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「乗れよ」

「えっ???」

里佳子の目の前で盗んだ自転車に乗り回した誠は後ろにある荷台に乗る様に促がした。

里佳子本人は不本意ではあったがそっと荷台に乗る。

「失礼しまーす」と言いながら彼女は自転車の荷台に乗り体勢を変える。

里佳子はしっかりと目の前でサドルに座っている同級生の腹の前で左手、右手を握り締める。

里佳子の体が誠の背中と密着し、誠は少しだけ顔を赤くして自転車のペダルをこぎ出す。

自分の後ろに座っている里佳子の目に映ったのは誠の大きな背中だけだった。

自分より遥かに背の高い、

いつも教室ですれ違うだけだった誠が目の前で自転車盗んでその自転車の荷台に自分が乗っている。

塚口駅とは間反対の方向に向かう自転車。


誠は何も喋ろうとはしない。


彼が喋ろうとしないから里佳子も喋らない。


里佳子も沈黙は好きではない、だからと言って何を話せば良いのか分からない。

咄嗟に頭に浮かんだ事を目の前の同級生に聞こえるようにぶつける。

「ねぇ!久瀬君」

「なんだよ」

「これ本当に良いの!?」

「そんなの置いている奴が悪いんだよ、俺たちはただそこにあった物を“拾った”だけだよ!」

誠の運転する自転車は緩い坂道に突入し里佳子は後ろに引っ張られる。

その瞬間、里佳子は誠の体をギュッと強く掴んで怖いのか目を閉じてまぶたの裏の真っ暗な世界に入る。

誠は、さらに顔を赤くしたが里佳子にはそれが見えない。

「胸当たんだろーがッ!」

「・・・・・」

誠の後ろの女子はまだ、まぶたの裏の真っ暗な世界に入ったままだった。

里佳子の耳にガシャッと言う音が入ってきた。自転車のスタンドを立てる音だった。

さっきまで掴んでいた誠の体の感触はもうなくなっていた。

いつの間にか彼女の腕の隙間からすり抜けていたのだ。


どこかに止まったのだろうか?


里佳子はそっと目を開けると一瞬だけ眩しそうに目を細めてそこがどこか分からないでいた。

瞳孔が細くなって光に慣れてくると眼前に広がったのは大きな芝生だった。

「どこ?」

自転車が立っている芝生のど真ん中に人が寝転んでいる。

「あっ、久瀬君」

芝生のど真ん中に寝転んでいたのは他の誰でもない誠だった。

彼の姿を確認すると自転車の荷台から降りて芝生に寝転ぶ誠に歩いて近づく。

そして、しゃがんで誠の頬にツンツン指を突く。

「おーい??久瀬くーん??」

「・・・・・」

誠は寝返りを打って里佳子とは逆の方向に顔を向ける。

すると、彼女も負けじと反対方向に向いた誠の顔にツンツン指をさっきより強く突き始めた。

「・・・・」

中々起きない誠に頭を悩ました里佳子は誠の横に寝転んで誠の顔を凝視する。

「ジーーーーッ」ご丁寧に擬音を口に発しながら。

「うるさいな・・・・」

誠がやっと口を開いた。里佳子はそれを聞いてほっとする。

「喋った、喋った」

誠は、目を開けて真横に寝転んでいる里佳子のきれいな顔を凝視する。凝視を終えると空を見上げる。

「眠たいな・・・」

「帰りもこいで貰わないと私が困るんだぞ~?」

「自転車くらい自分でこげよ」

「だって、道分からないもん」

「それなら俺だって、適当に選んだ道走ったらここに着いたんだ。道なんて分かるかよ」

「そこは何とかしてよ。久瀬君」

里佳子と誠の会話はどこぞのカップルの会話となんら変わりなかった。

「俺たち、“共犯”だな」

「えっ???」

「そうじゃなかったら俺は“犯人隠避”沢は“窃盗”。互いの秘密を知ることになったて事だよ」

「“秘密の共有”かァ、なんか楽しいかな。ちょっとスッキリしたよ。“誠”」

里佳子が急に今まで苗字で“久瀬君”と呼んでいた相手を“誠”と下の名前で呼んだ。

驚きを隠せない誠の表情に里佳子は顔を赤くして誠に顔を近づける。

「私の名前は“里佳子”だよ、誠」



さぁ、前半戦が終了しましたぜ!

ついに動いたとといいますか、題名に「~と~」がなくなりましたね。アハ


さぁ、次どうしようかな・・・。

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