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第一幕 白犬神社のぺちゃぱい神様

こんにちは!!

作者の五円玉です!!




今回は以前短編で掲載した「私の神社へいらっしゃい!」の連載バージョンです!


で、第1話の今回はその短編をまるまる掲載!


2話以降からが短編の続きとなる新ストーリーとなります!




なので、短編の方を見たことのある方は1話をすっとばしても大丈夫!


短編未読の方は1話からどうぞ!

“ポロリ”と言う言葉がこの世にはある。


ポロリ……何とも響きのよいその言葉、それは我ら青春男子憧れのシチュエーションである。


世の中の青春男子達よ、是非想像して欲しい!




ある夏の海!!


君は友達と海水浴に来ていると思え!


その友達の中には、君の気になるあの子も含まれているぞ!


気になるあの子はもちろん紐ビキニ!


暑い太陽の下、気になるあの子と海で水の掛け合いっこ……くぅ!!


やべ、これ熱中症になるわ。


そしてある時、突然大きな波が来て……


ざっぷーん!


きゃー私の水着流された見ないでー……となる!!


男なら、見てみぬフリしてこっそり観賞するのがセオリーだ!!


そして……


きゃー〇〇君のえっちすけっちわんたっち……となり、お互いに笑いあい、そして二人きりで旅館に……


ムフフッ!!










「……っていう夢見てたら見事に朝寝坊したので、学校に遅刻しました」


「……ほほぅ」


現実と空想の狭間、はたしてそれはどこに……




僕の名前は市沢 和也。


今年で立派な15歳、現在中学3年だ。


好きなモノはムフフ、嫌いなモノは獅子唐という、至って健全な中学生と思ってほしい。


現在僕は、素晴らしすぎるロマンチックな夢をみたせいで、盛大に寝坊。


見事に学校に遅刻したのである。




「市沢……お前教師に喧嘩売ってんのか?」


現在校門前。

そこにいたのは、生活指導教師の中津。


その曇り1つないスキンヘッドに、黒いサングラス。

オマケに平成の夏目漱石を見せつけられているような、見事な髭。


ドン・ブラコもビックリだぜ!


だからコイツ、影では「やっちゃん」なんて噂が立っているのは、内緒だからね?


