しないで!




……話は代わり、今僕は学校の体育倉庫にいる。


ちなみに体育倉庫に女の子を連れ込んでマットの上に倒して「あ〜んにゃんにゃんっ!」している訳ではなくて。


いや、したいけどさ実際。


今僕は……


「そっち綱引きの綱あるか?」


「ありますね……あ、ちょっと端が傷んでますが」


「すみません、障害物リレーのハードル、ネジが少し緩いんでドライバー下さい」


「二人三脚の紐がねぇんだけどさ、どっかにあるか?」




……今僕は体育倉庫で、来週実施される体育祭の備品チェックをしていた。


他クラスの体育委員の奴らと。


「……はぁ」


ムフフがしたい……






元はと言えば昨日、僕が眞中に対してブルマツイストを掛けてしまったのが原因。


あれで眞中は生来の記憶を失ってしまい、今まさに人間としての分岐点に差し掛かっているのだ。


つまり今、眞中学校休み中。


眞中、ウチのクラスの体育委員だった。


ってな訳で。




「つまんねぇ〜」


僕は眞中の代わりに体育委員として、体育祭の備品チェックをしているのだ。


「やべぇよ、これはハンパなく暇だよ」


体育委員ってのは基本男子ばっかり。


もうお分かりよね?


フラグ立たない。


「華がねぇ……」


僕は体育倉庫内の跳び箱に腰掛け、頬杖つきながら愚痴る。


これは本当に拷問だ。






「……おい市沢、ぼさっとしてないで手伝え」


「あ?」


僕があまりに暇過ぎて女子のリコーダーの事を考えていた時、真面目にも僕に注意してきた男子が1人。


「……何だ大内か」


こいつは隣のクラスの体育委員大内 祥弘。

基本真面目な体育会系人間。


「何だではない! お前も働け市沢っ!」


硬いなぁ。


「だよな大内、ニートは働けよなっ!」


「そうだ、働け働けっ!」


「働けニート」


「働けニ……じゃないッ! お前が働け市沢っ!」


「すまない大内、今僕はリコーダーシンドパットだから働けないんだ」


「ふざけた事をぬかしている暇があったら働けっ!」


全く……大内にはムフフネタが通じない。


これだから堅物は。



















そしてしばらくして。


「くぁっ……やっと終わった……」


2時間も掛かった備品チェックが終了。

空はうっすら暗い。


ちなみに、2時間のウチ1時間42分58秒はムフフなんてのを考えていてろくに仕事なんかしてなかったけど。


「お疲れ様です。後は体育祭前日に集まりがあるので、またその時に」


体育委員長の挨拶と共に体育委員のみんなはぐだぁっと気を抜き、友達と談笑タイムに。


みんな疲れた表情してんなぁ。


まぁ僕はこれからダッシュで家に帰って、ムフフビデオ鑑賞タイムに突入さ。


まだ見ぬ女の子が僕を待っている!


「おい市沢、お前あのあと働いたのか?」


と、そこで大内登場。


うわなんというタイミングで……


「働けニートは働かないのがステータスらしいよ? 全く、働かないとは働く人にとって働かざるばかりの働く人間働きざかりな僕なのでした」


と僕は一言それらしい言葉を言って退散スタイルスタンバイ。


「は、働かない? 働けニート?」


……大内はバカだ。

とにかくバカだ。

バカボンからボンを取ったくらいバカだ。


だから、こういう微妙なさじ加減の言葉にめっぽう弱い。


まぁ僕自身、今何言ったのか分かってないけどね。


「とにかくそういう事だから。アディオス大内少年」


僕は混乱する大内を尻目にいそいそと帰路についた。






……しかし。


「早く帰らないと大内が我に返ってしまう!」


僕は走りながら家路についていた。


空はうっすら暗く、街灯がポツポツと輝きだす。


僕はそんな中、走っていた。


「……よし、近道でもするか」


家路の途中。


そこには、あの公園がある。


真田穹音の右腕にいまだ存在するビリビリさんの、鍵を無くした場所。


この公園を突っ切る事で、家までだいぶ近道になるのだ。


「……よしっ!」


僕は咄嗟に判断。


女の子ビデオの女の子みたいに大胆に公園へ侵入。


比喩がおかしいし公園だから侵入自由だしとかの意見は受け付けません。


そして……公園内を突っ切り、公園中央の噴水エリアに差し掛かる。


ここを抜けたらすぐ自宅だ。


僕は余裕を持ち出す。


ここまで来たらもう僕の勝ちだ。


ざまぁ大内。


僕は内面ニヤニヤしながら噴水の横を走り抜けた。


その時……








ドンッ!




「うわっ!」


「あっ……」


余裕ぶっこいてたら前方不注意で人とぶつかった。


僕は体勢を崩しつつも、咄嗟に前を確認しようとしたが……


「……うわっ」


バタッ!


僕は地面に倒れた。

いや、正確には転んだ。


衝突の衝撃はなかなかだった。


思わず背中を地面に強打。


そしてぶつかった相手も……


「うっ」


ぶつかった衝撃でどしっと尻もちをついていた。


これはいけない。


「いつつ……おい、お前大丈夫か……」


僕は倒れて地面に打ち付けた背中を擦りつつ起き上がり、相手に手を差し出す。


しかし……


「……え?」


……僕は固まった。

あ、体がだよ?


一方の相手も……


「……あ」


固まった。




ぶつかった相手は女の子だった。


見た目中学生くらい?


黒髪の無造作ヘアスタイル。

活発そうな娘だ。




しかし、いやしかし。


彼女は……


「うっ!」


惜しげもなくストレートに言うならば、彼女は全裸だった。


健康的に焼けた肌にははりがあり、まさに若い娘の肌だ。


そして僅かに膨らみのある、女の子の象徴。

手のひらサイズ?


僕は思わず見いってしまった。


……何に?


彼女の裸に?


うん、それには5割。


え?

残りの5割の僕の視線?


それは……彼女の背中にあった。


バサリ


「きゃっ!」


彼女は顔を赤らめ、咄嗟に両腕で前を隠す。


しかし、僕の視線は彼女の背中。




……なんで?


なんで、彼女の背中から……




……黒い羽が生えてるの?

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