「いや、だから本当に旅館に行きまして、いやー恥ずかしい電気消してー……な夢を見てまして」


やっちゃんに嘘は効かない。

現にそれは「脱衣麻雀界のタイガーマスク」と自称している僕の友達が寝坊で遅刻したときに、


「すんません、今朝道中で車にひかれ、死にかけのメイドさんをおぶって病院まで行ってたので遅刻しました。感触的にあれはCです」


などという嘘兼妄想に対し、


「そうか、とりあえず先生と一緒に病院へ行こう。それとも児童福祉センターか?」


と言う言葉と共に脱衣麻雀界のタイガーマスクを瞬殺したのだ。


結局、脱衣麻雀界のタイガーマスクは児童福祉センターではなく、職員室に引きづり込まれ、1時間のお説教を喰らったと言う。


彼曰く、


「やっちゃんじゃなくてさ、美人でボインで色気ムンムンの女性教師だったら、もう1時間説教受けてもいいのになー」


とか言っていた。


まぁ、後に彼の後ろでそれを聞いていたやっちゃんが、


「そうかそうか、てめぇ反省してねぇな?」


と、半ば彼を拉致し、再び職員室でお説教1時間をしたと言う。






話がそれたな。


現在僕はその脱衣麻雀界のタイガーマスクの二の舞にならぬよう、本当の事を言って、許しを乞う作戦に出ているのだ。


……しかし、現実はそんなに甘くはなく、厳しいものだ。


「……市沢、お前放課後職員室に来い」


と、案の定すんなり通してくれたやっちゃん。


しかし、裏を返せば


『放課後ってのは授業終わりだ。これなら、長い間お説教が出来るな!』


という意味にもなり、つまりは今日、この学校でリアルジャック・バウアーごっこが展開されるというフラグにもなるのだ。


絶対逃げ切ってやる。



お説教は獅子唐の次に嫌いだ。


……まぁ、お説教の相手が美人な女性教師なら……って、それだと脱衣麻雀界のタイガーマスクと同じだな。










「市沢ってさ、まさに煩悩が服着て歩いているようなモノだよなー」


と、最近友達にこのように言われる。


「歩く18禁」


って言ってくるヤツもいる。


「出た、エロチックバイオレンス!」


って、女子からは白い目を頂戴していたりもする。




僕はそう言われるたびに、いつも反論するのだ。


「思春期男子がピンク色想像して何が悪いッ!!」




羞恥心0男、変態、ある意味神様……等々、あだ名は多数。


しかし、これはマジだ。


世の中の思春期と呼ばれる男達は皆、紳士の皮をかぶった妖怪「真夜中布団の中でムフフ星人」なのだ。


絶対そうだ!!


夜な夜な布団に潜り、昼間の理性の皮をぶち破り、本能赴くままの獣へと変貌を遂げるのだ!


何が万年発情期な市沢だ!


貴様らも心の中では万年発情期だろうが!!




ビバ・青春!!










しかしながら、最近つくづく思う。


煩悩まみれもいいのだが、やっぱりたまに邪魔になる時もあるなぁ〜っと。




この前、学校のテスト期間の時。


赤点を取りたくなかった僕は、そのテスト期間中だけムフフを封印し、机に向かった事がある。


あの時は必死だった。




……しかし、僕の意思とは無関係に、本能は俺の体の中で暴れ回る。


特に下半身。




もうね、勉強開始して僅か1時間たらずで僕の理性崩壊。


ネットサーフィンを開始。


僕は男になった……









今年中学3年、もう高校受験は近い。


なのに、常日頃から空から裸の女の子降って来ねぇかなぁ……などと淡い期待に胸を馳せているこの現状では、非常にマズイ!!


テスト勉強をしてても、僕の頭の中はいつもピンク色に染まりきっている。




さすがに、これではマズイ!!


とりあえず高校には行かないと!


ムフフも大事だけど、


高校受験もっと大事!





ってな訳で


「どうか僕のムフフを自分で制御出来るような、鋼の精神を僕にください……」


近所の神社。


僕は賽銭箱に10円玉を入れて、両手をパンパン。


そう、神頼み。


ちなみに僕は今、汗まみれだ。


あ、決してホテルからの帰りとかではなく。


さっきまでやっちゃんとリアルジャック・バウアーごっこやってたから……。


まぁ、見事僕は学校から逃亡に成功し、今ここに至る。


「どうか神様、僕に鋼の精神を…………あと、めっちゃ可愛い幼なじみと、年上のセクシーなお姉さんと、語尾ににゃんを付けるボインなメイドさんと……」



……煩悩は尽きない。


「あと、モデルの友達と美人教師と、笑顔チャーミングなプリティおにゃの子と……」










あれこれ、50近くはお祈りしただろうか?


そのうち49個は僕の願望でもある。


叶うといいなぁ。


「……でもまぁ」


さすがに気前のいい神様でも、10円で50個の願いを叶えるなんて、きっと割りに会わないだろう。


少なくとも、僕ならそう思う。


10円じゃ僕の愛読本「お姉さんといっしょ」すら買えないし。


あれ、結構いい情報乗ってんだよね。


「仕方ない……お供えモノでも置いてくか」




僕はプリントでごしゃごしゃになったカバンの中をあさり、あるモノを取り出す。


「じゃーん! カルシウムたっぷり骨っ子クッキー!!」


説明しよう


カルシウムたっぷり骨っ子クッキーとは、見た目骨形の美味しいクッキーである。


カルシウムたっぷり=精力付くと判断した僕が毎日常備している、いわゆるオヤツだ!


「これなら神様も第2ラウンドへっちゃらだぜッ!!」


僕はクッキーを袋ごと賽銭箱の前に置き、神社を去る。


フッフッフ、これで僕の願いも叶った同然!


「へッへッへ、きっと明日の天気は晴れのち女の子だウヒョヒョヒョ!!」


そしたらどうしよう!?


傘じゃなくて、布団を座して歩かなくちゃいけないな!


「まさにパラダイスや!!」


そんな事を思って、神社の鳥居を抜けようとした、


その時…




「わーっ! カルシウムたっぷり骨っ子クッキーだぁ!!」





賽銭箱の方から聞こえる、小さな子供のような声。


……賽銭箱? 子供の声?


そう考えている間にも、賽銭箱の方からは


「うわぁ……まるまる一袋もっ!!」


……僕は瞬時に理解した。


そう……きっと近所のガキが、神様の夜の栄養源を奪い取ろうとしているのだ……と!!


これは由々しき事態!


そのクッキー無いと、神様が女の子を降らせてくれない!


明日晴れのち女の子にならない!!


神様第1ラウンドで力尽きちゃう!!


「全く……」


僕は仕方なく回れ右をして、再び賽銭箱の前へ。




そこには、思った通りに子供が……って、


「あれ?」


そこにいたのは、僕と同じくらいの年齢をした、女の子だった。


巫女装束を身に纏い(うわ本物初めて見た)、その腰部分からはふわふわな尻尾が顔を覗かせている。


……ん? 尻尾?


そしてその頭には、これまた柔らかそうな、いわゆる犬耳が2つ…


……ん? 犬耳?


もしかして……


「コスプレ?」


一方の女の子の方はクッキーの袋を手に取り……


ビリビリッ!!


開封しやがった。


「あ、こらお前ッ!!」


僕はちょっと怒りながら彼女に接近。


だが相手は奇跡のコスプレ女の子。


ここは慎重に行動し、なんとかフラグを……


「んあ?」


神様の夜の栄養源を食べながら、彼女はこちらへと振り返った。




赤に近い茶色のショートな髪。

その大きな瞳も、髪と同じ色をしている。


……カラーコンタクトか?


そして可愛らしい顔立ち。

多分年齢は僕と同じくらいではないか?


身長はちょっと小ぶり。

巫女装束から見えるその腕は細く、無駄肉の影もない。


……ぶっちゃけ、マジ可愛いわ!




ただ……その犬耳犬尻尾は一体?


そして……服の上から推測するに、残念ながら彼女はぺちゃぱいだ。


形すら無いに等しい。


「あ〜あ……惜しいな……」


ついつい小声だが呟いてしまう。


一方の彼女は……


「…………み、見られたッ!!」


何かフリーズしつつも、めちゃくちゃ焦っていた。


え?


「うそ……やばっ、に、逃げないとっ!!」


何故か急にフリーズが解け、あさっての方角に走り出そうとしている女の子。


彼女の声、意外といいな……じゃなくて。


「あ、ちょっと……」


その……神様の夜の……その……


ってか、次の瞬時


「うわっ!!」



ズデーンっ!!


何もない石畳の境内で、彼女は顔面からすっ転んだ。


派手に。


大きな鈍い音と共に。


そして、その手に持っていた神様の夜以下略がキレイに辺り一面に散らばった。


「……お、おい。大丈夫か?」


さすがにあれは痛いぞ?


女の子、地面に倒れたままピクリとも動かない。


「お、おい……」


本当に大丈夫か?


「うぅ……う……ぅ……」


コスプレ少女、体をプルプル震わせながら身体を起こす。


うわっ……すげぇ鼻血でてる……。


「うぅ……ふぅっ……ふっ……」


顔は真っ赤。

そして涙目。


「……あのさ、ティッシュあるけど……使う?」



せめてもの慈悲。

僕は制服のポケットからティッシュを取りだし、差し出す。


「うぅ……」


彼女は半分泣きながら、ティッシュを受け取った。










「……ふぅ」


「良かった……鼻血止まったみたいだね」


あれから10分。


僕とコスプレ少女は神社の境内にある、石制のベンチに腰かけていた。


いやーお尻冷たい。


非常にゾクゾクする。

冷える意味で。


「……その……あ、ありがとうござい……ます」


両鼻に鼻せん詰めたコスプレ少女は、僕に余ったティッシュを返してきた。


「いや、どういたしまして……」


僕はティッシュを受け取りながら、彼女の頭を凝視。


……あの犬耳、カチューシャタイプのモノじゃないのかな?


やけにリアルにくっついてるし。



そしてたまーに、ピクピク動いているし。


……ど、どこまでリアル設計なんだアレ?


そして尻尾も……何と言うか……こう、ピクンピクンって……。




「……あなた、私を見ましたね?」




……え?


今まで頭の犬耳を凝視していた僕の耳に、半分鼻声の彼女の声が入ってきた。


……え?

今何つった?


「え……何? ど、どゆ事?」


必殺疑問返し!!


僕はそぉっと彼女の表情を伺う。


そこには……鼻せんをした少女が、無表情で足元の石畳を眺めていた。


「……だからさ、あなた今、私を見てるわよね?」


どんな質問だ。


……いや待てよ僕。


確か少し前に、こんなシチュエーションと似た感じの場面を、ギャルゲーでプレイした覚えが!


あの時は確か……


僕が本命の子以外との会話イベントをいくつか起こし、後に本命の子から、


『他の女の子ばかり見てないで、私だけを見てよ……。 ねぇ和也くん、私の事、見てるよ……ね?』


的な!!




まさかこのシチュエーション、独占欲の強い子がみせる、焼きもちパターンなのではッ!?




……いや、さすがにそれは無いか。


焼きもちも何も、このコスプレ少女と出会ってから、まだ30分も経ってないんだし。




……じゃあ、なんでこんな質問をするんだ?


「……見てるよね?」


彼女の視線は相変わらず、足元の石畳。


……まぁ、彼女の本意とかは知らないけど、


「まぁ……僕の視界の中には……いますね」


曖昧な僕〜!!




その時……


「じゃあ……これで私の神力は……無くなっちゃったわけか……」


突然彼女は泣き出しそうな表情をしだした。


……え?


……は?


……何?


「もう……この神社はおしまいよ……」


って、その大きな瞳から涙を流すコスプレ少女。


……ちょっと待てよ!


これじゃあ何か、僕が泣かしたみたいになってない?


え、ちょっと待てよぉ!!


「あ……え……ちょ、キミ! そんな泣かないで!!」


とにかく慰めなければ!!


周りから見られたら、どんな画なんだろう。


コスプレした女の子が泣いていて、それを必死にあやす僕。


なんか襲ってるみたいだね。


ノーストップポリスメン!!


「うぅ……もう……おしまいなのよ……」


「ノーおしまい! ちょ、泣かないで! 大丈夫、僕は確かに煩悩が服着て歩いているようなモノだけど、そんな町行く人を片っ端から襲うような変態じゃないよ!」


「うわあぁぁぁん」


より一層泣き出した。


「だぁー!! だから泣かないで!! 大丈夫、僕は貧乳よりもボイン派な人間だから! あー違う、だからと言って貧乳には貧乳なりの良い所も……」


……僕は何を言っているんだ?

これじゃあ本当に襲ってるみたいじゃないか。


と、とにかく……


「お、お願いだからとにかく泣き止んでくれ……」


僕は深夜ポロリ番組を見るとき以上の、めちゃくちゃ爽やかな笑みで対応。


アハッ、爽やか前歯も見せて、イッツァジェントルマン的な?


そしたら……


ドカッ!


「へぶしっ!!」


グーが飛んできた。

何故だ。

そして前歯いてぇ!


顔面にグーです。


「ひっく……も、もとはあなたのせい……ひっく……」


コスプレ少女はまだ半分泣いていた。


の割には……凄い勢いのパンチですこと。










まぁみんな、まずは黙って聞いて欲しい。


……僕は今、彼女いないんだ。

まぁ、画面の中には山ほど……いやいや、そんな話ではなくて。




「私は……神力狛犬のコマ。 この「白犬神社」の神獣よ」




……さぁ読者のみんなに質問タイーム!!


さっき僕を殴ったコスプレ少女が言ったのが、上記のような言葉です。


はい、意味の分かる人は挙手!!




はい回答者なぁし!!




「聞いても信じないでしょうけど、私は神様なのよ!!」


へーやけにぺちゃぱいな神様ダナー


「ちょ、あなたどこ見てんのよッ!!」


あー後ろ向いた。


……はぁ。




現在僕は、まださっきのゾクゾクする(冷える意味で)ベンチに自称神様のコスプレ少女と腰掛けていた。


そう、進展なし。


そしてコスプレ少女が泣き止んだと思ったら、突然の意味不明発言。


まさかの電波さん?

残念だ、僕はまだ電波さんが登場するギャルゲーは未経験。


「やっぱり、信じないよね……」


彼女の顔は、どこか寂しげだった。


……微妙な空気。


「……と、とりあえずつ、続きを話してよ? そこまで言ったら気になるし!」


神様なんて信じない。

バカなの?

電波なの?


ってか神獣とか神力って何?


厨2なのアナタ?




……でもまぁ、今はその話題だけが空気を和ましてくれそうな気がして。


だから僕は、彼女―――確かコマだっけ?

に、話の続きを求めた。


「でもどうせ信じないんでしょ?」


「いや、信じる信じない以前に、まず話を聞かないと分からないよ!」


一応正論だろ?


「ん……まぁ、それはそうね」


そしてコマは、半ば夢物語のような話をし初めたんだ。










この世の中、日本という国には数多くの神社が存在する。


神社には神様が住んでいて、人間達はその神様から恵みをもらい、生活しているのだ。


そして人間は恵みのお礼に、お賽銭やお供え物などを神様に与え、共存しているのだ。




そして、その神様はどうやら獣の形をしているらしい。


〇〇神社の神様は牛の形をした神様だ、××神社の神様は狐の形をした神様だ……みたいに。


その獣の形をした神様の事を“神獣”と呼ぶらしい。


神獣は基本、神社の奥深くや社の彫刻、外壁に描かれた絵などに憑依し、その身を人の目から隠している。


そして神獣は、自分の意思で憑依しているモノから放れたり出来るらしく、その獣の姿を人型にも変える事が出来る。




はい小休止。

頭ん中整理してぇ!


はい続きいくよ!




神獣にはそれぞれ、人間の願いを叶える力を持っている。


それはお賽銭やお供え物をし、さらにその神社で神に願いを捧げた者だけに適用する力らしい。


なんともゲンキンな神様達だな……


しかし、上記の事さえやれば、神様はその神通力、つまりは願いを叶える力“神力”でどんな願いでも叶えてくれるのだ!!


まさにドラ〇もん!!


……しかし、そんな神力にも弱点がある。


一度でも人間に自分の姿を見られた神様は、その神様が持つ神力の力が衰えてしまうんだと。


つまりは弱化。




つまり、人間に姿を見られた神様は神力が弱化

それだけ、人間の願いを叶えられなくなる

そうなると人間は

「なんだよこの神社、どんだけ賽銭しようが、ちっとも願いが叶わないじゃねーか」

となり、

参拝に来る人が減り、賽銭やお供え物が無くなる。

そして神社は評判ばかりが悪くなり、いつしか荒廃していってしまう…

そうなると、神様は生きてはいけないらしい。





って言うのが、このコマって子が言った事を簡単に整理したもの。


「どうせ……あなたは信じないでしょ。私は……あなたに姿を見られたから、もう……」




コマはまた泣き出しそうな顔になる。


うーん……


僕は頭をポリポリ。




多分、みんな思う事だけど……


普通信じないよね?


だってさぁ……突然神様だとか言われてもねぇ……。


こんなぺったんこ少女、誰が神様だと思うか?


神様ってのは、こう……白いお髭を生やして、木の杖を持って……。


そもそも、ウチ無宗教だからさ……


クリスマスに来るサンタさん、キャピキャピのへそ出しガールサンタを希望しているくらいの家だもん。


もし神様ってんなら、証拠を見せ……




「……あ」


僕は見事フリーズした。


「……ん? どうかしたの?」

コマは涙目をした顔でこっちを向いてくる。


あ、やっぱり可愛いなぁ〜お持ち帰りしたい……じゃなくて。


「……証拠見つけた」


僕はそっとコマに接近して、そのふわふわな……犬耳に手を伸ばした。


「え、ちょ……ひゃんっ!!」


犬耳に触った瞬間に聞こえた、超可愛い声にゾクゾクしつつも、僕はその犬耳を隅々まで触って確かめる。


「ちょ、急に何を……ひゃっ! く、くすぐった……い……」


顔を真っ赤にして暴れ出すコマ。


その鼻にした鼻せん、ちょっと赤く染まってきてますよ?


興奮すると血は止まりにくくなるんだぞ?


知ってた?


「ちょっ離してっ!!」


その時、コマがあまりにも暴れるからついつい手を離してしまった。


ああ……超ふわふわだったのに……じゃなくて、


「あの犬耳……リアルに頭から生えてる……」


何だあの感触?

初体験だよあんなの!


何あの手触り!?


ついつい犬耳を離した両手の平を凝視してしまう。


「ちょっと! い、いきなり何なのよ!?」


コマは顔を真っ赤にしながら、自分でその犬耳をちょいちょいいじくっている。


……やっぱり可愛いなオイ。


しかし……


「お前……本当に……本物の神様なん?」


こんなぺったんこ少女が神様なんて……


いやしかし、あの犬耳は確かに……


「本物の神様よ! 何度言ったら分かるのっ!!」


いや、そんなに何度も言ってないだろぺちゃぱい。


「だからさっきからどこ見てんのよ変態っ!!」


そう無い胸を隠すな。

それも立派なステータスだぞ少女。





しかしながら、あの犬耳を触ってしまった以上、本当にこの子は神様なのか!?


見た目普通の女の子だぞ(犬耳と尻尾を除く)!?




けど……


やっぱり、僕を初めて見た時の慌てっぷりや、涙ながらに語る神様の話からして……






「……分かったよ」


僕はそっとベンチから立ち上がる。


コマは、そんな僕を大きな瞳で見つめていた。


「君は本当に……神様なんだね?」


僕はコマの瞳を見ながら聞いた。


「……うん」


彼女は……ゆっくりとうなずいた。


「そうか……」


やっぱり非現実的だなぁ。


でも……


「って事は、その……神力や神獣ってのも……」


「だから本当だって……」


彼女は力なくうなずく。




だとすると……


「じゃあお前、今僕に見られているって事は……」


すると、コマはか細い声で泣き出した。


「そうよ……もう……私には神力なんてのは……」




……やっぱり、女の子の涙なんてのは嫌いだ。


僕の妄想彼女もそうだけど、基本女の子は笑ってなくちゃ。


涙を流すなんてより、笑顔の方が断然に可愛い!!


あの脱衣麻雀界のタイガーマスクだって、


「女の涙ってのは……その女をダメにする害虫みたいなもんなのさ」


って言ってたし!


まぁよく意味は分からんが。

ってか、比喩の仕方が壊滅的におかしいが。




……やっぱり女の子には、笑顔でいて欲しい。






「……よし決めた!」


僕はついつい大声で叫んでしまった。

何事も勢い大事!


「今日から僕は、この白犬神社の副神様になるっ!!」


「……えっ?」


コマは涙目ながらも、僕の方を向いた。


「僕は今日からこの神社の副神様! みんなの願いを叶える、煩悩だらけの歩く18禁神様だ!!」


この子の笑顔が見たい。


ただ、それだけの理由でいい。


「……あなた、だって人間……」




「ああそうさっ!!」


僕は神社の賽銭箱の前に立ち、コマを見つめる。


「確かに僕は人間だ、神力の無いただの人間だ!!」


イッツァヒューマン。


「けれど……きっと頑張れば人の願いを叶える事が出来る! 神力が無くたって、きっと願いを叶えられるさ!」


「…………っ」


「僕は決してこの神社を荒廃になんかさせない! この神社の評判を落としたりなんかしない!」


多分、いや絶対だ!!


「何で……」


その時、コマの重たい口から言葉がこぼれた。


「何で……今日初めて会ったばかりの私のために……ここまで言ってくれるの?」


彼女の声が、だんだんと大きくなっていく。




「何でこんな……神様なんて言う馬鹿げた話をする……私のために……」


「女の子にはさ、いつでも笑顔でいて欲しいんだよ」


僕のその言葉に、コマは驚いた表情を見せる。


「君が最初、神様の夜の……じゃなかった。骨っ子クッキーを持っていた時の笑顔をさ、僕はまた見たいんだよ」


……そう、あの無邪気な笑顔。


「だからさ……」


僕はコマに手を差し伸べた。


「一緒に、この神社を繁栄させていこう!」




この子は可愛い女の子でもあり、神様。


僕はあの時彼女が流した涙を、信じる。




「……うぅっ」


彼女は泣きながらも……僕の手を掴んでくれた。


「……まぁ、元は僕が君を見ちゃったのがいけないんだし」


……けど、あの時僕が君を見たからこそ、


この出会いがある。






「一緒に、頑張っていこうか!」


「……うん」


その時コマは……その泣き顔の向こうに一瞬だけ……笑顔を見せてくれた。


とても……可愛いかった。






こうして僕は、この白犬神社の副神様(自称)となり。


本当の神様と一緒に、神社繁栄を願って人の願いを叶える、半ば肉体労働を共にしていく事となったんだ。










「……そういや結局、僕の鋼の精神って願いはどうなったんだ?」










あれから1週間。


僕は相変わらずの変態っぷりで、クラスのみんなからは

「エロ市沢」

ってあだ名まで頂戴した。




……あ、そういや!


「まだコマに、僕の名前教えてなくねッ!?」


いつもコマには「あなた」や「あんた」呼ばわりされてたからさ。


ってか、よくそれで1週間持ったな……。


「……まぁ、今日改めて自己紹介するか」


名前も知らない人と神様やるなんて、意外と警戒心薄いんだなコマ。










白犬神社の境内。


僕は缶ジュースを片手に、神社のすぐ側にある石の狛犬の前へ。


そして、辺りを確認。


……辺りに人の気配なし。

野外プレイの気配もなし。


ならよし。


「……コマ、辺りに人はいないぞ」


僕は狛犬に向かい、声を掛ける。




すると石の狛犬が淡く輝き出し、その石の狛犬の前に小さな光の渦を出した。


その光から、1人の少女が姿を現す。


「ほれお土産。オレンジジュース飲めるか?」


「大丈夫、前にお供え物で貰って飲んだ事がある!」


少女―――コマはその尻尾を右に左にゆらゆら揺らしながら、僕の差し出したオレンジジュースの缶を受け取る。


「そういやさ、あんた何て言う名前なの?」


「うお、どストレートに聞いてきた!?」


まぁ、どっちにしても言う予定だったのだが。


コマは缶のプルタブを開けながら、石のベンチへ着席。

ふっふっふ、相変わらず可愛いなぁ〜


画になるよホント。


「僕の名前は市沢和也、現在中学3年生! 好きなモノはムフ……いや、有りすぎて言えない。嫌いなモノは獅子唐、よろしくね(ウィンク)!!」


「ふーん……」


「ウィンクふーんで流されたッ!!」


気合い入れてやったのに!!







さて、気をとり直して。


僕はジュースを飲んでるコマの隣に座り、賽銭箱の前を確認。


……いくつかお供え物がある。


「コマ、今日はいくつくらい願い事きた?」


お供え物の数的に……2、3個って所か?


「えーと……ナカザワって人が猫を探してるってのと、カトウって人が世界征服したいって。あとはタナカって人が孫の健康祈りに来てた」


コマはジュースを飲みながら答える。


「そうか……叶えられそうなのは猫の捜索くらいだな」


僕は人間だ。

世界征服なんて叶えられっこない。


孫の健康は……まぁ、果物とかを届けるとか?


「コマ、そのナカザワって人、何か猫の特徴とか言ってなかったか?」


「えーとね……ミケでメスで小さくて……赤い首輪してて、名前はニャン吉って言ってた」


「……お前、結構記憶力いいな」


僕にもそんな記憶力があれば……


ムフフな事に役立てそうだよな……


例えば、エロ本を書店で立ち読みして、

その写真を頭の中にインプットすれば……買わずに済む!!


……じゃなくて。




「よし、じゃあコマ! ちょっくらニャン吉を探しにいこう!」


コマはもう神力を失っている。


だからその犬耳尻尾や憑依の瞬間さえ見られなければ、人前も大丈夫。


尻尾は袴の中に入れちゃって、耳は帽子でカモフラージュ!!


ちょうどコマもジュースをのみ終えたみたいだし。


「じゃあ行くか!」


「……うん!」




こうして、神様の力を持たない神獣と、煩悩まみれの人間との、神社繁栄物語は続くのでした。


多分、更新速度はバカみたいに遅くなると思いますが、宜しくお願いします!


次回より短編の続き、新ストーリーとなります!

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